Wave of dimensions — страница 17 из 111

俺達全員は水浸しの濡れ鼠状態となりつつもどうにか船の上にいた。

要するに嵐に巻き込まれ命からがら生存した、という状況。

結果として船はどことも分からない……地図上で、方向すら機能しないという最悪の状況にいる。更に沖から離れすぎているのか帰路ノ写本まで使えない。

地図表示で分かるのはこのマップが『帰らずの海域』と表記されている事だけだ。


「死に戻りするというのはどうだい?」

「アルト、貴様俺達がスピリットである事をわかって言っているな」

「そんな事はないよ」


飄々とした顔で軽く流しやがった。

最悪の手段としてはしぇりる、紡、アルトは死に戻りは可能だ。

しかし俺達スピリットは少々厳しい。


「死んじゃう位ならこのまま進もうよ! 戻ってデスペナ受けるより、進んでデスペナ受けた方が良いとあたしは思うな~」


パーティーに加わってから常時機嫌の良い紡はニコニコ顔で言った。

持ち前の性格からか、闇影やしぇりるとも颯爽と打ち解けた紡。

話している内に、何故か誰よりも冒険心を刺激されて海、海、海と騒ぎ、毎朝就寝中の俺へのしかかりを掛けてくるに至っている。


この言動についてだが、元々紡はRPGがそこまで得意じゃない。

MMOなど、特にVRと付くゲームは結果としてアクションRPGになってしまうという弊害がある。

実際にゲームに入り込むのがVRの特徴であるが故に、どうしてもアクション要素が付く物が多い。そうなってくると紡は途端に上手くなるが家庭用RPGだと低レベルクリアでも目指しているのか、と思う程次へ次へと進む。

まあ後ろで見ている分には面白いのだけど……元々好奇心が旺盛な所があるからな。


「……元々どっちが前か後ろか分からない」

「あれだな。迷いの森とか、無限砂漠とか、RPGだと定番だがそれに近い感じか?」

「……そう」

「しかし驚いたね」

「そう」

「いや、僕はまだ何も言っていないんだけど……」

「そう」

「絆、彼女の翻訳を頼めるかい?」


しぇりるのコレに俺達は慣れたが、初対面のアルトじゃ厳しいか。

どうでも良いが、なんで俺がまとめ役みたいなポジションになっているんだ。


「それで何が驚いたって?」

「うん。僕は絆の言っていた海云々を半分……七割方信じていなかったんだけどね。現状を見て考えを改めようと思ったんだ」

「それは何故でしょうか?」

「絆も話していたけど、迷いの森や砂漠みたいなフィールドって昔のRPGでは一般的だと僕も思うんだ。それで、大抵はそういう場所をクリアすると次のマップに行けるとか、伝説の剣とかが手に入ったりするじゃない。もしかしたら絆の話の何割かは本当かもしれないってね」


概ね同意見だ。

俺の知っているゲームだと一度はプレイヤーを困らせる通過マップ、後半に物語を進める為のキーアイテムが眠っている、というパターンもある。

攻略本でもあれば良いんだが、生憎とディメンションウェーブはβテスターがいない。

そうなると手探りで帰らずの海域を探索せねばならない。

どちらにしても海を越える場合、行く事になるのだから。



そうして帰らずの海域を彷徨う事となった俺達だが。


「紡さん、闇子さん!」

「むふー!」

「承知でござる!」


ブレイドマーマンとスカイレイダーなる水系と鳥系の、どう見ても生態系が違うだろうってモンスター群が連携攻撃を仕掛けて来ていた。

それに対する我等が戦力。


扇子の派生武器である両手持ち……左右の手に扇子を持った硝子。

特化に進んだ戦鎌の紡。

相変わらずドレインオンリーの闇影。


この三人が対峙する。

ディメンションウェーブ第一波で活躍した二人がいるのだから絶対安心かと思いきや、敵も強い。おそらく海域に流された影響で適正より上の敵と戦っている。

少なくとも俺が相手するにはエネルギーが大幅に足りないな。


「輪舞一ノ型・回撃!」


両方の手に握られる扇子が開き、硝子は舞うかの様に一回転。

狭くはあるが全方位攻撃なので背後の敵にも攻撃が命中する。


確か輪舞の概要説明は……充填時間の大幅増加と防御能力を低下させる代償にスキルと通常攻撃の威力が高くなる、だったはず。

以前が防御必殺タイプだとするなら、攻撃必殺タイプって感じだ。

説明通り以前使っていた乱舞系とは違いチャージ時間が大幅に延びたがその分威力が高くなっている。使い始めてまだそんなに時間は経っていないので断言はできないが硝子には輪舞の方が合っている気がする。

なんというのか、硝子は受け止めて防ぐより避ける方が向いていると思うんだ。

ケルベロス戦アクロバット的な意味で。


尚、先日……光のルアーを買った日だが。

硝子の新たなリアルスキルが判明した。

なんでも硝子は利き手が両方……両利きらしい。

文字を両方の手で書きやがった。


硝子さんマジパネェッす。


冗談は置いておくとして。

考えてもみれば双剣とかゲームではありがちな設定だがVRゲームだとやはり利き手の剣の方が上手く動かせるのだろうか。

もちろん、スキルはシステムが勝手に動かしてくれる。だが通常攻撃は別だ。

利き手は反射動作される手の事だから脳と関わりがあると考えられる。

詳しくないので予測になるが、脳と関わりがあるとすればやはり利き手もゲームをする上で重要な才能の一つになるはず。


そういえば昭和を懐かしむテレビ番組で左利きは独楽の対戦で有利だったと聞いた事がある。

他にもスポーツでは右利き選手と左利き選手は違うとも聞く。

具体的には科学の塊であるVRゲームでそれが該当するかは不明だ。だが、現実と差の少ないこの世界において利き手は意外にも重要かもしれない。

まあ今は関係ないか。

ちなみにどうでも良い補足だが、俺は平均的な右利きだ。


「彼女、第一印象と大分違うんだね」

「アルト? こんな所にいると殺されるぞ?」

「……気をつけるよ」

「で、硝子の何が違うって?」

「第一印象だよ」


確かに硝子は普段話している時は、物腰が柔らかく話し方も丁寧なのでキャラクター外見と一致していると思う。

しかし結構考えている、というか見た目よりも暴力的な所はあるな。

ディメンションウェーブの時も防衛より攻めを提案していた。

……生まれる時代と性別間違えたんじゃないか?

戦国時代とか三国志に生まれたら武将とかやってそうだよな。


「そういえば絆はやっぱり以前手に入れた媒介結晶を使っているのかい?」

「……店売りだが?」


――媒介石。

NPCの店で売られている媒介石は一つ特殊効果が付与されている。そしてシールドエネルギーという他種族でいうHPに該当するゲージが付属している。

このシールドエネルギーはHPと同じく自然回復する効果もある。

唯あまり数値自体は高いものではなく、低い物だと50、一番高い物でも1000。

シールドエネルギーの低い物は特殊効果が優秀で、高い物は貧弱というありがちなバランスだ。どれを使うかは個々人の好みと言った所か。

闇影なんかは闇魔法威力%アップとか付けていた気がする。

俺は中途半端なスキル構成なのでマスタリー系ランクアップを使っているけど。


「ほら、僕等が出会った頃……もう一月位前になるのかな。空き缶で稼いでいた時に、話していたじゃない。媒介結晶って」


あーあったな。そんなアイテム。

アイテム欄をごちゃごちゃ詰め込んでいるので忘れていた。

俺はカーソルメニューからアイテム欄を選択して探してみる。

色の入っていないやや灰色染みた結晶石。

これは未鑑定という意味か。


「あった。これか」

「まだ未鑑定だったんだね」

「実装前に手に入れたアイテムじゃな……」


実装とは言っても事前に搭載されている追加システムみたいな物だからな。

きっとこれからも装備できないアイテムとか出てくるのだろう。


「まあそういう事なら鑑定してあげようかい? 職業柄アイテムを触る事が多くてね。鑑定スキルの熟練度は高いつもりだよ」

「良いけど、金は無いぞ?」


光のルアーに限らず、リールや料理スキルに使うアイテムを購入したら底を尽きた。

特に媒介石が高かったが……鑑定して優秀なのが出たら無意味に……。


「君は僕の事を金の亡者とでも思っているのかな……」

「違うのか?」

「違うよ! それ位サービスするよ」

「それはすまなかった。じゃあ頼む」


未鑑定媒介結晶を渡すとアルトは虫眼鏡……ルーペ? を取り出した。

そして『アイテム鑑定』と小さく呟くとルーペが淡く輝く。

すると結晶が黒に限りなく近い、深い青色に変わった。


「うん。釣りで手に入った媒介石って感じだね」

「俺にとっては釣りと解体が唯一の長所だからそれで良いんだよ」


受け取ると実験に装備してみる。

装備というか、魂を移すと表現した方が風情はあるか。

システム上、寄り代とする器だからな。


初級媒介結晶。

シールドエネルギー700/700。

フィッシングマスタリーを二段階ランクアップさせる。

夜間に生息する魚に与えるヘイトを上昇させる。


特殊効果が二種類だ。

シールドエネルギーは高い方か? 微妙だ。

しかし店売りの方は媒介石だったが、媒介結晶なんだな。

多分、スキルの付いている数で名称が変わるのだろう。


「ともあれアルト、ありがとな」

「君からはいつも儲け話しかこないからね。これ位ならいつでも言ってよ」


こんな感じで初めのうちは船旅を楽しんでいた。


月夜の攻防

帰らずの海域を航海する事四日。

相変わらず水平線に変化は無く、経験値と解体アイテムが溜まってきた。

それ自体は喜ばしい事だが色々と問題も浮上している。


「全員が持っていた料理アイテムが尽きた」

「……そう」

「ついでに釣りで使う餌も尽きた。今まで溜め込んだ魚肉が尽きたら終わりだ」

「ど、どうするでござるか!?」

「お腹が空くのはつらいよね~」


元々長旅を準備しての出航でなかったのが原因だ。

全員一応に料理アイテムを持っていた位で食料と呼ぶにはお粗末だった。

まあ一応このゲームは餌なしでも釣れるけど。

それも六人の人間を賄うにはどうしても数に問題が出てくる。

何より俺の料理スキルはまだ低いからな。作成失敗も十分ありえる。

そうなると食材アイテムをある程度確保する必要があった。


「だけど悪い事ばかりじゃないよ」

「それはどういう意味だ?」

「うん。僕達はもう何日も水を飲んでいないけど大丈夫じゃないか」

「……なるほど」

「確かにアルトレーゼさんの言う通りですね」


仮にこれが現実だったらもっと前に水不足で問題になっていたはず。

このゲームでお腹が空くのはゲーム終了後が関係していると誰かが話していたな。

同じ理由で現実に帰還後、何かしろのプログラムで現実復帰も実現できているらしい。

俺のリアトモ曰く『鮮明に思い出せる夢』だったか。

そんな表現を言い出すので多少痛い言動こそ残しているが学校の成績に問題は出ていない所を見るに本当の事なのだろう。

……今は問題解決の方が重要か。


「これはゲームだからね。お腹は空くだろうけどシステム的なものだよ。死にはしないんだ。最悪、食べずに過ごす事だって可能だよ」

「そこまで達観はしないが……まあ食料は俺の方でなんとかしてみるよ」


そうして俺は結果的に念願の釣り生活へ突入した。

高級餌の尽きた餌なしではマグロなどが釣れる訳もなく、小魚が限界だが。

ここで活躍したのが光のルアーである。

常時光っているので夜間、ライトの代わりに使われていた光のルアーだ。

昼間は光のルアーで釣れる魚はいないが、夜はイカが釣れる事が判明した。

アルト曰く。


「エギだね」


エギというルアーの一種があるらしい。

いや、光のルアーは普通のルアーって感じの外見だが……光っている以外。

ともかく光のルアーによって食料問題は解決。イカ生活に突入した。

というか夜釣りではイカしか釣れない。

調子に乗って夜間に500匹近く釣って何日も続けて朝昼晩イカ尽くしにしたら。


「絆殿がウザイでござる!」


などと暴言を吐かれた。

しぇりるに至ってはバリスタの矢をイカにする始末。



ともあれ今日も今日とてイカ釣りだ。

既にアイテム欄に1000匹以上いるとか、そういう事は気にしない。

さすが光のルアー。

あの日、あの時、あの俺に言ってやる。

多少高くても買って正解だったな。


尚、帰らずの海域はどういう訳だか昼間にしかモンスターが沸かない。

少なくとも第一都市近くでは夜でもモンスターが沸いた。

長期的航海になるとゲームとして夜はモンスターを配置しなかったとか。

……理由としては弱いか。

仮に何か理由があるという前提を立てたらどうだろう。

一般的なRPGでは迷いの森、無限砂漠などといったパターンは大昔から使われてきた王道中の王道だ。特定の方法でしか抜けられない。ギミックが掛けられていて、進み方一つで行き先が変わる。こんな感じだろう。

既に航海を続けて一週間を迎えようとしている。

俺を始め全員のストレスも高まりつつある。

無論、食べ物がイカだけなのも理由だが。

どちらにしても何かしろ対策を立てないとな。


「釣れますか?」

「……硝子か」


深夜に考え事をしながら釣りをしていたので話し掛けられて少し驚いた。

硝子は俺の隣に腰を下ろすと月を見上げた。

今日は月が出ていて……この世界の月は現実の物より大きいので風情がある。

唯、大きさの割に照らす光は弱い。


「自然は凄いですね」

「どうした?」

「いえ……この世界が作り物である事は理解しているのですが、嵐一つで私達の生活を一変させてしまったものですから」

「確かに」


嵐に巻き込まれたのは不幸だが、六人で船上生活をする事になるとは思わなかった。

これまで夜は第一都市の宿で個別に休んでいた。

不謹慎だとは思うが修学旅行の様で楽しい、という思いもある。

だからこそ、この困難を乗り越える方法を模索しなくてはならない。

ゲームというのはしっかりと観察していれば答えは手に入る様に作られている。

答えを導き出せないという事は何か見落としているという事だ。


「絆さん、引いていますよ」

「大丈夫だ。イカはそんなに難易度高くないからな」


ちょんちょんと竿の先端に響く感覚。


……違う。イカじゃないぞ、こいつ。


ここ数日釣り続けているからか感覚で分かる。

帰らずの海域で夜に釣れるのはイカだけだ。

これは光のルアーに限らない。

しかしここで上がってくる疑問がある。

1000匹以上釣ったイカとイカではない何か。

確率的にゲーム内設定数値は相当低いはず。

ともすれば、釣れる生物は……。


「来る!」


――ガクンッ!

以前似た引きを受けた経験がある。

通常とは明らかに違う引き、点の様なアタリ判定。

これは……あいつだ、巨大ニシン。


「違う。もっと強い……!」

「絆さん、船が引かれています」

「……くっ! 硝子、しぇりるを呼んでくれ、あいつの銛スキルを使えばあるいは……」

「わかりました!」


走って船内へ消えていった硝子に意識を割けない。

逆に全神経を竿の先端に向けた。

脳神経と竿の糸を精神的に繋げ、一本の線に変える。

そして点を見つけ出し、力強く引き……巻く。


リールという新たな要素。

俺が付けているのはベイトリール。

海釣りやルアー釣りと相性が良いという事で一緒に購入した。

最初こそ慣れるのに苦労したが、巻き上げる力が強いのが特徴だ。

難点はルアーを投げるのにコツがいる事だろうか。

なんでも現実でも似た様な特徴があるらしい。

ともかく繋いだ感覚を信じて点となる部分を引っ張りながら巻く。


「……絆、来た」

「しぇりる、俺の指定した場所に銛を撃てないか?」

「……可能」

「頼むっ! 俺だけじゃ釣れそうにない」


銛は元々スピアフィッシング的側面も持っている。

巨大な水棲生物を捕獲する際に最も適した武器は銛だ。

だからしぇりるは敵の体力を奪うにはうってつけの人材だと言える。


「……どこ?」

「待ってろ……」


この間も攻防を繰り返しながら意識を二分、敵の位置を探っていく。

糸と神経を擬似的に繋げているので探知できる……はず。

例えるなら憎しみを追う、だろうか。

なるほど、媒介結晶にあるヘイトを増加させる、というのはこういう事か。

イカを1000匹以上釣っているので身に覚えが無いとは言わない。

だが、逆に憎悪が肌を焼く様なオーラとして伝わってくる。

位置は……。


「そこだ!」

「……ボマーランサー」


銛の中級攻撃スキルだ。

投げ槍の様に銛を射出する中距離攻撃スキル。

青白い紐がしぇりるの銛に繋がり、爆裂の様なエフェクトと共に海に射出。

ドスンッという敵に何かが、しぇりるの銛が突き刺さる感触が手にやってくる。

一瞬明らかに引きが弱まったので巻きまくる。

だが、直に再動した。


「もう何発か出来ないか?」

「だいじょぶ」

「頼む」

「ん」


しぇりるに頼り過ぎるのは俺のプライドが許さない。

弱っていなくとも点を引っ張り、巻き続ける。

そして定期的に射出される銛……仮にスタン状態と名付けよう。

スタン状態の隙を付いて巻きまくる。


「このまま行くぞ!」

「ん」



そんな魂を磨り減らすかの様な攻防がどれ位続いたか。

確実に敵の体力は消耗されていた。

当然だ。こちらは二人で敵は一匹、負ける要因がこちらに無い。


「しぇりる、次で決めるぞ!」

「……yes」


穿たれた銛の感触を合図に力を込め、敵の正体が――――



「……分かっちゃいたけどな」


釣れた、というか捕獲したのは巨大なイカ。

どう見ても巨大ニシンの親戚です。ありがとうございました。

船に載せられないので現在ロープで牽引している。

ていうか、モンスター判定じゃないんだな。

クラーケンとか、そういう名前で登場させればモンスター扱いできるだろうに。

……いや、しぇりるの攻撃をアレだけ受けたらモンスター扱いでも致命傷か?

銛は水棲モンスターと相性が良いからな。


「……絆」

「ん? どうした?」

「あれは早く解体した方が良い」

「理由は……いいや。わかった、解体するよ」

「そう」


理由は訊ねても聞けそうに無いが、しぇりるの目が妙に輝いている様に見える。

そういえばイカをバリスタの矢に使ったまでは良いが、毎日黙々とイカを食っていたな。

イカの消費量が一番多いのもしぇりるだ。

……好きなのか?

ともあれ俺は言われるがまま巨大イカを解体した。

手に入った解体アイテムは――


水神の触腕、水神のヒレ、水神の頭、水神の腕、水神の外套膜、水神の心臓、水神の瞳、水神の貝殻、最高級イカスミ、最高級イカの肉。


巨大ニシンの時と同じく妙に沢山取れた。

きっとぬしに属する奴は全部こんな感じなのだろう。

それにしても水神……元がイカだと思うとアレだな。

仮にこれで武器を作ったらどんな物になるのか。

…………。


「しぇりる、一応皆で決めると思うが、これ持っていてくれよ」

「……そう?」

「なぜに疑問系?」

「そう」

「いや、他意はない。しぇりるが持っていた方が良い事がありそうな気がしてな」

「そう」