種族/魂人。
エネルギー/1000。
マナ/50。
セリン/500。
スキル/エネルギー生産力Ⅰ。
マナ生産力Ⅰ。
アイテム/初心者用武器ボックス、初心者用エネルギーポーション×10、魂人マニュアル。
俺はアイテム欄の魂人マニュアルを選択する。
すると文庫本サイズの本が手元に出現した。
ページを開くと日本語では無い文字が羅列している。
しかし何故か読む事が出来た。魂語と呼ぶらしい。
「えっと……」
――魂人は他種族と違いレベル、HP、MP、STR、AGI、INT、MIND、DEX、LUKが存在しない。
それ等全ての数値をエネルギーとし、エネルギーが多くなればなる程強くなる。
エネルギーが増えれば無限に敵からの攻撃を耐える事も可能となるがHPダメージもMP消費もエネルギーから計算するので気を付けなければならない。
なるほど。かなり変わった種族だ。
要するにエネルギーが多ければ攻撃、防御、HP、MPと全て可能だがレベルも兼ねているのでエネルギーを使い過ぎて死にそうになったら他のゲームでいうレベルダウンした様な感じになるって所か。
今一分からないが、次行こう。
――マナは他種族ではスキルポイントや熟練度に属し、必要に応じたマナを消費する事でスキルを取得する事が可能となる。
スキルは使用する毎にエネルギーを消費する物と、常に消費する物の二種類存在する。
――スキル取得は他種族と同じく、該当する行動を取る事で項目が増える。
魂人の場合は出現したスキルにマナを使う事で初めて効果を得る事ができる。
取得したスキルはエネルギーを消費する事で維持が可能。また必要が無くなったスキルの場合、成長に必要なマナの半分を取り戻す事でスキルランクをダウンさせる事が可能。
尚、総エネルギー量が計算式でスキルによって0を越えた場合、+になるまでランダムでスキルをランクダウンさせる。
どうやら魂人はエネルギー管理が重要な種族って事か。
まあ、なるようになるだろう。
俺はマニュアルをパタンと閉じるとアイテム欄に放り込んだ。
次に初心者用武器ボックスを選んだ。
箱の中には沢山の武器が並んでいる。
どれも初心者用と名が付くだけあって外見は普通だ。
一つ、ハズレじゃなさそうな片手剣を持ってみる。
すると片手剣の簡単な説明文が出現した。が、俺は特に読まずに箱の中に戻す。
奏姉さんも決めてなかった様に公式サイトでも沢山武器紹介があったが、どれが良いのか分からず今日まで決めていなかった。
反応から察するに紡の方は決まっていたみたいだが。
「お?」
一瞬面白そうな武器が表示されていた。箱の中から取り出してみる。
武器/初心者用解体ナイフ。
説明/狩猟した生物の解体用に作られたナイフ。
――武器説明……生物や植物などを解体する為に作られた武器群。
モンスターを倒した際にアイテムをドロップする。
説明短いな。
片手剣は盾が装備できるとか、スキルの特徴とか書かれていたぞ。
これにしよう。面白そうだし。
俺は解体用ナイフを取り出すと決定を選択した。
解体用ナイフを装備っていうか手に持つと装備って事になるのか。
ステータス画面もエネルギーとマナが表示されるだけで、装備欄とかも無いから装備したら強くなったのかが今一分からない。
まあVRゲームにありがちな手に持ったり着たりすれば装備って事にはなるんだろう。
ともあれ、釣りをするには竿が必要だ。
竿が売っている場所はどこだろうか。
道具屋辺りが妥当だよな。
俺はカーソルメニューの中から地図を選択する。
今いる街……名称はルロロナと呼ぶ。
その中で袋のマークが浮かんだ場所を見つけ、その方向へ歩く。
思いの他近く、というか目的も無く歩きながら魂人マニュアルを読んでいたのだが、幸運にも道具屋の目の前に俺がいた。
道具屋は灰色の四角い建物だ。横に袋の看板がちょこんと立っている。
既に何人か人がおり、人間、犬耳尻尾が生えた亜人、耳の尖り肌が白い草人、胸に蒼い宝石が埋め込まれた晶人と様々だ。
……何故か魂人が居ないが、偶然だろう。
道具屋に入ると品物が沢山置かれている。
回復用のポーションに始まり、種、汚れた紙、銅、金槌、鍋、フライパン、すり鉢、クワ、つるはし、スコップ、竿。
竿があった。
しかし木の棒に糸が括りつけられた、少年マンガにでも出て来そうなボロい竿だ。
と言っても、ここで竿を買わなければ釣りができない。
さてさて竿の値段は?
――600セリン。
ステータス欄に載っていたセリンって金の事だったのか。
しかし100セリン足りないぞ。
何か売れる物は……。
先程手に入れたばかりの解体用ナイフ、初心者用エネルギーポーション、現在着ている服。
肌の感触から下着はあるみたいだし、服位無くても後から購入すれば……。
初心者用エネルギーポーションが一個20セリンで売れるみたいだ。
「これを買い取ってくれ」
『はい、初心者用エネルギーポーションですね。一つ20セリンで買い取らせていただきます』
アニメか何かで聞いた様な声が道具屋の店主から聞こえてくる。
何のアニメだったか……結構昔からいる男性声優だったはずだが……忘れた。
まあ良い。今は買い取ってもらう事が先決だ。
『初心者用エネルギーポーション5個で100セリンになります』
チャリーンという音が響きセリンが600になった。
そのまま竿を持って戻ってくる。
『ボロい竿ですね。600セリンになります』
おい……。
ゲーム上の仕様とはいえ、自分の店で売っている物をボロいって……。
店内で商品を眺めていた人間のお兄さんが一瞬『ブッ!』とか良い音出したぞ。
もしもこれが異世界転移的な現実だったら、ここで買い物二度としないわ。
NPCに突っ込んでもしょうがない。
俺は店主に対して湧き上がる感情を抑えながら、ボロい竿を手に入れた。
鰊と解体
その後俺事『絆†エクシード』はボロ竿片手に地図上に青く塗られた場所へとやってきた。
文字通り水、というか海だ。
砂浜から竿を垂らすのもアレなので適当な橋を見つけ、そこに陣取って糸を垂らす。
――事10分程。
未だに釣れていない。
竿の説明文を見る限り、釣り餌という魚が引っかかる確率を上げるアイテムが無くても釣れるそうなのだが、生憎と全然釣れない。
でもまあゲーム内とは言え青空を眺めながらぼーっと釣りをするのも気分が良い。
潮の匂いが現実と卒が無い。何より風は弱く、温度も快適、実に釣り日和と言える。
空の雲、普通のゲームなら動かないか、仮に動いたとしても同じ動きしかしない。しかし、眺めている限り何か物理エンジンで演算しているのか雲が飛散したり、大きくなったり、風に流されたりとさながら現実みたいだ。
「そこのお方、竿が引かれていますよ」
「おお? 本当だ」
ピクンピクンと微弱に竿の先端が振動している。
俺は直に立ち上がり竿を引っ張る。
それ程強い力を入れた訳では無いが簡単に持ち上がった。
――ニシン獲得。
アイテム欄にニシンが入った。
本当に餌なしのボロ竿で釣れるんだな。さすがゲーム。
「教えてくれてありが……もういない。急いでいたのかな?」
先程声を掛けてくれた人の感謝の言葉を伝えたかったか残念ながら既にいなかった。
移動途中に偶然見掛けて教えてくれたのかもしれない。
ともあれ釣れる事が分かったので、もう一度糸を垂らす。
「ニシンか、京都料理に確かニシンを使ったのがあった覚えがあるな」
道具屋に鍋とかフライパンがあった。
もしかしたら料理スキルで魚料理を作れたりするのかもしれない。
ニシンがいるという事はアジとか、イワシとか、サバもいるかもな。
ランクが上がればマグロとかタイも釣れるかも。
ちなみにマグロはどのマグロなんだろうか、ビンチョウマグロかクロマグロか、そもそもマグロは複数種類がいるのか。日本人的にマグロの種類は譲れないんだが。
そんな事を考えているとまた竿の先端がちょんちょんと揺れた。
――ニシン獲得。
またニシンか。
どうでも良いがニシンばっかり見ていたらニシンが食べたくなってきた。
今日の晩御飯はニシンにしよう。母さんにねだってみるか。
……今日は会場に宿泊か、現実時間での話だがな。
ゲーム内だと後どれ位でゲーム終了になるのかね。まあ少なくとも今日明日で終わる訳は無いが。
ニシン……数の子、身欠きニシン、にしんそば、塩漬け、燻製。
あ、そういえばシュールストレミングもニシンだったか。
シュールストレミング。
テレビでは見た事があるけれど、実物は食った事が無いな。
臭いが付くらしいから進んで食いたいとも思わんが。
料理スキルは取れたら取れば良いか。
しかし……何で俺、ゲームの世界でニシンの事ばっかり考えているんだ?
釣れるまで何度も考えたが、結局答えは出なかった。
†
「思ったよりも入れ食いだな」
あれから二時間。
何故かニシンの事を考えていたという結末は伏せておくとして、結果は上々だ。
ニシン7匹、イワシ3匹、アジ1匹。
ゲームと現実を混濁するつもりは無いが、これが現実だったら中々の戦果だろう。
どれも食べられる魚だしな。
「しかし……大きさに差があるな」
アジは一匹しか釣っていないので分からないがニシン7匹は大きさに差がある。
太いのと長いの。
これはニシンのレア度とか、品質値とか、そういう基準でもあるんだろうか。
同じ線で道具屋に銅が売っていたと思う。
あれも採掘して手に入れた奴は同じ理由で純度なんかがある可能性がある。
純度が高い鉱石を使った方が武器防具には良いんだろうな。多分。
そういえば解体用ナイフとか言うのがあったな。
この流れだと魚を解体できるかもしれない。
俺は腰に鞘と一緒に納められた解体用初心者ナイフを抜くとニシンに向かい合った。
「どうやるんだっけ?」
現実で魚なんて捌いた事が無いので適当だ。
確か鱗から落とすんだったか。
解体用初心者ナイフの峰の部分でニシンを削ってみる。
ゴリゴリという感触と共に鱗が何枚か剥がれ落ちる。
――小魚の鱗を4個獲得。
おお、解体用ナイフ便利じゃないか。気に入った。
この流れだと肉や骨にもなりそうだな。
よーし!
「あ!」
気合が入って力が入り過ぎた。思いっきり解体用初心者ナイフがニシンの胴の辺りにメリ込んだ。すると肉にも、骨にもならずニシンが消滅した。
どうやら一応ここはゲームの世界らしい。
何か今まで現実とあまりに差が無いもんで、内心動揺している。
ともかく獲得したアイテムを全部解体してみるか。
結果、小魚の鱗27個、小魚の骨8個、ニシンの肉4個、ニシンのお頭1個、アジの肉1個、イワシの肉1個、という戦績だ。
なんか釣った量と肉の量が噛み合ってない様な気がしないでもないが良しとしよう。
単純なアイテム量では四倍近い。
ちなみに解体も結構集中が必要だ。ちょっとミスると消滅する。慎重にやった所為でほんの11匹捌いただけで三十分近く経っている。
まあそこ等辺はスキルを覚えると補正でも掛かるに違いない。
スキルといえば振ってなかった。ステータス画面を表示する。
名前/絆†エクシード。
種族/魂人。
エネルギー/1300。
マナ/65。
セリン/0。
おや、エネルギーとマナが何もしていないのに増えている。
なんでだ? ああ、スキルにエネルギー生産力とかなんとかあったな。それか。
スキル/エネルギー生産力Ⅰ。
マナ生産力Ⅰ
エネルギー生産力Ⅰ→エネルギー生産力Ⅱ。
毎時間100エネルギーを生産する→毎時間200エネルギーを生産する。
ランクアップに必要なマナ10。
マナ生産力Ⅰ→マナ生産力Ⅱ。
毎時間5マナを生産する→毎時間10マナを生産する。
毎時間エネルギーを0消費する→毎時間エネルギーを150消費する。
ランクアップに必要なマナ25。
これを見て思った。
「うわ! 三時間分無駄にしてる!」
俺は直に二つのスキルをⅡにランクアップさせる。エネルギーが1150になり、マナが30になった。どうやらスキルのエネルギー消耗はランクアップした直後から発生する様だ。
しかし良く考えると一時間毎にエネルギーとマナが増えるのは良くないか?
でも、通常の種族でモンスター狩ってレベルを上げた方が早いのか? どっちなんだ。
まあいい。どうせ俺はスピリットなのだから、これでやっていくしかない。
そこでスキル欄を見ていて、薄暗い文字でスキルの中にフィッシングマスタリーⅠという物が増えている事に気付く。一応この三時間は無駄では無かった様だ。ちなみにあの程度の量、魚を捌いた程度では解体マスタリーは出現していない。
フィッシングマスタリーⅠを取得しようと説明文を覗く。
フィッシングマスタリーⅠ。
釣竿を使った全ての行動に10%の補正を発生させる。
毎時間エネルギー100を消費する。
取得に必要なマナは30。
取得条件、釣竿によるアイテムの獲得数が10個を超える。
ランクアップ条件、釣竿によるアイテムの獲得数が100個を超える。
ギリギリ取得できるが、取得するとエネルギー効率が毎時間マイナス50になる。
これはダメだ。
下手をすると何もしていないのに死亡って事も考えられる。
フィッシングマスタリーはエネルギー生産力のランクが上がってから取得する事にしよう。そんな風に考えながら、もう一度糸を垂らす。
「ん?」
竿を垂らした瞬間、とんでも無い力で引っ張られた。
「うわっうわわっ!」
いきなりの事で竿を強く握っていた為、俺の身体、今は女の子の身体が引っ張られる。
単純なSTR、スピリットの場合エネルギーが足りていないのか、一応に踏ん張ってみた、が――そのまま落ちた。
バシャーン、ブクブクブクという泡沫の音と共に身体が海水に浸かる。
一瞬、大きな魚が見えたが、直に視界から消えて行った。
くっ! フィッシングマスタリーを取得していたら釣れていたかもしれないのに。
逃がした魚は大きいというが……ともかく上に上がらないとな。
ゲームキャラクターだからか知らないが普段の俺より息が続く。俺は分身である絆†エクシードの小さな身体を見詰めながら橋の上に戻った。
「ふぅ……」
橋に上がると衣服が濡れていた。そういう判定もあるらしい。
というかアイテム画面を眺めるついでにステータス画面を確認したらエネルギーが30減っている。海に落とされるとかもダメージ判定に含まれるのか。
「それ以前に釣竿持って行かれた……」
呆気に取られるとは正にこの事だ。まさか初期資金とポーションを売って買った釣竿がこんな短期間で無くなるとは思わなかった。
「はははっ……良い度胸じゃないか……」
決めた。
あの魚、絶対釣って食ってやる。
商人アルトレーゼ
「ふふふ……」
あれから十分後。
持っていた鱗や骨、魚肉を全て売り払い、もう一度ボロ竿を買い直して戻ってきた。
ちなみに今度は餌も買ってきた。
代わりに全財産が65セリンとすっからかんだ。
ともあれあの魚、絶対に食ってやる。俺は根に持つタイプだ。
対戦ゲームとかでも熱くなって紡と度々やるのだが、生憎と勝率はあまり高くない。あいつ、対戦ゲーム得意なんだよな。一番得意なゲームがFPSという、戦争の申し子とでも扱っておくか。
しかし自分でも思うが海に向かって不敵に笑う女の子とかドン引きだよな。
まあ良い。あの魚……ぬしを釣ると決めた。
それがこの世界に俺がいる理由だと思うんだ。
なんかしょぼい気もするが、このまま黙っていられるか。
「さて、餌を付けてっと」
前回は何も付いてなかった釣り針に餌を付ける。
餌はミミズとかじゃなくて練り餌だ。
一番安い餌なのでしょうがない。金が溜まったらもっと良い奴を買う。今は我慢だ。
ちなみにルアーなんかも売っていたが湖とかもあるかもしれないな。
糸を海面に付けて竿の先に精神統一する。
雲なんかぼんやり眺めてられるか、俺はそんなに暇じゃない!
「来た!」
――アジ獲得。
餌を付けた影響か食い付きが良くなった気がする。
さすがに餌なしで引っかかるバカな魚はそういないという事なのかもしれん。
餌の在庫は30個。30匹釣ったら、また道具屋にいかなくてはならない。
しかし竿が引かれた瞬間、感覚的にいつもと違う物を感じた。
気付いていないシステム的な何かがあるかもしれない。気の所為かもしれないが意識して釣りしてみよう。もしも釣れる魚や品質に影響があるなら大発見だ。
ちなみに品質は絶対にある。
道具屋でアイテムを売った時、一つ一つ値段が違った。
小魚ばかりだったので売却値段はどれも高くなかったが、小さな物で1~3、大きな物で10~30セリンも差があった。
エネルギー生産力がⅢになったらフィッシングマスタリーの取得は決定だな。
「来た……」
今度は直に上げずに様子を見てみる。
やはり何か違う。
オーラの様な、例え様も無い浮き沈みが竿から両手に伝わってくる。
どの瞬間で引き上げるのが良いのか。
引きが強くなり、弱くなる。
若干、弱い時の時間よりも強くなった際の時間の方が短い。
「今だ!」
――イワシ獲得。
釣れたのはイワシだが、今まで釣った事のあるイワシの中で一番大きい。
なんとなく鮮度も良い様に感じるので釣る際に判定があるはず。
こういうシステム、結構燃えるんだよな。
「おお?」
ぬし程では無いが今までちょんちょんという弱い感触では無く、竿が曲がる程度の強い引きを示している。
……いや、まあ竿がボロ過ぎて性能の低さが原因かもしれないが。
逃がしたらもったいない。俺は先程と同じく引きの強い判定部分を意識して引っ張る。
――キラーフィッシュ獲得。
……なんだろう。この突然のモンスター臭。
今までニシンだのイワシだの釣れていたので実在に存在する魚だけかと思ったら違うっぽい。尚キラーフィッシュさん、アイテム欄に入れる際に鋭い牙の付いた口をガシガシと動かしていた。どう見てもモンスターです。
なんか場所が場所なら普通にモンスターとして登場しそうだよな、こいつ。
取り敢えず、少しコツを掴んで来たぞ。
この調子で魚を釣りまくってやる。
結果は30匹の内26匹釣った。
4匹は引きの強さを調整していたら逃げられた。
魚によって逃げられるまでの時間が決まっているんだと思う。
釣れた魚はニシン14匹、イワシ6匹、アジ3匹、キラーフィッシュ1匹、ボーンフィッシュ2匹と後半の奴はどうみてもモンスターだ。
ボーンフィッシュに至っては骨しか付いていない。
初めて釣った時、ちょっとビビった。
というか、こんな骨しか無い奴が海に住んでいると思うとちょっと不気味だ。
「さて、ニシン一匹を残して全部解体するか」
試しておきたい事がある。
解体して売った方がセリンを多く手に入れられるのか否か。
どちらにしても解体スキルを取得する為にやっておかないと行けないのは事実だが、金が沢山あって損する事はあるまい。
俺はその場で慎重に戦利品達に初心者解体用ナイフを向けた。
†
「腹減ったな……」
あれから釣り→解体→売却→餌購入→釣りの無限ループに突入して数時間。
結論だけ言えば解体した方が総合的に高値で売れる。