Wave of dimensions — страница 22 из 111

どんな構造なんだ? アイテム欄と同じ原理なのだろうか。

気になってノコギリを持ったサンタ帽子ペックルに付いていくとハーベンブルグ伯爵の屋敷跡地に着いた。

そして帽子から木材を取り出し、ノコギリを当て始める。

あの木材、どこから取り出したんだ?

嫌な予感がしてアイテム欄を眺めるとちゃっかり減っている。

あの帽子、俺のアイテム欄と繋がってないか?

いや、ノコギリなんて持ってなかったけどさ。

……まあ良い。気にしたら負けだ。


他の奴は何やっているんだ?

ペックルカウンターを覗いて見る。

カルミラ島を簡易表現した地図が表示され、三匹のペックルがデフォルメされたマークで動いている。もはや別のゲームだな。

俺が耕した畑の辺りにいるペックルと森の中にいるペックル。

こっちは予想通りの行動だ。確かめる必要も無いだろう。

ともあれ便利なサポートキャラが現れ、作業は楽になった。


「まあ開拓とやらをしておくか……」


その日は夕方まで今夜の寝所を残し、ハンマーで廃墟と化した村を破壊して回った。


……家を破壊するのがちょっと気持ちよかった。


ペックルライフ

陽が落ちた。

夜目を取得すれば夜でも続けられるが精神的に疲れたので今日の作業を終了する。

そして取り出したるは開拓者の七つ道具を変化させた釣竿。

ペックルの餌というのもそうだが、釣りはゆっくりできるし、俺のソウルライフ。


俺は一週間の間硝子達を待ちつつ釣りをしていた岩礁へやってきた。

フィッシングマスタリーの影響で程々に釣れるが、まだ竿のレベルが低い。

まあ一週間続けて使っていたのでレベル3にはなったが。

釣れる魚はレベルが増える毎に増えている。

最初はニシンなどの安めの魚だった。

早く良い物を釣りたいが、この手のレベルアップ系装備は日々の鍛錬が物を言う。これからはどんなに忙しい日でも、一日一時間は釣りに割くとしよう。


「お、早速引いている」


個人的にはリールにもっと慣れたいが、七つ道具には付いていないのだからしょうがない。そんな風に考えながら、いつもの調子で竿を引いた。


『ペーン!』


「…………」


なんかペックルが釣れた。

例え様もない怒りが込み上げて来て自然に言葉を紡ぐ。


「サボるな! て……お前、誰だ?」

「ペックルだペン」


知っとるわ。

釣れたペックルは三匹のペックルと違いバンダナを頭に巻いている。無論、三匹が別の帽子を付けている可能性はあるが、個体表示だと考えると別のペックルだろう。

ペックルカウンターを見ると三匹は別々の場所で働いており、新しく四匹目の項目が追加されている。もちろん待機状態だ。

やる気は30%。

アイテム欄からイカを投げ渡すとパクッと二匹食べた。

家が早く完成してほしいので建設の手伝いをさせよう。

俺は新しく加わったバンダナのペックルをサンタ帽子と同じ建設と命令した。するとイカを食べていたペックルはバンダナからノコギリを取り出すとハーベンブルグ伯爵の屋敷跡地へと去っていった。


「なんだったんだ……?」


増えた?

あれか、ペックルは何か条件を満たすと増えるのか?

今回の場合、釣りで新しいペックルが加わった。

確かにデフォルメされているとはいえ、ペンギンだから海に居てもおかしくはない。

ま、まあ良い。

釣りは俺のソウルライフ。

これからはどんな事があっても一日一時間は続けるんだ。

そう自分を納得させながら釣りを続けた。



翌朝、東の空が薄っすらと明るくなってきた頃、俺はまだ釣りをしていた。

正直言えば眠いが、もちろん理由はある。

あれから定期的にペックルが釣れた。

今夜の収穫はバンダナペックルを含めて5匹だった。

つまり現在計8匹のペックルが俺の配下として働いている。

8匹の内6匹は建設に従事させている。寝る場所ができるのは良い事だからな。


重要なのはここ二日で稼いだ木材が心許ない。

ペックル収集はこの辺りでやめて一度寝よう。そして起きたらオノで木を伐採して材木を稼ぐ。そうすれば新しい家が完成する。いつまでも壊れた家屋で生活するのも嫌だし。

ともあれ俺は一度廃墟に戻ると床に就いた。


「ご主人、起きるペン」


どれ位眠っただろうか。

少なくとも身体がだるい所を見るに6時間は寝ていない。カーソルメニューの時計を確認すると08・26と表示されており、三時間程眠っていた計算だ。


「えっとサンタ帽子か、なんだ?」


ハーベンブルグ伯爵の置いていった箱から出てきたペックルだけあって、リーダーでもしているのだろう。サンタ帽子ペックルは困った表情で必要な物を催促してきた。


「材木が足りないペン。このままでは作業が出来ないペン」

「だろうな」


元々そんなに材木を持っていた訳でもないし、足りない物はしょうがない。俺は建設を一時停止させて6匹のペックルに伐採を指示し、寝直した。


それから四時間程眠った俺は太陽が丁度真上、お昼頃に起き出して朝食を作った。

今回の朝食はニシンとイカの丸焼き。

ニシンもイカも調理器具で鱗やら内臓やらを取り出し、焼いただけ。

素材の味が生きていますね。

料理スキルがまだそこまで高くないので普通だったけどな。


そうしてペックルに働かせておきながら呑気に起き出し、森で伐採作業をしているペックルの所へ向かう。

途中ペックルカウンターを確認するとそれぞれやる気が70%近くに低下している。

一日フル稼働で50%位か。

やがて森で伐採作業をしている6匹のペックルが見えてきた。

ペックルは巨木を切る用の大きなノコギリを左右2匹ずつで伐ろうとしている。

伐採量は思ったより早くないのか、6匹そろって俺の十分の一位。


「う~ん、サポートキャラだとこんなもんか」


俺の呟きにサンタ帽子が振り返って答えた。


「ペックルはまだ熟練度が足りないんだペン」


タイミングが良過ぎるだけに、不満に対する言い訳か何かだろうか。

そもそも熟練度なんかあるのか。というかこの調子だと畑の方もあんまり頼りにならないな。伐採は次に回すとして一度バケツに水を入れて畑へ向かう。

畑にて1匹で作業をしているペックルは伐採と比べても非常に遅い。

朝からやっていると安易に想像できる麦わらペックルはまだ水やりを終えていない様だ。

ともあれ、水をやり終えていない畑に水を撒く。

畑は植えてから二日が経っているので芽が太くなり始めていた。

現実と違って成長速度が速い。この調子なら明日には収穫だな。


そしてカウボーイハットのペックルがしっかり狩猟ができているのか確認する為、アイテム欄を調べると『動物の肉』というアイテムが2つ増えていた。

何の肉かは知らないが一応狩猟はできているらしい。

昨日から続けてしているにしてはお世辞にも多いとは言えないが、熟練度が低いのだからしょうがない。

この二匹は後々もこの業務をさせるという事で固定させておこう。


毎日の業務を終えて森に戻ってきた。

ペックル達はまだ先程の木の伐採を続けている。

一応全ペックルにニシンを食べさせて、やる気を回復させはしたが速度は遅い。

あんまり期待し過ぎるのもアレなので自分で全てまかなうつもりで作業を続けた。



こんな生活が三日程続いてやっと屋敷跡地に家……拠点という名の施設が完成した。

拠点は小さなログハウスで、ペックルカウンターと同じ効果のある道具が備え付けられている事以外普通の家だ。

拠点に付けられている島の地図を確認すると拠点レベル1と書かれている。

どうやら増設などもあるらしいが、今は寝る場所が出来ただけでも十分だ。


尚、この間夜釣りを毎日四時間繰り返しペックルの数が15匹になっていた。

もちろん俺と比べれば動きは遅いのだが、人数が増えたのと熟練度とやらが上がってきた影響か少しは役に立つ様になってきた。

一応個体によって得意分野があるらしく、熟練度の上昇に影響が出る。

大まかに帽子の外見で得意系統が予測できる、という所だ。他、偶に本人(?)が『○○の仕事をしたいんだペン』とか言い出した場合、そっちを重点的にやらせている。


そしてサンタ帽子のペックルはやはりリーダーだった様でなんでも卒なくこなす。

現在熟練度の高さは全ペックル中一位だ。

きっと最終的な能力値はスペシャリストには敵わないのだろう、と予測している。

考えている傍からサンタ帽子のペックルが俺に用事があるらしく近付いて来た。


「次は何の施設を建設するペン? 倉庫ペンね。わかったペン」

「いや……なにも、言って……」


なんか自己完結したペックルがくるりとUターンして去って行った。

何が『わかったペン』だ。最初から決まっているなら俺に一々聞きに来るな。

おそらくゲームシステム上作る施設が決まっているとか、そういう所だろう。


ともあれペックルは倉庫、牧場、水路と施設を増やしていった。

畑に割くペックルも5匹に増え、狩猟に出かけるペックルも5匹に増やし、牧場が完成後は狩猟で捕獲された生物が牧場に放たれ、畜産に5匹のペックルを使い、自分達の餌を得る為にペックル自身で漁業を営むに至った。

やがて倉庫とは別の、食料庫なる施設が生まれ、ここにペックルの魚を事前に登録して置くとオートでやる気を回復させ始めた。


そして伐採、開拓に割かれたペックル達が敷地を広げて行く。

この頃になるとペックルの数は50匹を超えていた。

能力はまちまちだが、熟練度も上がってきて仕事も速くなりつつある。

そうした安定した供給が完成した頃、サンタ帽子のペックルが言った。


「森に巨大な怪物が居て開拓が進まないペン」


ディメンションウェーブ第二波-終結-

サンタ帽子ペックルの言葉を聴いて、やって来たのは開拓途中の森。

既に他のペックルは避難して森は静かだ。

そうして何がいるのかを偵察がてら確認すると凶悪な顔をした大きなペンギン。

色は紫。フリッパーの部分が翼になっており、木の上に止まっている。

あの大きさで良く飛べるなとか、木は折れないのか、とは言わない。

この世界はゲームだからな、そういう超常現象も起こる。


「とりあえずあいつを倒すか」


久々にケルベロススローターを右手に持って構える。

見た所イベントモンスターっぽいし、そんなに強くはないだろう。

クククッ……我が楽園を荒らす者には天罰を与えてやる。

そう息巻いた訳だが。


――

――――

――――――



「あんなのに勝てっこねぇ!」


五分後、俺はモンスターカルマーペングーから命からがら逃げ出していた。

なんだ、あいつ。たった一発で2000もダメージ受けた。

単純なダメージだけならケルベロスにも匹敵しているじゃないか。

そもそも良く考えたら、この島はもう少し後になって来る場所だったな。

ドリルの存在からして、その可能性は十分あったが今まではモンスターがこの島にいなかったので忘れていた。

ぶっちゃけ俺一人であんな奴は倒せない。残念だが俺には無理だ。


「硝子が居ればな……」


俺の中で最強は硝子だ。

今まで隣で何度も強敵と戦ってきて、ほとんど無傷という実績がある。

しかし、いない者を頼ってもしょうがない。

今はまだ無理でもエネルギーを貯めて後々ゴリ押しで倒せば良い。

取り敢えず、しばらくは伐採と建設を繰り返して施設を充実させよう。


断じて負け惜しみではない。

ともかく、森からは出てこない様だしカルマーペングーは放置だ。

覚えていろよ。いつか絶対腹を割いて素材にして食ってやる。

仕方が無いので今まで開拓に回していたペックルを別作業に回す。

とは言っても最近は命令を出しているだけで、特に何かをする訳ではない。


しかし餌の消費に問題がある。

50匹以上いるからな。一応はペックル自身にも漁業を任せているが、さすがに50匹分の食料を確保するには至っていない。

そういう訳で俺はここ最近釣り生活を営んでいる。

……偶にペックルが釣れるからな。


「釣り……それは俺のソウルライフ……」


もはや、言い訳のセリフになっている気もするが、良いんだ。

代わりに肉や木の実、野菜、卵、牛や羊などのミルクなどは俺が没収している。

こいつ等、魚貝類しか食べないし。

尚、ペックルの消費量が多過ぎてイカは随分前に底を尽いた。

この生活を潤滑に回すにはどうしても俺が釣りをしなくてはならない。


ははっ! 最高だ……。


こんな生活もあって釣竿のレベルは7になっていた。

俺がカルミラ島に来てから釣り場にしているのは岩礁だ。

竿を海に垂らして、引きが来るまでのんびりと待つ。

ちなみに釣れる魚は……。


メバル、カサゴ、アイナメ、クエ。


これ等の魚が釣れる。

どれも現実ではあまり食べた事が無いのだが、白身の魚が多い。

食べたら味が良かったので、毎朝ペックル用以外にも残す程だ。


クエに至っては見た目の割に凄く美味しかった。

現実では知らないが、この味が本物なら帰ったら食べてみても良い。

ぶっちゃけクエだけはペックルにあげたくない位味が良い。

正直、個人的にマグロより美味いと思う。

あんまり名前を聞いた事が無い魚だけど、今度調べてみよう。


「あ~……クエ、釣れないかな~……」


クエの事を考えていたら食べたくなってきた。

刺身にするか、鍋にするか。

この二つが一番美味しかったので基本二択にしている。

ペックル畑やペックル牧場から取れた食材を合わせると尚良い。


問題をあげるとすればクエは難易度が高く、フィッシングマスタリーを重点的に上げている俺ですら逃がす事がある。

例えが難しいがぬしでも釣るみたいに難易度が高い。

ぬしとは違って引っ張る力は重くないが、タイミングが厳しい。

だから、最初の内は十匹に一匹しか釣れない程だった。


「ん……?」


海は風が強い日も多いのだが、突然強風がやってきた。

そこまで酷い物ではないが、ちょっと懐かしい。

ディメンションウェーブを初めて体験した時なんか酷かったからな。

そういえば硝子達は今頃何をしているんだろうか。

あれから随分経つが一向に来る気配がない。

カルミラ島での生活は一日一日忙しいので忘れていたが、気になるな。


「…………あれ?」


ふと視線を海から空に変えると東の空が赤い。以前、皆と一緒に戦ったディメンションウェーブと同じくワインレッドに染まっている。

そういえば生活に追われていて忘れていたが、そろそろゲームが始まって二ヶ月目だ。

あれはもしや、ディメンションウェーブ第二波じゃないか?


「ま、まさか……」


なんだかんだでディメンションウェーブ第一波は楽しかった。

多少エネルギーを失うという問題もあったがエネルギーブレイドを手に入れるなど報酬も大きかったし、第二波も参加を決めていたのだが……。


「参加できない……?」


そんなバカな。

いや、ゲーム会社的には現在俺がここにいる事の方が問題なのかもしれない。

カルマーペングーの強さから適正じゃないのは間違いない。

自業自得とはいえ、不参加とは……。


「出せええええぇぇぇぇ! 俺は参加するんだー!」


俺は海に向かって吠えた。

イベント中なら出られるかも、と淡い期待をしたが木の船でも相変わらずだった。




そうして諦めて砂浜で波の方を眺めながら体育座りをしているとサンタ帽子のペックルがやって来て言った。


「大分開拓も進んできているペン」

「そうか」

「誰か会いたい人はいるペン?」

「そうだな……硝子に会いたいな」

「その人の名前は『硝子』で良いんだペン?」

「は?」


なんかペックルが不自然なセリフを吐いている。

何故サポートキャラクターが硝子の名前を聞きたがる。

……教えてみるか。


「函庭硝子って名前だ」

「詳しい文字を教えてほしいペン」


そういうとペックルはシステムウィンドウを表示させて文字の入力画面を出した。

俺は一時の期待を込めて『函庭硝子』と入力する。


「わかったペン。会える事を祈っているペン」


サンタ帽子のペックルはそう言うと踵を返して仕事に戻って行った。

なんだったんだ?

良く分からないが、どちらにしても俺はディメンシュンウェーブ第二波に参加できそうにない。


結局、その日はペックル用の餌と俺用のクエを釣っていると陽が沈んで行った。


磯女が来る日

「浜辺に何か流れ着いているペン」


翌朝の早朝、ペックルが俺を起こして言った。

いや、まあフラグがあれだけあったので気付いてはいたが、まだ眠い。

最近はほとんどの業務をペックルに任せて釣り生活していたので少々自堕落な生活をしていた。特に昨日はディメンションウェーブに参加できないという事で釣りしまくったしな。

そうこう思考しながら俺が最初に流れ着いた浜辺にやってきた。

そこには垂直にうつ伏せで倒れている人の姿があった。


「やべぇ、なんだこの倒れ方」


ご丁寧に手が起立状態で完全に垂直だ。エンピツみたい。

なんか面白いからスクリーンショットを撮っておこう。

俺は両手でカメラのポーズを取るとその人物を撮影して何枚か撮った。

もっと近付けないかな?

近付いてアップの写真を撮る。

というか、このポーズじゃ砂とか海水で窒息するんじゃないか?

ゲームだから大丈夫なのかもしれないけど。

よし、もう一枚。

しかし近付いた瞬間、足をつかまれた。


「ひぃっ! 磯女!?」

「誰が磯女ですか! って絆……さん?」


俺の足をつかんで磯女と化した硝子が戸惑いの言葉を漏らした。

つまり、昨日のペックルは仲間を呼び寄せる為のフラグか。


「絆さん! 今まで一体何をしていたんですか! 心配したんですからね……」


そう呟きながら俺の小さな身体を抱きしめる硝子。

今まで硝子達が何をしていたのか俺に解らない様に、硝子達もまた、俺が何をしていたのか知り得なかった、という事なのだろう。

それにしても漂流してから随分と硝子の声を聞いていなかったが、妙に落ち着くな。

なんでだろう。いや、まあ硝子は頼りになるし、信頼できる奴なのは事実だが。


「何をしていた……と言われると微妙に答えに臆するが、率直に開拓をしていた」

「開拓、ですか?」


「ああ、島から出られないんだ」


俺はこれまでの経緯を長々と語る。

漂流して一週間、皆を待ち続けた事、島から出られない事、開拓者の七つ道具を使って開拓を始めた事、ペックルというサポートキャラクターと開拓をしていた事、開拓が進んで比較的に生活が安定してきた事、昨日ペックルが硝子の名前を聞いてきた事。

これ等の話を続け様に話す。二週間近くを事実上一人で生活していた為、口数が増えたが、硝子は真剣に聞いてくれた。


「そうですか、そんな事が……絆さん」

「ん?」

「がんばりましたね」

「……ありがとう」


がんばったか、がんばってないかと言われれば、自分でもがんばったと思っている。

ペックルがいたけど、やはりNPCだ。一人で過ごすのはやっぱり寂しかった。

寂しさをごまかす様に開拓に身を投じて忙しい日々に意識を遠ざけたのも事実だ。

開拓系のゲームが特別好きだったのが救いだが、それでも硝子と会えて嬉しい。


「硝子達の方は今まで何をしていたんだ?」

「はい。私達はあれから第一都市で目覚めたのですが――」


幽霊船の戦いの後、硝子達は全員が無傷で第一都市ルロロナの砂浜に流れ着いたらしい。

よかった。実は硝子と闇影のエネルギーダメージが無いか心配していた。

最悪、現在の俺の様に全員がバラバラになっていた可能性も危惧していたが、幸いそういった事はなかったみたいだ。

それから硝子は皆と直に再会した訳だが、俺と連絡が取れない事に気付いた。