Wave of dimensions — страница 14 из 111

「はぁ!? あんた等死に行くつもりか!」

「その考えで良い。HPの高い壁程度に考えてくれ!」


心配する者の声をバックに勇魚ノ太刀を強く握り締めて走り始める。

現在の俺達を見てスピリットの分際で、と思っている奴も多いだろう。

実際その通りスピリット程度なのかもしれない。

だが、これ程スピリットが活躍できる場面はそうあるまい。

今は自分にできる事をするのみだ。


「硝子。扇子はある程度チャージが必要だろう。こっちでも何とか時間を稼ぐ。スキルを連打すれば多少は行けるだろう。硝子は相手を沢山巻き込める様にスキルを使うんだ」

「わかりました。ある程度のダメージは覚悟を持っていきましょう!」

「おう! 高速解体」


あれだけ数がいるんだ。今までみたいに掠り傷で済むとは思っていない。

何より弓兵がいるのだから遠距離攻撃も数えられない数飛んでくる。

それでも俺達はスピリット。

HPの高さとスキル乱発だけは誰にも負けない。


「接触します。乱舞三ノ型・桜花! 充填!」


待機中ずっとチャージしていた扇子スキルが敵を一閃した。

大凡10匹程の敵が崩れ、屍を乗り越える様に敵が現れる。


「クレーバー! クレーバー! クレーバー!」


立て続けにクレーバーを使い、赤エフィクトが途切れる事なく敵をなぎ倒す。

クレーバーは元々骨などと相性が良いのが今回に限り良い方向に転んだ。

連続でスキルを使わないと敵を倒せない程度のダメージだが効いている。


「クレーバー! クレーバー! クレーバー! クレーバー!」


回転するかの様にスキルに掛かる遠心力を加速させる。

隙を、物理ディレイを1秒でも多く減らす。


「乱舞二ノ型・広咲! 充填!」


当てる事を重視しているのか硝子は最低チャージ時間で攻撃を当てる。

無論チャージ時間の関係か一度では倒れない。

その敵にそのまま攻撃を繰り出し、仕留めていく。

一撃で倒せないなら攻撃を繰り返せば良いだけって奴か。


「絆殿! サークルドレイン!」


闇影の援護が飛んでくる。

敵軍の足元に円が浮かび、ドレインを命中させる。

既に弓や魔法でダメージが入っていたのか何匹か倒れた。

その後方には未だ敵がうじゃうじゃいるが、一瞬でも動きが鈍れば良い。


「……トグリング」


再度クレーバーを使う直後、俺の狙った敵にしぇりるが攻撃する。

闇影のドレインを受けていた影響か串刺しにした三匹同時に倒れた。


「闇子さん、しぇりるさん……」

「お前等な~」

「……わたしだけ仲間ハズレはダメ」


無表情の代わりに胸にあるマリンブルーの宝石が煌いた。

お前少年マンガのライバルキャラかっつーの。

若干死亡フラグ立っている気もする。

だがこの四人なら、もしかしたら。


「本当にやばくなったら後退するんだからな! クレーバー!」

「……わかってる。フルハープン」


剣戟、矢、魔法が飛び交う戦場の中、俺達四人は孤立している。

効率で考えれば、何やっているんだろう、とも思う。

それでもパーティー四人で何かをしている事が楽しいと思った。

ディメンションウェーブとかいう邪魔が入ったから断念しているが、俺達なら海を越えられる。純粋にそう断言できる。

ゲームとはいえ、こんな大群相手にやってくる大馬鹿共なのだから。


「退路、敵で埋まったでござる!」

「くそっ! 言った傍から後退不可かよ」


振り返ると、俺達に円を描く形で囲まれている。

敵行軍を遅らせる事はできているがこちらの退路が絶たれた。


「四面楚歌でござるな」

「そういうお前は、なんで俺達の傍にいるんだよ」

「自分、絆殿の影でござる故」

「……そういえばそんな設定あったな」

「設定とは酷いでござる!」


そんな設定でも嬉しいと思うのだから俺も単純だな。

……口にすると調子に乗りそうなので言わないが。


「さて、賭けでもしようぜ」


敵へ攻撃を繰り返しながら会話する。

丁度硝子と背中を預ける状態で戦っている。

まるで何かの戦記モノみたいで燃える。

絶対今、変な脳汁出ているよな。エンドルフィン的な奴。


「賭けですか?」

「そうだ。俺達がどれ位持つかの賭けだ」

「……それじゃあ賭けにならない」

「然様でござるな」

「全員生き残りかよ……」

「全額」

「全額でござる」

「なるほど、そういう意味ですか。では私も全額で」

「じゃあ俺だけ全員死ぬにいち……なんでもありません、全額賭けます」


冗談の通じない奴等だ。一瞬視線だけで殺されるかと思った。

こいつ等はほんの一ヶ月で殺気でも放てる様になったんじゃないか?

いや、ゲーム的な殺気だが。

にしても普段アレだけボケておきながら俺のボケは封殺とか。

まあ空気読めない自覚はあるけどさ。


「じゃあ、エネルギーをこいつ等に奪われるのは癪だ。全部ぶつける勢いで行くか」

「はい!」

「了解でござる」

「ん」


エネルギー全損は痛いが戦闘自体が面白いのでよしとしよう。

効率だけで語れない事だってゲームには沢山ある。

計算式は超えていないからスキルは無くならないしな。

決意して突撃しようと思った直後。


「すっごーい! あたしもスピリットにすればよかったな~」


そんな声が響いた。

しかも、とても聞き慣れた声だ。


「……紡?」


敵を飛び越えるかの様にやってくる我が妹。

ゲーム内ネーム、紡†エクシード。

その姿は漆黒のミドルアーマーにサークレットの様な兜からはみ出るケモノ耳。

そして巨大な鎌。

大鎌って奴か。

確か、長所は――


「遅れてごめんね、絆お兄ちゃん! これからこっちの反撃だよ! 死(デス)の舞踏(ステップ)!」


スキル発動と共に四連続の斬戟が響く。

それと同時に敵が何十匹と崩れた。


長所は――高威力物理範囲攻撃。


……賭け、全額賭けといて正解だったな。



海水が足りない……。

反転攻勢

紡……援軍の到着によって戦況は一気に引っ繰り返っていた。

元々の戦力不足が解消されたのが大きい。

人気のある魔法や弓スキル持ちが多く、普段は使えない範囲攻撃を重点的に使えるのは、ある種お祭り状態にも近い。


『敵の種類がまた増えたぞ!』


それで尚、支配権を完全には奪っていない所を見るに難易度は絶妙と言える。

異論はあると思うが、俺は対戦ゲームなんかで自分と敵が同じ位の接戦が一番燃える。

どちらかが一方的に敵を蹂躙するのはやるのも、やられるのもつまらない。

そういう意味では、この難易度は丁度良いと思った。

さながら攻防戦とでも表現したくなる位、自軍と敵軍の状態は拮抗していた。


「……はぐれたな」


しかし援軍の到着によって同時に戦場は混迷を極めていた。

金属の剣戟が響き、矢の風斬り音が止め処なく流れ、魔法による爆発が逐一起こる。

人々の怒声と断末魔、そして押せよ押せよと攻め続ける足音。

そんな様々な物が入り混じった場所で、はぐれてしまうのは予想できていた。

予想通りとはいえ今頃硝子達は何しているやら……おそらくは戦っているんだろうけど。


『こちらAの6! 中央から塔に接近した!』


上がる歓声に右側である俺達の侵攻も強くなり敵を打ち破っていく。

現在Bの5にある十字路、集約地点に到着して、我先と禍々しい黒い塔に急いでいる。

その道に残るは骨の残骸、後から追加で沸いてきた次元ノ獣や次元ノ甲虫といったモンスターの死体ばかりだ。


塔を仰ぎ見る。

まるで砂糖に群がる蟻の如く……とでも表現するか。

仮にあの塔を破壊すればプレイヤー側の勝利と言うなら俺の戦いはここで終わりだろう。

突然敵軍が沸いた時はどうしたものかと慌てたが、もう勝った様なものだ。

適当に帰る準備でもして、明日は船旅と行けばいい。

エネルギーが徐々に増えている所から推測すると、どこかで硝子達がまだ戦っているのだろう。


「もう塔破壊か、予想より早い……な?」


何度目か分からないので、それ程驚きは少なかったが黒い塔が崩れると同時に黒紫色の禍々しい粒子が塔を中心に出現して爆発した。

塔の辺り群がっていたプレイヤーは直接爆裂を受けた所為かダメージによって死んだ者までいる。土煙が上がって良く見えないが、ボスモンスターでも出現するのだろう。


『こちらAの6! 塔が爆発して、中からモンスターが……うわああ!』


マップ会話に断末魔が響く。

来たか、予想通りというか、王道だけど中々に燃える展開だ。


『腕……? 何かの腕が裂け目から出てくる』


土煙が飛散して現れたのは黒い体毛と鋭い爪の付いたモンスターの大きな片腕が振られる。その攻撃進路にいた何名かが吹き飛び、防御をできなかった者から倒れていく。

リザードマンダークナイトよりは確実に強そうだな。

まあ比べるのも失礼だと思うが。


……しかしあんなガチガチな防御装備の奴が死ぬとか。

俺が攻撃を受けたら何ダメージ受けるんだろうか。

軽く見積もって3000か、あるいは5000か。

少なくともそれ位は受けそうな気がする。

出現に制限時間でもあるのだろう。次元の穴をバチバチと電気みたいな音を発ててこじ開けようとしているのが見えた。


『至近距離では分が悪い! 遠距離攻撃を当てるのじゃ!』


既にそれは実践されており、矢や魔法が一斉射撃と言わんばかりに放たれている。

やらなければならないが、ダメージは低そうだ。

お、前衛が後衛の攻撃に任せて撤退する中、何人かが攻撃を止めずに続けている。


「……やると思った」


硝子と紡がその中に含まれていた。

どちらかと言えば硝子の扇子は範囲攻撃で攻撃力はそこまで高くない。

ただし武器単体のウェイトは全体でも1、2を競う程軽く設定されている。

その為、回避に重点を置いた衣服系と最大にマッチした装備だ。

そんな長所を最大限に活かして腕の攻撃を飛んだり跳ねたりしながら回避していく。


もう片方……紡の大鎌もまた範囲攻撃だ。

詳しくはまた聞きでしかないが、通常攻撃も範囲攻撃に属しており、敵が沢山沸く場所での乱獲狩りなどと非常に相性が良いと聞いた事がある。

逆に単体へのダメージは他の武器に劣り、武器が重いのでスピードが落ちる。

そして最大の短所としてスキル一発に消費するMPが非常に高い事。

だから燃費が悪い武器だと聞いた。


「この流れだと俺もあっち行かなきゃダメなんだろうな」


目立つ硝子の和服は闇影としぇりるを引き寄せるだろう。

そんな中俺だけはぐれたフリをしていたら後でなんて言われるか分かったものじゃない。

しょうがない、あそこに行くか!

俺は弓を構えている後衛達を余所に最前線へ急ぐ。

いや、待て。

あいつに近付くなら何か対策が必要だ。

悔しいが俺には硝子や紡の様なプレイヤースキルは無い。

なにかしろの手段がなければ手伝い所か、邪魔をしてしまうだろう。

何か、何かないか。


名前/絆†エクシード。

種族/魂人。

エネルギー/67720。

マナ/8100。

セリン/46780。


スキル/エネルギー生産力Ⅹ。

マナ生産力Ⅶ。

フィッシングマスタリーⅣ。

解体マスタリーⅣ。

クレーバーⅢ。

高速解体Ⅲ。

船上戦闘Ⅳ。

元素変換Ⅰ。


未取得スキル/エネルギー生産ⅩⅠ、マナ生産力Ⅷ、フィッシングマスタリーⅤ、ヘイト&ルアーⅠ、舵マスタリーⅠ、夜目Ⅰ、都市歩行術Ⅰ。


ヘイト&ルアーⅠ。

釣竿を使った初級補助攻撃スキル。

ルアーや釣り針に魚やモンスターのヘイトを上昇させる効果を付与した攻撃を打ち出す。

一回の使用に50のエネルギーを消費する。

取得に必要なマナ100。

取得条件、釣竿によるモンスターの討伐数が一匹を超える。

ランクアップ条件、釣竿によるモンスターの討伐数が十匹を超える。


なんだ、このスキル。

というかいつ俺が釣竿でモンスターを倒した。

海での一週間、度々釣りをしていたのは事実だが、まるで記憶にない。

しかしヘイトね。

敵からの攻撃を自身に集中させるって効果だったか。

釣竿は攻撃に使った場合遠距離攻撃扱いになるので相性は良いのか?

いや、俺は衣服系の防具だから普通に相性が悪いぞ。

魚に効くという事は釣りで釣れる確率が上がるとかだろうか。今度実験しよう。

何に使うか分からないが釣りスキルであるなら取得しておこう。

って、今はあの腕だろ!

なんていうか俺、釣り好き過ぎだろう……。

少し自重しようと心の底から思った。


「ごめん! 止められない!」


紡のそんな声が聞こえて顔をあげる。ステータス画面から視線を敵に戻すと次元の穴がぱっかりと開いて腕から先が現れ始めていた。

全長プレイヤー五人分にも匹敵する巨体は漆黒の体毛が生え、ギロリと光る深紅の眼。

そして一番の特徴は頭が三つある事だ。

ケルベロス?

マンガなどで見た事のある犬……『地獄の門番』だったか。

そんな感じの巨大な三頭獣が現れた。


「うわっと!」


三つの頭の一つがこちらに向かって黒い火を吐いてきた。

俺が直接狙われていた訳ではないのでギリギリの所で避けられたが、振り返ると弓部隊が半壊していた。

ゲーム的には第二形態とでも表現すればいいのか。

ああいう、攻撃パターンが変化するタイプ、ゲームでは良くいるよな。

そんな中でも硝子と紡は、ケルベロスの腕や口を避けながら攻撃している。

……今、振るわれたケルベロスの腕を足場にジャンプしたが、どうやってやるんだ?

ゲームとはいえ人間離れし過ぎだろう……。


『……皆の者、悪いが凶報じゃ。ボスの出現と同時に死に戻りができなくなった』


その言葉を聞いて背後に振り返る。

見ると特設マップの入り口が黒いエフィクトを伴っていた。

以降は死んだら戻ってくれないって事か。

まあスピリットは死んだら戻るとか戻らないとか以前の問題だが。

だが、他種族にとって復帰不可は痛い。

何より敵の攻撃力は異常に高い。

全身鎧の重装甲装備の盾持ちがどうにか防げる程の敵だ。

現在、硝子や紡、他数名がケルベロスに取り付いて攻撃しているが、それが不可能な奴等は包囲網を張って矢と魔法を放っている。

あの黒い炎は盾持ちが味方を庇う事で戦況を維持している。


「お前等、矢と魔法の準備ができた。一度退避してくれ!」

「乱舞一ノ型・連撃! こちらで避けます。そのまま撃ってください!」

「だよ~!」


雨みたいに飛んでくる矢と魔法を避けるってお前等は何者だよ。

いや、それ位できないと廃プレイヤーとはいえないのか?

そういえば紡の奴、以前外国産のFPSで視認もせずにスナイパーライフルをヘッドショットさせていたな。

それと同じく空間把握能力でもあるのかもしれない。

生憎と俺はそこまで極めていないが。

避け切れないと思ったプレイヤーが退避を始め、硝子と紡だけがケルベロスに張り付いたまま攻撃を繰り返していた。

実際、誰かがケルベロスの注意を引いていないといけないのか。

そんな中、硝子達は本当に矢と魔法を左右上下、ケルベロスを盾にして回避。

思ったんだが、硝子が俺達と海で戦っているのは場違いなんじゃなかろうか。


そうした攻防が五分程続き――ケルベロスの腕が紡に振り下ろされる。

当然紙一重で避けるのだろう、そう俺が確信した直後。

紡が、ジャンプに失敗した。


「あ……MP切れ」


一言そう呟き、ケルベロスの腕が隙を晒した紡に――


――紡には振り下ろされなかった。


「前々から思っていたんだが、俺ってまさかシスコン……?」


ジャンプに失敗した直後には俺の身体は動いていた。

勇魚ノ太刀を使って防御体勢で受け止め、後方に吹き飛ぶ。

ケルベロスの凶腕から妹を救う、と行きたかったが生憎と俺の腕前では壁になる事位しか出来なかった。


ヘイトアタック

「痛っ……たった一発受けただけで5000ってなんだよ!」


防御体勢で受け止めたケルベロスの攻撃は俺が衣服系防具である事を含めても高過ぎた。

そのダメージの高さから実際に痛い訳でもないのに表情を歪めてしまった程だ。


にしても約5000ダメージか。

他のオンラインゲームでも大規模イベントのボスは総じて攻撃力が高いもんだが、これはプレイヤーキルをしてボスの強さとディメンションウェーブを印象付けるのが目的か。

ともあれ、ここまで大きなダメージを与えて来て、尚且つ死に戻り不可となると、こいつで最後だな。

そう決断付けた所でケルベロスに向き直る。

このままここにいると危険だ。既にケルベロスが再度攻撃する動作を取っている。


「紡! MPが切れたなら一度下がるぞ!」

「う、うん!」

「硝子、悪いがしばらく頼む!」

「わかりました! ……絆さん」

「なんだ?」

「かっこよかったですよ」

「……ほっとけ」


戦線から一度撤退しながら呟く。

いや、まあ自分でも上手くいった自覚はあるけどさ。

女の子にかっこいいとか言われるのは恥ずかしいじゃないか。


「お兄ちゃん……」

「ん?」


味方盾持ちより後方に移動すると紡が俺に話しかけてきた。

重い大鎌とミドルアーマーの割に避けていたのかダメージは無さそうだ。


「どうしてあたしを助けてくれたの?」

「紡が戦力として必要……ていうのは建前か」

「だね」

「俺がお前の兄貴だからじゃないか?」


多分、他の奴だったら……仲間3人は除く――身代わりにはならなかっただろう。

誰も彼も助けるお人好しじゃないからな、俺は。


「でも、スピリットは……」

「何気にしてるんだよ。5000程度、あってないような……いや、そうでもないけど……経験値的には結構……違う!」


最後までかっこよく決めようと思ったが計算してみると結構厳しい。

だけどゲームって、そういうんじゃないだろ。

効率だけじゃないっていうか、無駄に溜り場で会話に花を咲かせて、狩りもせず一夜を明かした虚無感みたいのはあるけど、それが無駄とは言いたくないというか。

なんというのか、俺がスピリットだからこそ死なせたくなかったというか。


「そう! スピリットは仲間を決して犠牲にしない!」


エネルギーを失った時の痛みを知っているからこそ誰かを犠牲にしたりしない。

その時できる最善を模索して、現状を打破する。

それが俺達スピリットだ!

結構ノリで口にした言葉だが、良いんじゃないか?


「絆殿……」

「っげ」


自分に言い訳していたら、いつの間にか闇影が近くに来ていた。

きっと先程の光景を目撃したのだろう。

つまり、今咄嗟に口にした言葉も聞かれたという事に……。

やべぇ。凄い恥ずかしい。


「絆殿……自分、絆殿のお言葉にとても感銘を受けたでござる!」

「は? はぁ……」


疑問系の声をつい二度も洩らしてしまった。

というか一瞬、こいつが何を言っているのか分からなかった。


「絆殿がお気持ちを見せた以上、自分も返す所存でござる」

「……それで?」

「妹君を一度我等がパーティーに入れる事はできぬでござるか?」


パーティー? 何か支援スキルでも使うのか?

支援スキルの中には対象が自分だけ、無差別、パーティーメンバーのみ、と様々な種類がある。俺が使っている高速解体などは自分にしか掛けられないタイプだ。


「紡、できるか?」