Wave of dimensions — страница 110 из 111


「絆ちゃんたちの沈黙、美味しかったでござる」

「さすが絆ちゃん。修行の成果で鮭を一撃でござる」

「破城槌かー……絆ちゃんも覚えたんだな」

「海だと使いづらいからここでこそ光るスキルでござるー」


まあ……海だとぶつける場所が限られてるから使いづらいってのは分かる。

引っ掛けた相手を壁にぶつけるってスキルだもんな。

運用方法を考えないといけない。

いや、使い方次第じゃないかとは思うけど……。


「これが絆さんの新技なんですね」

「うん。硝子も新しい釣り技あるんだよね? チャージが必要だって言ってたけど……」

「あー……」


と言った所で硝子の釣竿も大きくしなる。


「……やりましょうか。行きますよ!」


硝子が魚との攻防を始める。

俺でも少し歯ごたえのある相手だと思った魚……鮭のようなので抵抗が強い。

その攻防の最中で硝子の釣竿が光、チャージスキルを行い始める。

おお……釣りのチャージスキル、良いなー。

どんなスキルだろ?


「はあ!」


バシャ! っと硝子が釣竿を引き上げると鮭が水面から飛び出した。


「行きます! 荒縄縛」


ズン! っと釣り糸が鮭に巻き付いたかと思うと大きく縄のようになって締め上げる。

ビチビチと水面に叩きつけられた鮭が抵抗をしているけれど、そのまま引き寄せられて釣り上げられてしまった。


「前にも似たスキル持ってなかった?」


なんか糸で相手を締め上げたのを覚えてる。


「バインドロープですね。はい……系譜として強化スキルになりますね。引っ掛けた相手を縄で束縛するスキルみたいです。普通の糸より拘束効果が高いです」

「なるほど、硝子は本当、糸系のスキルをよく習得するね」

「確かにそうですね。一応、絆さんも使っている一本釣りも覚えましたよ」


おお、それは何より。破城槌もなんだかんだ地味なスキルだから一本釣りはロマンだ。


「一応チャージスキルなんだっけ?」

「はい。貯めた分だけ糸が太くなって拘束時間が伸びるようです」

「ほー……ボスの拘束とかに役立つのかな?」

「その運用が良いかもしれないです。ふふ、私が足止めして絆さんがとどめに行くんですね」


今までは逆に硝子が前衛で戦っていたはずなのに俺が前衛で戦うかー……スキルの所為なんだけど色々とスタイルが変わったもんだ。


「何はともあれ鮭ゲット! もっと歯ごたえのある鮭とか居るのかなー。とりあえず解体するね」


早速鮭を解体する。

鮭の切り身に骨、皮つき身に、すじこ……やはり素材は豊富になってるなー。

ただー……。


「そういえば気になった事があるのですが」

「ん?」


何か硝子は気になることがあるのかな? こういうのって大事だよね。

経験者故に気づかない、当たり前になってしまっているなんてあるし。


「鮭とサーモンは何が違うのでしょうか? 絆さんは知っていらっしゃいますか?」

「ああ、ゲーム開始前に少し調べたかな、こういう雑学はクレイさんの方が詳しそうだけど俺の知ってる範囲の話をするね」

「はい。野菜は絆さんが詳しいですが、絆さんの調べた知識を聞きたいです」


うれしい話だね。硝子は人を持ち上げる才能があると思う。


「鮭とサーモンの違い。日本でサーモンというと養殖の鮭の事を言う感じだね」

「養殖なのですか」

「うん。サーモンの寿司とか人気でしょ? でも鮭の寿司があまり聞かないのは寄生虫なんかが関わっていて、生食が大変だったのが理由らしい」

「そうなのですね」

「うん。どうやらディメンションウェーブでも再現されてるみたいで寄生虫ありみたい」


解体した鮭を確認すると素材の状態では食べることはできない指定が入っている。

料理スキルで確認すると酢とか熱湯などで処理すると表示されている。


「寄生虫ですか」

「うん。アニサキスとか有名かな? 鮭はそのままでは寄生虫が居て食べるのは難しいんだね。だけどサーモンは養殖で育てるので寄生虫が居ないから調理しやすいって感じ」

「なるほど」

「まあ、闇影やクレイさん達ならもっと詳しく教えてくれるだろうけど、英語とかを交えると鮭はサケ科サケ属でサーモンはトラウトサーモン、ニジマスを指すらしい」

「アメマスの際に闇影さんが仰ってましたね」


そういえばそうだったね。

思えば闇影はこの辺り知識として知っていたもんな。


「では鮭を養殖したらサーモンとなるのでしょうか?」

「ありそうだね。確か養殖も出来たはずだから」


カルミラ島に養殖場を確保してある。あんまり使用はしてなかったけれど安定して鮭を確保する際には使った方が良いだろう。

鮭は確かに料理の用途が広いからなー……あっても悪くない。

一応カニ籠を設置するけど鮭クラスはきっと引っかからないだろう。

ちなみに考察通り、鮭を養殖するとサーモンになった。

他にも養殖じゃないと手に入らない魚などもあるそうで、ロミナとクレイさんの知り合いの養殖をやりたいって人に一任して貰う事になった。

俺の趣味は釣りであって養殖じゃないからね。

顔文字さんは作物研究もあるのでこの辺りが俺との違いだろう。


「うーん。鮭を釣ってしまった。次の目標を決めないとなー」


フライフィッシングで鮭は釣ってみたいと思っていた。

それが叶ってしまったので次の目標を思い浮かべて置こう。


「色々と目標を作るのは大事ですね。絆さんは次は何を釣りたいのですか?」

「そうだなー……鮭関連の次の目標は……あれだね。キングサーモンとか居るなら次はそれを釣りたいかな」

「キングサーモンなんて魚がいらっしゃるのですね」

「うん。日本名は……なんだったかな?」

『マスノスケでござる』

『絆ちゃんの次の目標、キングサーモン』

『我らのサーモンがキングになっちゃうでござる』


俺のファンクラブの奴ら、黙れ!

何がキングになっちゃうでござるだ!


「釣れると良いですね」


硝子は隠ぺい察知のスキルを所持してないのでファンクラブの雑談が聞こえないようだ。

ここで聞こえてる風にするのはできなくはないけど関わり合いになりたくないので硝子との会話に意識を集中しよう。


「そうだなー今度はどのあたりに生息してるんだろうね」

「色々と探して行くのが楽しい……ですよね?」

「うん」


いろんな魚が釣れるもんだ。

で、そこで地道に釣っているとパイクという魚も釣れた。

他にブリーム……地味に海外っぽい魚が多いかな?

プラド草原も海外の魚が多かったし、その辺りの縛りというか何かがあるのかなー?

そこそこ釣って釣りの実績登録を終える。

地道にいろんな魚を釣って行かないとね。


大会ルール



「絆さん。まだ釣りますか?」

「いや、ブラックバスも気になるから適度に切り上げようかな。何よりカニ籠設置をしておきたい」

「相変わらずなんですね。絆さんのカニ籠は底をつきませんね」

「実はカルミラ島に戻った際に残ってた籠を倉庫から出した」


一応最後のカニ籠なので補充しないといけない。

倉庫の物資でコツコツ作るのが良いかな。

もう自作できるし。


「抜け目がないですね」

「まあね」


って訳である程度カニ籠を設置して次の湖へと移動する事にした。

出てくる魔物は……開拓地に近いからかそこまで強くなくあっさりと倒せる。

そうして湖に移動した俺たち。


「おー……」


ミカカゲの湿地帯もかなり大きい感じだったけどノースフェラト近くの湖も中々大きい。


「この湖は次の都市なんじゃないかと思われる場所への中継地なんじゃないかって言われてます」

「へー……確かにリスーカの出張店舗があるね」

「ええ、ノースフェラト側から住宅範囲があるようで、コテージ風の家をプレイヤーが建てることが出来るようです。キャンプ場もありますね」


硝子の指さす方角を見ると数名のプレイヤーがテントを張っている姿が見える。

ふむ……ここでペックルハウスを展開してキャンプをするというのも中々乙なものな気もする。

湖畔でゆっくりと休むか……悪くないかもしれない。

釣りに関する施設は中々揃っていていい場所だな。

カルミラ島は海に囲まれているので釣り一極って感じだけどさ。

淡水魚オンリーで釣れるのは楽しいだろう。

プラド草原も似たようなもんか……?


「それであそこでブラックバスの釣り大会が開かれますね」


リスーカが受付をしている大会の登り旗が目に入る。

えっと……開催まで後五日かー。

参加人数は十分いるみたいだ。

優勝景品は水族館のコインでも貰えるコインと釣り具くじ挑戦権A。


「釣り具くじ挑戦権Aって?」

「使うとディメンションウェーブイベント時のルーレットみたいなものが出てランダムで景品がもらえるそうです

。外れだと店売りのルアーが貰えて、当たりだと希少な釣り具や釣り具の強化素材が出るそうですよ」


「おー!」


なんともプレイヤーの競争心を煽る景品が配置されているもんだ。

ちなみに2位や3位もそれぞれ景品がある。


「対象の魚はブラックバスですね」

「じゃあエントリーだけでもするかな」


登録だけでもしておかないと乗り遅れかねない。

何度目の開催かは分からないけど俺も参加して優勝するぞー。


「ようこそ、ここはノースフェラトの湖で開催する釣り大会チュチュ。対象魚はブラックバス、大会中は開拓妖精の使用、特にペックル所持のプレイヤーは水中に泳がせて対象魚を誘導する行為は禁止ッチュ。それでも良いチュ?」


そんな事が出来るのか。まあ……ペックルって指示すれば釣りや漁とか出来るもんな。

システム的に封じてるって事か。


「あ、あなたは……狩猟具のプレイヤーッチュね! しかも中々の実力者! これは波乱の大会になりそうチュ。もしかしたら……伝説のブラックバスが顔を覗かせるかもしれないチュね」

「絆さんだからこそのイベントが発生しそうですね」

「らるく達は絶対に連れてこないと五月蠅そうだなー」


こんなフラグがあったら連れてこないと行けなさそう。

というか伝説のブラックバスってのが気になる。ヌシブラックバスとも違うヌシとして登録されそう。

やる気が出てきたぞ。


「何はともあれ、はい」

「参加費は3000セリンッチュ」


俺はピッと3000セリンをシステムで提出する。


「登録受理したチュ。五日後の朝6時に開催するのでちゃんと参加してほしいチュ。ただし何か予期せぬ出来事が起こった場合は中止になることを先に容赦してほしいチュ」


って事でエントリーは終わった。

もちろん硝子も一緒に参加してくれることになったぞ。


「楽しみですね」

「そうだね。んじゃとりあえず大会に備えて湖の下見をしようか」

「ええ」


という訳で湖へと行く。


「ここって湿地帯と同じく騎乗ペット使って大丈夫なんだよね?」

「はい。小舟とかを使っても良いそうですよ」

「じゃあ俺の騎乗ペット、ライブラリラビットで行くぜ」


早速騎乗ペットを出して乗る。

……乗り方に関しては気にしない。

幼女と二足歩行の大ウサギって感じなんだけどね。


「絆ちゃんが騎乗ペットに乗ってるでござる」

「あの騎乗ペットになりたいでござるよ。片手で絆ちゃんを乗せる人生」


だから遠目で気色悪い話をするなっての。


「……なに? プギャーが絆ちゃんの騎乗ペットとよく似た奴に乗っていた? ギルティ!」

「ギルティ!」

「ギルティ!」


おい……顔文字さん、ここで騎乗ペットに乗って移動を開始したのか?

なんか罪ってファンギルドの連中が騒ぎ始めたぞ大丈夫か!?


「羨ましい」

「ふ……俺もライブラリラビットでござる。絆ちゃんの配下のウサギと思って乗ると楽しいでござる」

「ギルティ!」


……あいつ等、ネタで遊んでると思うほかない。

念のために顔文字さんにチャットを送っておこうかな。


「んむ? 島主よ。なんじゃ?」

「顔文字さん。俺と同じ騎乗ペットに乗ってるのがファンクラブの連中に見られたらしくてギルティって囁かれてるよ」

「なんじゃと!? くっ……後で島主と友達だと手を繋いで歩き、喫茶店で楽しく食事をしているようにするのじゃ」


ああ、予防線が約束されてしまった。

友達アピールに余念がない。


「おやつ時には合流するのじゃぞ! わらわの為にも頼むのじゃ!」

「はいはい」

「絆さん、チャットですか?」

「うん。顔文字さんに連絡をね。騎乗ペットが同じなのをファンクラブに知られたっぽい」

「領地持ち固有の代物という事なのでしょうね」


そうなんだろうなー。


「ノースフェラトの領主も同様の代物を持ってるって事になりそうなのじゃ」

「どんなのを持ってるんだろう?」

「そういえば聞きませんね」


ファンクラブが察知してない事を考えると、あんまり乗ってないのかな?


「昆虫が好きなようじゃし乗らずにいたりしての」

「ありえそうですね」


まさかーそこまでやり遂げるタイプなの?

あんまり会いたくないなー。


「どんな騎乗ペットを持ってるか楽しみですね」

「あったら聞いてみるのも良いかもね」


生憎と留守だった訳だけどさ。

後にクレイさんの情報網に引っかかった話だと茶色だったそうだ。ブラウンって感じ?


「何にしても後で合流なのじゃ。ではわらわは調査を続けるのじゃ! おー……花畑なのじゃー」


と、なんとも乙女っぽい声を顔文字さんはさせつつチャットを終えた。


「それじゃあ行きましょうか」


硝子がいつの間にか小舟を出してエンジンを付けている。


「それ……」

「あ、はい。しぇりるさんに小舟を作ってもらいました。エンジン付きです」

「おー……」


いいなー俺の場合は騎乗ペットのライブラリラビットが器用に小舟を漕いでかなり早く動けるからエンジン付きの小舟は使わなくてもよさそう。

けれど、なんかエンジン付きとか羨ましい。

という訳で湖畔から湖に入った俺たち。


「それで絆さん。何処で釣りをしますか?」

「まずは地形の把握の為に軽く回ろう」

「ええ」


という訳で俺を先頭にシステムで表示されるマップを確認しながら湖の釣り場を確認する。


「そういえば釣る場所によって変化ってあるんですか?」

「今までの感覚だと無い」


ぶっちゃけ釣れる場所の条件さえ合っていれば実はルアーを落とすだけでも釣れるしヌシも引っかかっている。

マップごとに釣れる魚が決まっている大雑把なシステムなんじゃないかとは俺もさすがに察してはいるのだ。


「ただ、そこは空気というかなんて言うかね。それとさすがにヌシとなると引っかかる場所が決まってたりするから」


プラドのダンジョンにいた肺魚とかがまさにそれだろう。


「そうですね。釣りギルドの方に聞いた所、目視出来ないヌシは縄張り範囲で釣ると確率で引っかかると仰っていました」


そういった考察も出ているんだな。


「ここのヌシであるブラックバスを釣る際に皆さん検証してましたよ。大会指定の魚は特例処理でブラックバスの生態を知っていると有利になるそうです。大会の場合は大きな魚を釣るのが目的ですので」

「ほう……そんな要素を介入してあるのか」

「ええ、大物を釣る際の法則があって、ヒントはカルミラ島の該当魚の水槽と図書館に密かに追加されていたとか」


なんだか色々と面倒そうだ。


ブラックバス



「ブラックバスに関してはゲーム開始前に予習済みだ」

「あ、そうなんですね」

「そこはこう……どんな要素があっても良いように先に調べていたって感じでね。この辺りの水温と雰囲気からして……秋っぽいね」

「そうですね。ミカカゲの湿地帯も秋でしたがこの辺りも今は秋のようです」

「となるとブラックバスは活発な時期、昼は逆に引っかかりづらいって聞いた。それ以外は何処でも釣れるけど……そうだなー」


と、俺は湖内にある立ち枯れの樹木が水没しているエリアを選んでルアーを飛ばす。

もちろんルアーは青鮫のルアー。

クイックイ! っと適度に魚を誘惑するように動かして引っかかるか様子を見る。


「……」


俺を両手で支えるライブラリラビット……うん。呼吸してる感じに上下する動きがあるんだけど、黙ってるとなんか気になるね。

こう、俺の上から水面をじっと見つめるその姿。

目から光線とか出してライトになったりしたら怖いな。

なんかブレイブウサウニーは夜に目が赤く光って照らしてるのを見た事あるんだよね。

ブレイブペックルは盾を光らせて明かりを出してたんだけど。


「にんにん」

「絆ちゃんのバス釣り」

「あのルアーに食いつきたいでござる」

「まて、あのルアーで絆ちゃんは魔物を切り刻んでいた。食いつこうものなら切り刻まれるでござる」

「本望でござるよ」

「やめておけ、気づかれたらファンクラブ解散の危機でござる。それは我らの本意ではないでござる」


……竹筒で俺たちを遠間で潜伏する闇影よりも忍者をしているファンクラブの連中……気づいてないと思っているのだろうか?

お前ら釣りギルドなんだろうが! 潜るな! 小舟で釣り人に偽装しろ! 気づいてないと思ってんだろうが分かってんだよ。

闇影……お前は忍者を返上してお嬢様になったほうが良いと思う。

こいつらの忍者は筋金入りだと思い始めてきた。

俺がプラドで開拓している間にどんだけ成長をしていたんだこいつらは……。


「私もやりますね」


硝子も俺の隣に小舟を寄せてキャスティングをする。

中々手馴れてきている。

非常に頼もしい。


「あ、なんか糸に何か当たりました。ブラックバスでしょうか」


硝子……糸の方に何かが当たるのが分かるの?

俺は全然わからないんだけど。

なんて思いながらルアーをリズミカルに動かしているとガクっと何かが食いついた感覚がして咄嗟に竿を上げると思い切りしなった。


「フィッシュ!」


立ち枯れの木々に糸を引っ掛けてしまわないように竿を高めにリールを回す。

ぐいぐいっと……良い手ごたえ、少なくとも今までの魚よりも引きが強くてワクワクしてくる。

バシャバシャと水面で魚が暴れだす。

かなり大きめのブラックバスだ。

サイズは目算だけど少なくとも40センチ強はあるだろう。

今まで釣った魚に比べれば小さくないか? って感覚もあるがそれはそれ、ブラックバス基準で言えば大きい。


「大物ですね! さすが絆さん!」

「行くぞ!」


右へ行けば右へ、左へ行けば左、立ち枯れに引っ掛けられそうになったら引っ掛けないように動き回る。


「……」


ライブラリラビットが俺の思考を読み取って器用に小舟を動かして回り込む。

その動きはなんとも凛々しく見えるかもしれない。


「あのウサギ……出来る」

「有能執事に見えてきたでござるぴょん」

「ウサウニーじゃないウサギ、さすが絆ちゃんの騎乗ペットでござるぴょん」

「絆ちゃんとウサギ……なんか野郎は除外って思ったけど絵になるでござる」

「認めざるを得ないようだな。ウサギ」


何を抜かしているのだろうかあいつ等。とツッコミたいけど関わり合いになりたくないしそれ所じゃないので無視する。

ここで攻撃指示を出すのは無粋だろうか。

ブラックバスと俺とのシンプルな戦いだ。

バシバシと適度に糸を切ろうとしてくるがこっちの装備は軟ではない。

何より俺自身の積んだスキルが相手の抵抗をものともしない。

しっかりと着実に攻めて行けば難しい相手じゃないだろう。


「はあ!」


バシャ! っと俺が一本釣りの如く竿を上げるとブラックバスが高らかに水面から飛び出して手元に飛んでくる。