Wave of dimensions — страница 109 из 111


「絆さんが居なくなったすぐ後にスズキを対象にした大会をペックルが開催してましたよ?」

「え? そうなの? なんで俺が居なくなった後にそんなイベントが……」

「アップデートで追加された形なのかと。ただ開催には一定人数のエントリーが必要らしいです」


へー……そんなのがあるのか。


「プラドの方では開けるのかのう?」

「水場少ないし対象の魚が分からないな」


スポーツフィッシング向けの魚、居たっけ? プラドの方で。

さてさて、急遽ノースフェラトにやってきた俺達だけど何もプラドのダンジョンでの釣りを無視した訳では無い。

しっかりとマグマでの釣りを行い、ヌシ釣りに挑戦……したんだけどマグマの中から釣れた魚は魔物枠だった。

ラーヴァガンフィッシュと言うマグマを撃ち出す魔物で釣ると同時に少し浮かんで襲って来た。

まあ……倒せない程の敵じゃ無く装備が潤沢だった俺達からすると雑魚で苦も無く倒せた。

戦う事無く釣れたのも居てロミナに土産に持って行ったら固有武器の素材に使えそうって喜ばれた。

他にもクレイさん達もポーションに使える魚だって説明されたっけ。

ヌシはラーヴァガンフィッシュだった。ヒョイッとあっさり過ぎる感じに釣れてしまって確認しないと気づけなかったくらいだ。

釣るための準備が大変故に難易度が軽めに設定してあったのかも知れない。

拍子抜けで虚しかった……ただ、何か他にもいるような気がする。

まだプラド草原のダンジョンに潜って居るプレイヤーは少ないので早い内にもう一度トライして探してみようと思う。


「そんじゃクエスト探してくるぜ! 絆の嬢ちゃんも何か見つけたら連絡してくれよ」

「じゃあねー絆ちゃん、ノジャちゃんー」


ビシ! っとらるくが俺を指さしてから走って行ってしまった。


「らるく達は落ち着きが無いなー」

「隔離されていたのですからしょうがないですよ。絆さんはさっそく釣りに挑戦ですか?」

「そうしたい所だけどまずは地形の把握をしてからが良いかな」


いきなり水場で釣り糸を垂らしてもね。じっくりと釣りをしたい。

千里の道も一歩から。しかも硝子が釣り上げ済みであるヌシとなるとまだリポップしているかも怪しい。

既に攻略済みの釣り場でも鮭とブラックバスとなると興味も湧くと言うものだ。


ネタネーム



「道中見ておったがここの食料は木の実かのう?」

「らしいですよ」

「へー、リスーカの主食は木の実なのか」


想像通りではある気がする。


「島主よ。リスーカはウサウニーと食性が被ると思うのじゃがその辺りの分析はどうなのじゃ?」

「野菜と木の実は似てるけどちょっと毛色が違う所があるからなー。木の実って言い方してるけど果物って言い方の方が違いが分かるかも?」

「なるほどなのじゃ。野菜と果物の違いじゃな」


ウサウニーは野菜を食べてリスーカは木の実……ある程度互換は効きそうではある。


「ちなみに島主は果物の育て方も知っておるのかのう?」

「一応、俺のやっていたゲームと農家の人にそこそこ教えて貰えはしたかな」

「それは頼もしい限りじゃ。プラドでは何故か果樹は調達出来なかったから挑戦したい所じゃな」


プラドは草原になった影響か畑にも色々と変化が起こっていたっけ。

温度の変化が大分大きくなって地上でも植えることが出来る作物が増えた。

顔文字さんは果樹にも興味があるのか……農業が本当にやりたい事だったんだなー。

蛇足ではあるがウサウニーは木の実判定の作物は食べないのもあるのが分かった。

リスーカと被るのを避けているのかも知れない。

それと顔文字さんの調査でウサウニーは固体毎に好みの作物が違うと言う話だ。

ブレイブウサウニーはさつま芋が好物らしい。バータはリーダーである故に好物無しだとか。

人参系とキャベツとレタスが好きなウサウニーが多いそうだ。

ペックルもそう言った要素があるんじゃないかって話をしてた。

ただー……クリスもブレイブペックルも好物っぽい魚は見つからないんだよなー……。

調理したアイテムとかでも材料に該当の食材があれば食べてくれるらしいけどそっちにあるのかな?

ブレイブペックルはストレスが溜まりやすいから好物が分かれば運用がしやすそうだけどね。


「折角領地持ちのわらわ達が来たのじゃ。ここの領地持ちに挨拶するのが先決じゃろう」

「そういうもの?」

「近所付き合い感覚で言えば正しいでしょうね」

「領主の場合は競い合うライバルという視点もあるので余り安易に挨拶をすると舐められるという考えもあるでござるな」


硝子は肯定、闇影は否定って意見のようだ。

この辺りは個人で判断が分かれるのかもしれない。

顔文字さんは元々トップギルドのマスターだった訳でコミュ能力は高い。

だからこそ挨拶が基本って考えなんだろう。

思えばプラド草原に呼ばれた人員は人間性が出来ているというか精神年齢高かったもんなー。

一番の年下は俺か顔文字さんって所だろうし……ただ、顔文字さんとクレイさんの話からすると社会人っぽいから顔文字さんも年上とみていい。

ギャグネームを付ける際のテンションは雰囲気的に飲酒して決めた風だったし。


「む……島主、わらわに何か思う所があるのかのう?」

「なんで?」

「いや、島主が考えている雰囲気を察知したのじゃ」

「あ、わかります? こういう時の絆さんって変な行動に出ることがあるので心構えを身に付けてしまいますよね」


硝子、同意しないでくれない?


「逆に凄い事を言うのが分かりやすいので良いでござる」


闇影も同意しない。


「絆にそんな癖あったかしら?」

「あったっけ?」

「奏さん達も同様にありますね。何か悪乗りする際に、短いですがありますよ」

「芸人のノリの時なのじゃ」


いや、俺たち芸人姉妹じゃないんだけど?

ってツッコんだら自爆しそうなので黙って置こう。


「芸人じゃないわよ」

「そうそう! ネタにツッコんでるだけだもん」

「紡は黙ってなさい。絆は空気を読んで黙るのは認めるようなものよ!」


はあ……こんなところでも自爆する姉さんたちに黙とうだ。

認めるもくそも言わなければいいのだ。

沈黙は金、黙っているだけで相手はこちらを理解するのが難しくなる。

闇影ではないが真の忍びは沈黙こそが印象を持たれないものなはず。

釣りをしてるだけで萌えられる俺は一体何者なんだろうか。

俺自身が分からない。


「とりあえず顔文字さんの提案でここの領主に挨拶に行くって事で良いのかな?」

「うむ。タイミングが合えばわらわたちの行きたい所を教えてくれるはずなのじゃ」

「硝子たちも一度ここにきてるらしいけどね」

「ある程度ですけどね。確かに挨拶は必要でしょうか」

「拙者黙ってるでござる」


闇影、別にお前に交渉は任せないだろう。

人見知りするってのは確かなんだよなー……改めて思うと。

などと思いつつノースフェラトの城へと向かう。

カルミラやプラドの城は同盟関係なので簡単に入れるけれど、ノースフェラトは完全に知らない関係なので領主ギルドの許可が無いと入ることはできない。

一応来客用の受付の広間までは入れるけど奥は入れないのだ。


「たのもーなのじゃー!」


顔文字さんが臆せずに受け付けの広間まで来て大声で呼びかけを行う。


「……」


しばらく返事が来るのを待っていたけれど特にこれといった反応は無い。


「人員は出払っているって所かのう?」

「まあ、うちのギルドも顔文字さんの所も似たようなもんだからなー」


城には夜に寝泊りする所で基本は出かけていることが多い。

来客は……うちの場合は今はロミナが担当してたっけ。具体的にはロミナかアルト経由で取引してたり情報交換してる。

顔文字さんの所だとクレイさん達にって事になる。

そう考えると俺たちの来訪ってやり方が間違ってるのか。


「ギルド間でのあいさつは商人経由でした方が早いかも?」

「ふむ……」

「ようこそいらっしゃいましたッチュ。プラドの領主様ッチュ」


あ、受付にいるリスーカがなんか反応してる。


「ノースフェラトのギルド、『昆虫王者インセクトン』へようこそッチュ」


……これはどう反応したら良いんだろう。

すげーギルド名って言えばいいのかな?


「あははは! 凄いギルド名」

「センスが突き抜けてるわ。絆とノジャ子並みの癖の強いギルドマスターみたいね」

「ギルドマスターが犯人なのか。それともメンバーが原因なのかわからないけどちょっと……」


お近づきになるにはネーミングセンスが果てしない。

パチモンっぽい名前なのは元より昆虫って……。


「虫が好きな方という事でしょうかね」

「かもしれない」

「絆さんとはセンスが別ですね。絆さんの場合はカルミラ島フィッシング協会が案でしたので」

「プラド農業組合はまともじゃろ?」


顔文字さんもここで何故自爆へと走るのだろう?


「センスはこっちが突き抜けてるわね」

「でも前に来た時はノースフェラト森林管理組合って名前だった気がするよ? 城の看板で見たよ」


紡の目撃証言か……それなら割と無難な名前な気がする。

忘れがちだけどギルド名って申請すれば変えれるんだよね。


「やはりネタネームで闇影ちゃんと愉快な仲間たちにすべきなのか?」

「しなくて良いでござる! 張り合う必要性を感じないでござるよ!」

「だがなー……次の波とかでここのギルドはライバルになるかもしれないし」

「名前で勝敗が決まったら苦労しないでござるよ!」


うーむ……まあ、この件は保留か。


「個性的な方々が居そうですね」

「逆に名前だけでも個性を出したいかもしれんぞ」

「まあ……顔文字さん程の個性は中々無いもんね」


忘れがちではあるが顔文字さんの名前が俺たちの中で一番突き抜けているのは事実だ。


「くううう……リネームアイテムの実装を待つのじゃ!」


あるあるだね。ゲームとかだと。

名前を再設定できるアイテムなどの話。


「ギルド名は簡単に変えれるのに何でプレイヤー名はいつまでも固定なのじゃー!」


という顔文字さんの魂の叫びがノースフェラトの受付の間に響き渡ったのだった。


バス釣り



「それでお客様、当ギルドに何の御用ッチュ? メッセージを送るっチュ?」

「ギルドマスターが分かればチャットを送る方が早いよね」

「問題は俺や顔文字さんと同じくフレンド以上じゃない相手からのチャットは拒否設定にしてるかもしれないって事かなー」


領地持ちってのはそれだけ妬みなどを受けやすい訳で、カルミラ島が解放された直後は訳の分からない罵倒が書かれたメールが時々送られて来たもんだ。

まあ、このゲームだと新規アカウントとか作れないので匿名でのメッセージは難しい訳だけどね。

それでも妙な妬みがこもった恨み節は来るわけで、そういった面倒な連中に絡まれないように設定してしまうもんだ。

そもそも解放時にデフォルトでメッセージをフレンドまでに指定される。

システムもその辺りは察知してるって事なんだろう。姉さんとはあの時までフレンド設定にしてなかったんだった。

試しに外したら送られてきたわけだし……確か『釣りキチ! 気色悪いんだよネカマ!』とか書かれてたなー。


「留守なようじゃし、島主は乗り気じゃないのなら、あとでわらわが連絡しておくのじゃ」

「あーい。どこかで会えると良いな」

「ギルド名だけで相当個性的な人みたいだし、割とすぐに会えるかもね」


会えてうれしい相手だと良いが……まあ、楽しみにしよう。

という訳でノースフェラトの城から出た広場で周囲を見渡す。


「ではみんなはどうするのじゃ? わらわは新たな作物が無いか市場を見てくるのじゃ」

「言うまでもない。川で鮭、湖でブラックバス釣りに挑戦するに決まってるだろ」

「予想通りの行動でござるな」

「そうですね。では私が川と湖に案内しますね」


硝子の案内で俺は釣りへと向かう事にする。


「私たちはどうしようかしら。この辺りの魔物で手ごろな相手でも探そうかしら? 紡と闇影ちゃん、行くかしら?」

「まーお兄ちゃんが釣ろうとしてる魚周りは硝子さんとお兄ちゃんのファンギルドが既に攻略済みだし、目を離しても良いかも?」

「そうやって油断してると絆殿が変なものを釣ってくるでござるよ」


そこまでじゃない! っとは言い切れないのが辛いな……河童とか予想外な代物が釣れたりするし。


「かといって地道な作業を見てるだけってのもねー何かイベントを見つけたら速攻で連絡しなさいって程度でやりたいことをしていくのが良いんじゃない?」


姉さんはこの辺りの判断力が高くて助かるね。


「それもそうでござるな。色々と手広く探して呪具スキルの媒介を探すでござる。こういった所で見つかる可能性もあるでござる」

「まあ、フラグっぽいものを見つけたら触れずに行けば変なイベントには遭遇しないだろう。ここでらるく辺りがチャットでフラグを立てない限りは」


って所でらるくからチャットが来た。とりあえず出てやろう。


『おーい。嬢ちゃんたちー』


……らるく、タイミングを狙ってるのだろうか?


「噂をすればなんとやらでござる」

『どうした? また変わったイベント見つけたのか?』

「いいや、噂をしてたらチャットが来たって感じ、なんかフラグっぽい情報はノーサンキュー」


ミリーさんが探していた遺跡を俺が思いっきり踏んづけたんだし、妙なフラグは勘弁してくれ。


『んだよ。釣れねえじゃねえか、じゃあ早速フラグを立てるぜ!』


やめろっての! 接待ネトゲじゃないから!


『とは言ってもねーここでの変わったクエストはどうも虫取りのクエストが多いのがメモリアルクエスト一覧で分かるところね』


てりすがチャットに入って来て補足してくれる。

虫取り……。


「ここの領主はどうも虫好きなようじゃ」

『あー……なるほど、絆の嬢ちゃんと似た感じでクエストを発見してるって事か』

「俺と同じってそんな釣りでクエストを見つけたりしてないぞ!」

『結果的に見つけたってのはありそうじゃねえか』


うぐ……否定できない。

俺みたいなやつがいるって事で片づけるしかないのか。


「絆さんが今行くところにそれらしいヒントはありますか?」

『ねえなー森の奥に行って帰ってきた者は~みたいな不穏なヒントはあるけど何処でも見るヒントだし』


ミカカゲの方でもあったなぁ。湿地帯の方で。


『まあ、見つかったら報告するから楽しみにしてくれよ。何かあったら教えてくれよな!』


って感じでらるく達はチャットを終える。

特にこれといった収穫は無いで良さそうかな?


「そんじゃ早速鮭を釣りに行くとしますか」

「いってらっしゃい」


って訳で俺は硝子と二人で釣りへと向かった。


「ええ、こちらですよ。湖から少し離れた所にあるフィールドの川です。魔物も出ますがミカカゲより弱いので絆さんなら楽に倒せるはずです」


ほう……と、ノースフェラトから出て森を道なりに進んで行く。


「ミカカゲの渓流に似た雰囲気の場所だなー」


森の雰囲気がどことなく似ているように感じる。

出てくる魔物は……蜂蜜熊という……なんかハチがブンブンと纏わりついたクマの魔物だ。

なんか甘い匂いがするのと倒すと蜂の巣を落とすっぽい。

解体すると熊の毛皮と蜜の染みついたクマ手という素材が手に入る。

……ハニーハンドって事なのかな?

なんてやっていると川……穏やかな渓流に出る。

ところどころにプレイヤーが居て釣りをしている。

あ……なんか川の中で蜂蜜熊が水面を見てる。

鮭を取ろうとしてる感じな雰囲気だ。


「そうですね。確かによく似てるように感じますね。紅葉もありますし」

「ミカカゲだとなんで鮭が釣れなかったんだろうなー」

「アップデート毎に釣れる魚が増えたりするのでもしかしたら釣れるようになるかもしれませんよ?」

「そうだね」


ダークサーモンとかまさにそれだもんね。


「ちなみに鮭ですが、銛でも捕れるそうですよ。慣れるとそこの蜂蜜熊みたいに飛び上がる直後に武器で弾いて捕れます」

「硝子はできそうだね」

「……」


あれ? なんか硝子がなぜか顔をそらしてる。

なんで?

俺が小首を傾げていると硝子は非常に言いづらそうに苦笑いをする。


「いえー……その、このゲームではなく……修行で食材確保に山でやらされまして」


硝子の実家に関しても色々と気になるところがあるよね。

どうも口調や運動神経からして古風な家って雰囲気があるけど鮭を修行で捕ったって話……普通は無いよね?

それともどこかでは一般的な事なんだろうか?

あんまり踏み込むのは硝子も嫌だろう。


「とにかく、外の世界に出られたんだ! 早速挑戦! 今回はフライフィッシング!」


手元の釣り具で眠らせ気味のフライフィッシング用のルアーでひゅんひゅんと動かしながら適度に水面に落とす。

硝子は少し離れた所で普通にルアーを使って釣りをしているようだ。

釣り糸を垂らしつつ周囲を確認。


「ここのヌシであるヌシサーモンはこの前釣れたばかりです」

「硝子が釣ったのかな?」

「ええ、その……絆さんのファンクラブの方々が調査して釣り上げる直前に敢えて釣り糸を切ったりして私に釣り方を教えて下さり手柄にしてくれました」

「本当、大丈夫なの?」

「はい……絆さんの写真を遺影みたいに持ってお願いされまして」


……本気で怖いんだけどその集団。

俺の写真を遺影にって縁起でもない。


「絆さんが鮭を釣りたがっていた。けど居ない、このままでは誰かが釣ってしまう……ならばせめて私に釣ってほしいと、かなり仰々しい騒動になったんですよ?」

「らるく達はそれを見るべきだったんじゃないの?」


怖すぎるわ。

そして狩猟具のスキルのお陰で後方で俺たちを遠目に観察している集団を発見してるからな。


「さすがは絆ちゃんでござる。フライフィッシングで挑むのは王道」

「通でござる」

「絆ちゃんが見つかったと聞いて安心でござる」

「絆ちゃんの釣った鮭をペロペロしたい」

「絆ちゃんの捌いた鮭のイクラが欲しいでござる」

「サーモン奪取ランでござる」


絆ちゃん連呼すんな……何なのお前ら? 俺が釣った鮭に何をする気だ。

釣る意欲が減退しそう……。

っとやっているとグイ! と毛鉤が水中に引き込まれた。


寄生虫



「フィーッシュ!」


ギリギリギリ! っとリールを回す。

お? 想像よりも引きが強い。

開拓地だから大して強くないかと思ったけど予想より強めだ。

プラド草原の方で生ぬるい釣りをしていたことが多かっただけに良い手ごたえ。

さすがは鮭という事か。


「よーし! ここで見せられなかったスキルを使ってやる!」

「あ、絆さんの新釣りスキルですね」

「おう! 本来は釣りで使うものだ! はあ! 破城槌」


ガツ! っと引っかかった鮭らしき魚を近くの岩にぶつける。

確かな手ごたえと共に水面が赤く少し染まり……手ごたえが無くなってしまった。


「……」

「……」


硝子の沈黙が痛い。


「あの……魚さんの頭がつぶれてしまっているのでは?」

「気絶! 気絶してるから!」


お願いします! どうか頭がスプラッシュしてないで!

と、リールを巻いて魚を確認すると……ああ、よかった。気絶してるだけだった。

鮭が釣れたので本当、よかった!


「フィッシュー!」

「わー」


硝子がパチパチと拍手してくれる。

後方でパチパチと大きく聞こえたのは無視だ! 俺のファンクラブメンバー! 集まってくるんじゃない!

何が面白いんだよ!