Wave of dimensions — страница 20 из 111

しかしハーベンブルグ伯爵はあくまで囮だ。本当に倒さなければいけないのはソウルイーターであって、ハーベンブルグ伯爵ではない。


そしてソウルイーターも相応の強さを持っている。

まずハーベンブルグ伯爵と違い獣の様な動きをするので人型モンスターと同様の攻撃方法ではこちらが被害を受けてしまう。

けれど同時にハーベンブルグ伯爵がいるので獣型のソウルイーター、人型のハーベンブルグ伯爵とタイプの違う二匹を相手にする必要がある。

更にソウルイーターは隙をちょっとでも見せると次元の穴に隠れる。

隠れた場合、アルトが真剣に目を凝らし場所を探知して追撃を掛けるが、その間もハーベンブルグ伯爵が攻撃してくる。

地味に嫌な連携だ。


「絆さん!」


硝子の注意を受けて背後にソウルイーターが次元の穴を通して移動しているのに気付いた。

……これは避けられない。

避けられないなら、無意味に攻撃を受けるのだけは防ぐ。


「おらっ!」


ケロベロススローターをソウルイーターに向けて振るう。

ソウルイーターの攻撃と俺の攻撃が交差する。

所謂、肉を切らせて骨を断つ。

あるいは捨て身の一撃。

受けるダメージはケルベロスと比べると控えめな670ダメージ。

一応ギリギリシールドエネルギーの範囲なのでマイナスにはなっていない。


「輪舞二ノ型・吹雪!」


俺の攻撃に合わせて硝子はスキルを使う。

桜の花びらが吹雪くような演出が発生し二つの扇子でソウルイーターを切り裂いた。


「お怪我は大丈夫ですか?」

「ああ、硝子の言い方だと……傷は浅い。まだ行ける!」


ソウルイーターへ武器を向けながら状況報告をしながら動く。


「紡さんと闇子さんにはあちらを任せていますが大丈夫でしょうか」

「紡は対人の方が得意だからな。闇影も幽霊よりは骸骨の方が怖くないだろう」

「そうですね。絆さん」

「なんだ?」

「助けに来てくれてありがとうございます」


今更何を言うのかと思えば感謝の言葉か。

さっきも聞いたが硝子はこういう所がしっかりしている。

感謝の言葉は必ず告げるし、悪い事と思えば謝る。

それを言い出したら俺だって沢山感謝の言葉を言わなければならない。


……男って奴はそういうのが恥ずかしかったりするんだけどな。


「嬉しかったんです」

「俺もだ。あいつを倒したら、聞いてほしい事があるんだが良いか?」

「はい。必ず!」


若干死亡フラグを立てた様な気がするが気の所為だ。うん。

そしてソウルイーターへと飛ぶ硝子の後に続いて不意を突く。

本当、これが終わったら戦い方の基本とかを教えてもらおう。


「しぇりるさん。行けますか?」

「……ん。ボマーランサー」


もはや固定砲台と化したしぇりるがアルトを守りながら頷く。

アルト、悪いがお前少し邪魔。

いや、そもそもアルトの本領は戦闘ではなく、商売だとは思うが。

銛スキルを受けたソウルイーターは少しよろめく。

その隙に硝子と共に攻撃を繰り返す。

さすがにリミテッドディメンションウェーブなだけにケルベロス程強くはない。

そしてハーベンブルグ伯爵を受け持っている二人に視線を向ける。


「ホーリーバースト!」

「ええええぇぇぇぇ!?」


闇影が光魔法使っている!

キャラがブレてるぞ。


お前はドレインバカだろうが!


ま、まあ闇影はそこ等辺を考えられない位骸骨船長が怖いのかもしれないが。

にしても、光魔法使えるとか初耳だぞ。

……俺は現実から目を逸らす、もとい現実に戻ってくる為にソウルイーターに視線を戻す。紡? 闇影の一件で完全に俺の心から吹っ飛んでいった。

多分大丈夫だから問題ないさ。

視線をソウルイーターに戻すと硝子が俺を難しい表情で見ていた。


「……絆さん。先程使っていた剣を貸して頂けませんか?」

「エネルギーブレイドを? 何をするつもりだ」

「こちらから与えるダメージがあまり効いていません。おそらくは属性的問題があるのかと私は考えております」


確かに、随分と攻撃を繰り返しているがダメージが入っている様には見えない。名称がソウルイーターだからな、霊属性みたいな無属性攻撃に抵抗があるのかもしれない。

その点、最初の一撃は妙に効いた気がする。

影から引き摺りだした挙句、苦しそうにしていたからな。


「わかった。でも気を付けろよ。外したら終わりだ」

「承知しました。必ず当てて見せます」


柄だけの剣、エネルギーブレイドを投げ渡すと硝子はあっさりと手に取った。

片方の扇子を腰帯に差すとさながら短剣と剣を持った剣士の様に扇子とエネルギーブレイドを構えてソウルイーターを睨みつける。

そして脳を冷たくするかの如く呟く。


「五万充填」

「おいおい、入れ過ぎじゃないか?」

「大丈夫です。必ず当てて見せます……くっ!」


剣を向けた直後、ソウルイーターはまるでこちらの攻撃を読み取った様に回避行動にシフトした。

おそらく威力の高い攻撃に反応するAIでも積まれているのだろう。

現代のプログラムなら可能だろうが……嫌な行動パターンだ。


「硝子、こちらで誘き出して見せる。安易に振るな。最高の状況で最高の一撃を与えるぞ」

「……はい! 信じます」


こちらの動きを読み取ってしぇりるはソウルイーターの影をボマーランサーで当てようとしているが、回避行動にシフトしたソウルイーターは泳ぐ様に次元の穴を移動して簡単には当たらない。

その間、俺達の後ろでは紡と闇影が死闘を繰り広げている。

早くしなければならないが……。


「ああ、クソッ! ちょろちょろと魚みたいに逃げ回りやがって……?」


次元の穴。

黒い影をまるで泳ぐかの様に移動するソウルイーターを例えての言葉だったが、凄く的を射ている。よくよく見てみれば獣っぽいが大きな魚類にも見えるソウルイーター。


……まさか。


仮に外れていてもヘイト&ルアーⅡは敵のヘイトを稼ぐ事ができる。

俺を狙って攻撃してきた所を硝子のプレイヤースキルなら当てられるはず。

燃えるじゃないか。

俺はステータス欄、スキル欄などを呼び出して準備を始める。


名前/絆†エクシード。

種族/魂人。

エネルギー/57630。

マナ/12070。

セリン/68780。


スキル/エネルギー生産力ⅩⅡ。

マナ生産力Ⅸ。

フィッシングマスタリーⅧ。

ヘイト&ルアーⅡ。

解体マスタリーⅤ。

クレーバーⅤ。

スライスイングⅡ。

高速解体Ⅳ。

船上戦闘Ⅴ。

元素変換Ⅰ。


未取得スキル/エネルギー生産ⅩⅢ、マナ生産力Ⅹ、フィッシングマスタリーⅨ、舵マスタリーⅠ、夜目Ⅰ、一本釣りⅠ、都市歩行術Ⅰ。


一本釣りⅠ。

釣竿を使った補助スキル。

釣りによって魚やモンスターを釣り上げる為のスキル。

一回の使用に300のエネルギーを消費する。

取得に必要なマナ1000。

取得条件、釣竿によって釣り上げたモンスターが1000匹を超える。

ランクアップ条件、釣竿によって釣り上げたモンスターが5000匹を超える。


なんとも都合良く欲しいスキルが未取得スキルに入っている。

スキル説明から、おそらく巨大ニシンや巨大イカの様な大物を釣り上げる為のスキルだ。


条件はモンスター……キラーフィッシュみたいな奴か。

俺も随分と釣りを続けているからな。何匹魚を釣ったかなんて覚えていない。

いつのまにか追加されたのだろう。

これがあれば巨大イカの時みたいにしぇりるに手伝ってもらう必要がなくなるかもしれない。

だが、今はソウルイーター、お前を釣る為に使わせてもらおう。


「ヘイト&ルアー!」


青色の発光と共に光のルアーをソウルイーターの影へ投げ込む。

戦闘では硝子にも、紡にも、しぇりるにも遅れを取るがこれだけは自信がある。

何よりイカ釣りで地道に上げたフィッシングマスタリーⅧの力を受けてみろ。

ランク8だぜ、8。

しかも俺の媒介石はフィッシングマスタリーを二段階上昇させる。

事実上ランクⅩだ。

ここから出されるコントロールは釣りマンガの主人公にすら匹敵する程だ。


「よしっ! 引っかかった!」


フィッシングマスタリーは釣竿を使った全ての行動に補正を掛けるスキルだ。

ランクⅧという事は80%。現実的ではない事は十分承知だが、やろうと思えば投げた途中でルアーの方向すら曲げられる。

まあそれが釣りで何の役に立つのかは激しく謎だが……。

ともかくソウルイーターに掛かったヘイトを繋げたまま叫ぶ。


「一本釣り!」


リールを巻き、青い光が釣竿全体を包み込んで固定モーションで持ち上げる。

次元の穴からソウルイーターがマグロの一本釣りの如く姿を現し、甲板に打ち上げられる。

甲板でスタン状態にも似たピチピチと跳ねるソウルイーター。

やはり幽霊に属する魚類系モンスターだったのか。

そんな事よりも今は!


「硝子。今だ!」

「行きます!」


無防備になっているソウルイーターに硝子は残像を発しながら高速で接近し、片方の扇子で上顎骨を持ち上げ、もう片方の強い出力を発したエネルギーブレイドを口内へと刺し込んだ。

まるで硝子がソウルイーターに喰われている様にも見える姿のまま奥へ奥へ突き進んで行きエネルギーブレイドの出力を発する音だけが聞こえてくる。



そして何秒、何分か経った頃……まずハーベンブルグ伯爵がカランと音を発てて崩れた。

続いてソウルイーターは砂が崩れるかの様に風化して風に飛ばされていく。


「勝った……のか?」


少々裏技臭のする倒し方だった気もするがビーム部分がなくなったいつも通り柄だけのエネルギーブレイドを大事そうに握っている硝子が風化の中から現れる。

なんというのか、毎回かっこよすぎだ。

ライトノベルとかの戦うヒロインって感じ。

ん? そうなると俺は冴えない主人公ポジションか?

個人的には一緒に戦う同等の仲間……の方が良いんだが、正直ポジション的にヘタレ主人公だよなぁ……これからはもう少し戦いも学ぼう。うん。


それにしてもソウルイーターは解体できないのか。

実は期待していた。

ほら、名称的に鎌みたいな武器になりそうじゃないか。紡がソウルイーターから武器を作ったら戦力的に凄そうと思ったんだが、解体は無いらしい。


――リミテットディメンションウェーブ討伐!


ほんの数週間前に眺めたウィンドウが表示される。

前回とは違い、俺を含めたパーティーメンバー六人だけだが。


――総合評価一位、絆†エクシード。

二位、函庭硝子。

三位、紡†エクシード

四位、しぇりる。

五位、闇影。

六位、アルトレーゼ。


驚いた。まさか俺が総合一位だとは。

他に表示される評価基準を眺めると理由はなんとなく理解できる。


ダンジョン攻略率。

蓄積ダメージ。

被ダメージ。

討伐数。

ボスダメージ。

マップ解析率。

施設使用率。


確かにこの基準値で言えば俺は一位かもな。


ダンジョン攻略はイベント回収率の事か?

蓄積ダメージは、まあ一人になった時に雑魚モンスターを程々。

被ダメージは前回よりは受けていない。

討伐数、これは微妙。

ボスダメージ、こっちはケルベロススローターとエネルギーブレイドで結構稼いだ。

マップ解析率、全部ではないがほとんど周った。

施設使用率、全部使った。


大抵のオンラインゲームではボスダメージの基準が一番高いもんだが、設定値を解析できる程プレイ経験がある訳でもないし、こうなった理由があるのだろう。

おや、獲得アイテムの欄がある。

通常のディメンションウェーブと違ってルーレットは無いんだな。


――カルミラ島獲得。


「なんだ? 島?」


アイテムと呼ぶには仰々しい物の獲得メッセージだ。

確認にアイテム欄を眺めるも島なる道具が入っていない。

あれか、ハーベンブルグ伯爵の日記で書かれていた島の事か。

確か国交がなんとか……。


そんな思考を遮る様に足元が揺れ始めた。

RPGお約束、ボスを倒したらダンジョンが崩壊するって奴か?


「皆、船まで逃げる……ぞ?」


振り返ると幽霊船が目に見える速度で灰に変わっていくのが見える。

つまり逃げる余裕すらなく、足元が灰に変わった。


「「「きゃあああああぁぁぁぁ!」」」

「ござ、ぎゃあああああぁぁぁぁ!」


当然ながら足元がなくなった俺達は海へと落下を始めた。

あれ? なんか声の数がおかしくないか?


「絆さん!」


落下中に硝子が手を伸ばしてきた。


「硝子!」


その手を咄嗟に掴む。

赤から青に戻っていく空の月。

無常にも広がっていく海水の冷たい水温。

強く握られた手の感触といつまでも無くならない泡沫の音。

深く、深く。

まるで暗闇の中へと誘う海水がしだいに俺の意識を奪っていった。

開拓者の七つ道具

「ん……?」


目蓋を貫く陽光を受けて俺の睡魔は薄れ、下半身が冷たい事に気付いた。

冷たいのは単純に海水で濡れているからだ。

身体の半分程が浜辺の海水に浸っている。

低体温症とかにならないのはゲームだからだよな。

取り敢えず立ち上がり状況を確かめる。


名前/絆†エクシード。

種族/魂人。

エネルギー/61630。

マナ/14070。

セリン/68780。


スキル/エネルギー生産力ⅩⅡ。

マナ生産力Ⅸ。

フィッシングマスタリーⅧ。

ヘイト&ルアーⅡ。

一本釣りⅠ。

解体マスタリーⅤ。

クレーバーⅤ。

スライスイングⅡ。

高速解体Ⅳ。

船上戦闘Ⅴ。

元素変換Ⅰ。


エネルギーが増えている所を見るに溺れた事に対する減少はないみたいだ。

それにしてもここはどこだろうか。

見た所浜辺……見上げると南洋の植物っぽい森が広がっている。

見知らぬ浜辺と森という条件で思う所はあるが、一度カーソルメーニューからチャットウィンドウを表示させる。

その中のパーティーウインドウから硝子を……。


「あれ?」


パーティー欄が空白になっている。

つまりパーティーを結成していない、一人の状態という事だ。

パーティー自体は特定状態以外を除けばいつだって抜けられる。

しかし俺は抜けた覚えがないし、一度にあれだけのメンバーが抜けるとも思えない。

何より硝子と紡がいるんだ。

硝子は何も言わずに抜ける奴じゃないし、紡は血の繋がった兄弟だからな。

他の奴にしたって勝手に抜けるとは思えない。

ともかくチャットを送ってみよう。

今度はフレンドリストを表示させて硝子にチャットを送った。


――現在あなたの電源が入っていないか電波が使われていません。


俺の電源って何!? というか携帯電話かよ。

……システムアナウンスに文句を言っていてもしょうがない。

訳もわからないまま、俺はフレンド登録されている全員に連絡を入れる。

無論、硝子達だけでなくロミナや他知人もだ。

その全てがこの訳のわからないシステムアナウンスが流れる。

状況から連絡できない何かが起こっている、と考えるのが妥当か。


幽霊船から落ちたのは俺だけじゃない。

もしかしたら俺と同じく浜辺に流れ着いた奴がいるかもしれないな。

俺は周囲を見回すも見える範囲には誰もいない。

カーソルメニューにある地図を表示させてみる。

現在地は比較的大きな島の南側にある浜辺だ。


マップ名称は……カルミラ島。


この名前には聞き覚えがあるぞ。

確かソウルイーターを倒した報酬で手に入った島だ。

確信はできないがハーベンブルグ伯爵が守ろうとしていた島である可能性も高い。

単純にリミテッドディメンションウェーブの報酬とも取れるが。

ともかく皆を探そう。

俺は当ても無く浜辺を歩き始めた。



結果だけを述べるなら浜辺に誰かが流れ着いた痕跡は見つからなかった。

定期的にチャットを送っているが相変わらず壊れたみたいに変なアナウンスが流れるのみで状況は好転しない。

本格的に認めなければ行けない状況になってきたかもしれないな。


おそらく俺は……漂流した。


島内部を探索していないのでまだ結論は避けるがカルミラ島は無人島だ。

俺だけなのは何かしらのイベントによる可能性が考えられる。

例えば幽霊船であの本や人魂イベントをこなしたのは俺だけだ。

仮にそういった条件に当て嵌まったのが理由としてこの無人島で何を求められるのか。

この手のゲームに無駄なフラグや条件はあまり無い。

そう考えると俺一人でカルミラ島に漂流した理由があるはずだ。


……なんかこういうゲームあったよな。

小学生の主人公が船から落ちたら無人島でそこでサバイバルをしながら生還を模索する。

漂流モノのお約束だが、まさか俺が実践する事になろうとは……。

幸い、その手の主人公とは違って俺は装備に恵まれている。

例えばアイテムだ。

食料に関してはイカが無駄にあるのでしばらくは持つだろう。

何より料理スキルに必要な機材を所持している。

海があるので釣りで稼ぐというのも良いかもしれない。

重要なのはどれだけの期間をここで過ごす事になるか、だ。


お!

アイテム欄を眺めていたら帰路ノ写本があった。ついつい状況に流されてしまったがこれはゲーム、帰還アイテムを使えば良いんじゃないか。

俺は帰路ノ写本を使った。


…………。


波の音。カモメの鳴き声。白い砂浜。

跳躍エフィクトの後、最初に流れ着いたカルミラ島の浜辺だった。

きょ、強制セーブポイント……。


「だ、出せええぇぇー!」


海に向かって叫んだ。

カモメの声が返ってきただけだった……。


……しばらくここで生活する事になりそうだな。

そうなると硝子達と合流した後を考えないといけない。

あいつ等の性格からいって多少エネルギーに問題があっても合流さえすればどうにかなると思う。だけどエネルギーに差が付き過ぎるのも個人的に厳しい物がある。

最悪アイテム欄に入っている木の船で脱出も考える必要がありそうだな。

ともかく今は島を調べる所から始めよう。

合流した時に多少役立てれば御の字だしな。


そう決めて島内部へ歩き出す。

右手にはケルベロススローター。

エネルギーブレイドは持っていなかった。硝子に渡したままだったからな。

まあエネルギーブレイドなんてボス戦位でしか使わないだろうが。

カルミラ島はパッと見た感じ、南国という形相を示している。

高い経費使って作られているのか虫の声とか、南国風の鳥とかが飛んでいて、気を許すとゲームである事を忘れそうだから逆に凄い。


それにしても島か……魚、何が釣れるんだろう。

って、こんな状況で何を考えているんだ。俺って奴は。

今は現状を把握する事。

幽霊船でもそうだが、一人になるのは久々だな。

特に第一都市と同じ太陽光がある場所だと最初の頃を思い出す。

あの頃はあの頃で楽しかったな。

いや、パーティーで冒険するのも凄く楽しいけどさ。

そんな考え事をしていると寂れた農村の様な場所が見えてきた。


……農村というか廃墟か?

崩れかけた納屋。生い茂った草花。人気の無い雰囲気。

何十年も前に人が住んでいた様な痕跡、みたいな場所だ。


「なんだ……あれ……?」


村の中心に不自然な位浮いた物体が見えた。