経過報告によるとアルトはペックルの店で売っている設計図や物資を、所持していた資金でかなり買い占めたそうだ。
ただ、それでも足りないらしい。地味に高いのが原因だとか。
城や建物の建設をアルトは一定のラインまで妥協はしないスタンスに切り替えたみたい。
この辺りは何だかんだ言ってアルトも凝り性って事かな?
まあ、悪徳やっていた事を反省してって事何だろうけどさ。
どんだけ大事業なんだ?
「毎日島の採掘場で入手できる物資でもコツコツと開拓は出来るが、早めに終わらせたいだろ? そう言う事だよ」
ああ、なるほど。急がせてる訳か。
と言う訳で俺達は海岸へ向かう。
海岸では相変わらずしぇりるが船作りをしているようだ。
最近じゃマシンナリーと併用して漁船の作成に勤しんでいる。
ソナー付きの船が何時出来るか楽しみだな。
しぇりるが作業を中断して俺達の所へ来る。
「……おかえり」
帰って来たのは察したみたいだ。
実験をすると笛を見せると頷いた。
とりあえず……吹いてみよう。
お? オートで手が動いて笛が鳴り響くぞ。
「「「ペーン!」」」
ペックル達が海の中で集まり、煙となって……一羽の巨大なペックルとなって姿を現す。
大きさは……10メートルくらいか?
海岸でしか呼べないと言うのはどう言う事なんだろうか?
「ペーン」
そのまま海岸で横になったままペックルは時々背中に乗れとばかりにフリッパーで背中を指差している。
「……」
みんな沈黙するしかない。
「わー面白そう!」
紡以外はな。
さっさとチャレンジを始める紡に合わせて俺達はペックルの背中に乗る事にした。
けどしぇりるが若干しぶそうな顔をしている。
「船……?」
「あー……ありそうだ。ペックルカウンターみたいに笛で設定を弄れるぞ。装備とかもさせられるみたいだ」
ペックルが船の代わりとして乗せてくれる感じ。
なんとなく嫌な予感がしつつみんなで乗り込むと、俺の視界に出発の項目が出現。
「もしや島から出られるのか?」
そう期待して胸を躍らせながら出発を選ぶ。
すると巨大ペックルは何故かクロールで俺達を載せたまま泳ぎ始める。
行く方角は頭側の羽毛を引っ張る事で操作するみたいだけど……。
島がドンドン小さくなり……やがてまた島が見えて来た。
そう、俺達の島が……。
「島から出られない! いい加減出してくれー!」
第二都市の主を釣らせろー!
「落ちついてください、絆さん!」
「速度は出てる……負けられない。ううん……乗り心地の為に船を改造するのも良い」
しぇりるが職人の目で見ている。
結果、この巨大ペックルに牽引してもらう船が後に完成する。
のは置いて置いて、俺達は海岸に戻ってきた。
俺達全員が海岸に降りると巨大ペックルは煙となって消え、ペックルが散らばる。
「あははははは! お兄ちゃんといるとあきないね! こんな事が起こるなんて」
「笑うな! 運営に言え!」
変なイベントを盛り込みやがって。
俺に一体何をさせたいと言うんだ。
ともかく、実験は終了だ。
「そうそう、地底湖で主を釣ったんだった。しぇりる、あの地底湖はまだ底が深そうなんだが素潜りで底まで行けると思うぞ」
「また行くんですか?」
「今度は五日くらいで帰ってくるさ。な、しぇりる」
「……のう」
しぇりるが視線を逸らしている。
行きたくないのだろうか?
くそ、しぇりると俺は同類だと思っていたのに。
「ダイバースーツと酸素ボンベを作って底があるのか、別のマップやダンジョンが分岐しているかもしれないだろ?」
「気持ちはわかりますけど……」
「……チャレンジは重要」
しぇりるも冒険心はあるみたいだ。
そりゃあ新天地を目指す志を持つ仲間だもんな。
単純に長期滞在が嫌だっただけか。
下級エンシェントドレス
「どちらにしてもダンジョンで物資調達した方がいいと思いますよ。島の方でも採掘は出来ますが、絆さんの言う効率は段違いです」
「まあ、そうなるか。人数を多くすれば稼ぎも良くなるだろうし」
ビクッと硝子達が俺の顔を見て震える。
釣りは気にすんな。既にある程度は確保してるから!
「というかあのマップに隠しの採掘ポイントがあったから、採りに行くのは良いと思うぞ」
「ついでに釣りを五日するんだね」
アルト、黙ってろ。
「その前にロミナに釣った主の素材を見てもらおう」
「ええ」
ロミナの工房に向かう。
おや? 施設の拡張がされている……アルトが指示をしたのかな?
前よりも大きくなってる様な気がする。
「三日ぶりだね。釣りの成果はどうだい?」
「主を釣り上げたぜ!」
「毎度思いますけど、よく釣りあげられますよね」
「確かにそうだね。フィッシングマスタリーだけで片付けるには不思議なくらいな程に主を絆くんは釣り上げていると思うよ」
「試行錯誤を繰り返しているからなー……その釣り場にあった餌や仕掛けを使えば案外引っかかる。それにニシンに始まり、ナマズ相手に何度も敗北をしてるんだぞ」
「まあ、常時成功している訳じゃなくトライ&エラーの繰り返しなのは理解しているよ。それで今回はどんな素材かな?」
俺はシーラカンスを解体した素材をロミナに差し出す。
するとロミナは若干眉を寄せながら素材に目を向ける。
「ふむ……随分とレアリティが高そうな素材だね。上手く行けば良い武具を作れそうだ」
「今度は誰の装備を作ってもらおうかな」
島にいるみんなの事を考える。
「稼ぎを重視するんだったら紡辺りが適任か?」
「んー……お兄ちゃん、私はダンジョンのボス素材で装備が欲しいな。あっちの方が好みなんだ」
あれだけレア装備を欲しがっていた紡が殊勝な事を言っている。
きっと本当に好みなボス素材なんだろう。
多分、中二感のあるモンスターだ。
「ふむ……となると硝子に予備、もしくは若干上位になるかもしれないけど持ちかえて貰うかな?」
「いえ、私は特に困っていないので、絆さんかしぇりるさんが良いのではないかと思いますよ? これからダンジョンに挑むんですし」
「……私は大丈夫」
しぇりるはエイハブスピアを持って答える。
防具は良いのか? と思ったが、ロミナに作ってもらったっぽい装備を着ている。
んー……。
「正直、絆さんの方の装備を見直すべきではないでしょうか?」
「確かに……言ってはなんだけど、絆くんはケルベロススローター以外の装備はそこまで突出した物はもう無いのではないかな?」
「ケルベロススローターがあるし……」
「そのケルベロススローターも若干心もとなくなって来てると思うよ。お兄ちゃん、ダンジョンの深い所だと厳しいと思う」
「何だかんだ言って、紡くんもモンスターがドロップした優秀な武器を使っているんだ。絆くんの装備はそろそろ替え時かもしれない。幸い、島で採れた鉱石や素材でそれなりの物が作れるよ」
ふむ……それならしょうがないか。
出来れば装備に見合った優秀な人材に持たせた方が効率が良いと思うんだけどな。
「そもそも絆くん。君が釣り上げた魚の素材だろう? 君が自分自身に使う事が本来正しいんだ」
「とは言っても、俺は釣りを優先しているし、竿は作ってもらったから文句は無いんだけど」
「適材適所に配る発想は尊敬に値するけどね。謙遜も度を過ぎれば嫌味になる。今回は妥協してくれ」
「……そうだな。わかった」
そんな訳で俺用の武具を作ってもらう事になった。
「まずはそうだね。絆くん用のドレスを作るとしよう」
「う……」
女性ロリキャラでやっている事をすっかり忘れていたと言うのに……ここにきて思い出される。
そうだった。
俺の外見は女キャラなんだった。
「何故言葉に詰まっているんですか?」
「さあ?」
首を傾げる紡に殺意を覚える。
お前の所為だろうが!
俺はネカマをする気は毛頭ないんだぞ!
「ああ、お兄ちゃん、今更ドレスを着る事に抵抗があるって所? 気にしなくて良いのに。別にリアルで女装しろって言っている訳じゃないんだし、可愛さを追求すればいいんだよ」
「うるせー! 何が可愛さだ」
「お兄ちゃんだってゲームで女の子キャラ使った事あるんじゃん」
俺は可愛いと言われるのが好きなんじゃないの! 着せて愛でるのが好きなの。
女の子に成りたい訳じゃない!
「まあ、絆くんの外見は随分と拘って作られているなとは思っていたけれど……」
「私とお姉ちゃんの力作だよ!」
「本来は筋肉マッチョ予定だったんだ!」
「ふむ……絆くんには悪いが目の保養的に紡くん達の方を賛同したくなるよ」
「やったー!」
ロミナー! 絶対に忘れないからな!
「君がもしも筋肉マッチョだったらこの場にこのメンツが揃ったかな?」
なんだと?
まるで俺が女キャラだったからみんなが付いて来たかの様な言い方だ。
……流行の萌え系アニメじゃないんだぞ。
かわいい女の子がきゃっきゃうふふしていたから仲間が出来た、とかそんな訳ねーだろ。
そうであってほしい!
「コホン……じゃあ防具のドレスを作るとしよう」
「鎧とか、もっとゴツイ装備に出来ないのか?」
「出来なくは……出来ない」
「今言い直したな? 出来るんだな?」
どういう事だ。
何故俺を愛でる方向に話が進んでいる。
「まあまあ、絆さん。私も絆さんの今の格好は気に入っていますし、どうかドレスを着てくれませんか?」
「硝子、お前もか」
「君は元々釣り人だろう? 重装備の戦士では無い筈だ。見た目に拘るのは良い事だと思うよ」
なんとなく言い分は理解出来る。
腑に落ちない点はあるけれど、わからなくもない。
鎧系の装備は重量が増えて動き辛いらしいしな。
釣りをする、という目的を加味するとやはり軽装が望ましいだろう。
「お誂え向きに、古代魚素材で作れるドレス……布系防具に釣り補正があるみたいだ。鎧だと別の物になるが良いかい?」
「……はぁ、わかったよ。じゃあ頼む」
「武器も私が見繕う。残念だけど釣竿は作れそうにないがね」
大鯰の竿があるから良いだろ。
つーか、これが俺の武器みたいなものだ。
そんな訳でロミナが武具作成に挑んだ訳だけど。
「む!?」
ドレス作成をしていたロミナが声を漏らした。
それからしばらく作業に没頭している様だったけど、顔色が悪い。
作成で発生するミニゲームの類と裁縫をかなり集中している様だった。
やがてがっくりと肩を落として俺にドレスを一着手渡す。
「すまない……少々失敗して予定とは異なる物になってしまった」
「ロミナが失敗するとか珍しいな」
前線組の筆頭鍛冶師だった訳で、島に来てからも鍛冶をずっとしていた。
そんなロミナが失敗とか、それこそ珍しいだろう。
「作成に入る見立てでは問題が無かったのだが……この古代魚の素材はかなり高位な素材だったみたいでね。ナマズの比では無かった。素直に私の技術Lvよりも必要な物が多かったんだ」
かなり悔しげにロミナはドレスを見て言っている。
「製造を始めた途端に正体を現して、どうにか形にするので精一杯だった。もしも自力で確保した素材だったならとても渡せない。確認してみてくれ」
「は、はあ……」
そう言いながら俺はロミナに渡されたドレスを広げる。
失敗して消失するよりはマシな物って事だろうか?
下級エンシェントドレス
フィッシングパワーという補正はしっかりと付いている。
多少フリルのついたドレスだ。
下級と言う所がロミナの言う失敗だろうか?
「下級の割に装備出来ないんだが……」
今の俺では装備する事もままならない程の必要ステータスだ。
これで下級って、ロミナが失敗せずに作れたらどれだけの品になるんだ?
硝子の話を参考にすると、俺のエネルギー面でのステータス上昇はもう少し見込めるはず。
それを加味しても、限界ギリギリで装備できるって所だぞ。
「失敗したから必要ステータスが高いのか?」
「いいや……そこは変わらないだろうね」
「マジか……こりゃあ扱いきれないな」
素材のレアリティが高過ぎて装備品を使いこなせない。
こりゃあ、もう少し待っていた方が得策だな。
というか、シーラカンスの素材がそんなにレアだと言う事は、シーラカンス自体がレアだったのかもしれない。
主というだけでなく、引っ掛かる確率も相当低かった。
15日も潜っていた訳だし、確率的に考えて相当低く設定されている。
もしかしたらフィッシングマスタリーの数値が足りないと引っ掛かりづらいとか、そういう判定があるのかもしれない。
あるいはマップの性質上、長期滞在出来るから確率が低いとか、考えはいくらでも出て来る。
「はぁ……」
おや、ロミナが溜息を漏らしている。
気にしているみたいだ。
「気にしないで良いよ。とりあえずがんばれば装備出来そうだから受け取っておくさ。しっかりと作れる様になったら武器も頼むよ」
「ああ、任せてくれ。これは私の意地だ。絶対に素晴らしい物を作りあげて見せよう」
「わー……ロミナちゃんでもこんな事あるんだね」
「私自身も驚きだよ。ここまで作成難易度が高い代物があるなんてね。この先のアップデートでどれだけ限界が上がるか恐ろしい話だ。もっと精進するとしよう」
「さてと、じゃあ装備はある程度妥協しなきゃいけない訳で、出発の準備をするとしようか」
「待ってくれ、失敗の穴埋めと言う訳じゃないがね。絆くんには是非とも受け取ってもらいたい武器がある」
ロミナはそう言うと俺に……ミラカボウという弓と矢筒をくれた。
弓の技能
「弓?」
「ああ、ダンジョン内で硝子くんと紡くんと一緒に戦うのは、あまり戦闘が得意じゃない絆くんでは厳しくなって行くだろう? なら援護に徹する意味でも弓は覚えて悪い物じゃないと思うのだけどどうかな?」
弓か……そう言えば開拓業務に狩猟があった覚えがある。
ペックル達と一緒に狩猟するのも悪くないかもしれない。
罠とかついでに覚えれば、釣り以外での食料確保が出来る。
俺はモンスターを倒して強くなるとかじゃなくて、落とし穴とかの罠で狩猟をして肉を確保したい。
解体もそこで役に立つし……うん、良いかも。
「魔法を覚えるのも手だけど、どっちが良いかい? その場合、魔法用の武器を作るよ」
「んー……」
魔法はなー……地味に技能習得の前提が多くて、釣りとか趣味技能に割り振る隙が無い。
言い換えればスキルやエネルギー的に重たい。
その点で言えば、まだ弓等の方がいいかもしれない。
罠とか面白そうだし、かご漁にも興味がある。
釣りと罠の両方が関わるっぽい。
フィッシングマスタリーをしていたら取得条件が見えた。
「魔法か弓かと言われたら弓かな。だから弓で行くよ」
魔法系が少ないから覚えても良いだけど、そうなるとますますスキルを圧迫する。
本腰を据えてやるなら良いけど、今の俺は趣味人だから必要ない。
「アレ? 弓の技能が習得できる」
今まで弓なんて使った事無いはずだが?
何かの派生とかか?
「船で戦っている時、しぇりるさんと一緒にバリスタを使っていた事がありましたよね? その経験からでは?」
「あー、なるほど」
バリスタの効果も上がるなら悪くないかもしれない。
じゃあさっそく覚えておくか。
という訳で弓の技能を少しばかり振る。
「弦を引き絞って矢を放てば良いんだよな?」
リアルの俺は弓なんて持った事もない。
とはいえフィッシングマスタリー同様、覚えれば命中補正とかも掛かるだろう。
「そうらしいね。絆くんなら使いこなせると思うよ。コツはある程度安全な所を意識して矢を放つ事だ。このゲームにフレンドリーファイアは無いから矢が持つ限り撃てば良い」
ああ、硝子や紡へ当てる心配は無用って事ね。
「ダメージは無いけど、若干仰け反り判定はあるから程々にね」
「その点も考えて少しずつやって行きましょう」
そんな訳で俺達はダンジョンへ物資調達に出かける事にした。
ついでにLv上げと言うか、エネルギー稼ぎもする予定だ。
しぇりるが同行する手はずになったぞ。
で、硝子と紡の導きの元、俺達は地下80階から始める事になった。
2、30階でオロオロしていた立場的にちょっと緊張する。
「見た目は同じモンスターでも強さは段違いなんで気を付けてくださいね」
「とは言っても60階辺りとそこまで差は無いけどね」
「はいはい」
「お兄ちゃんは後ろから矢で援護してくれていれば良いよ」
「おう!」
そんな訳で俺は硝子と紡が戦うモンスターの群れを遠くから矢でペチペチと援護射撃を繰り返した。
しぇりるは相変わらず中距離から銛で突いていて、安全圏をキープ。
というか……硝子と紡がダンジョン内での戦闘馴れしているのか、出てくるモンスターをドンドン屠って行くな。
やっぱ戦闘センスが高い奴と俺とでは反応に違いが出ていると実感する。
矢で出来る限り安全な所から射抜く作業を繰り返していると、ボウマスタリーの熟練度が上がって割り振る。
不要になったら下げれば良いかと思ってLvを上げたら与えるダメージが少しずつ上がって行って、弓が軽く感じてきた。
硝子と紡が稼いでくれたエネルギーで下級エンシェントドレスを着用出来るまでエネルギーが溜まったので着用する。
「わーゴシックなデザイン。良く似合うよー」
「あのな紡、俺は別にドレスを着て似合うと言われても嬉しくもなんともないぞ」
「またまたー。実は嬉しいんでしょー?」
……うざい。
やはりリアル妹は鬼門だな。
何故俺はコイツをパーティーに加えてしまったんだろうか。
いや、勝手に密航してきたんじゃなかったか?
まあいい。過ぎた事だ。
この島に呼んだのも俺だしな。
しかし、だからと言って言い返さない訳じゃない。
「もっとオーバーオールとか田舎っぽい格好でも良いくらいだ。釣り人なんだからな」
「えー! もったいないよー!」
やかましい!
とは言え……確かに硝子の言う通りエネルギーの上限に達してしまって、エネルギー限界突破という技能が出現した。
とりあえずⅡまでは振れそうなので取得しておこう。
スキルの効果的にしょうがないが、マナの消費量がかなり多かった。
「絆さん、似合いますよ」
「……うん」
硝子としぇりるが着替えた俺を褒める。
あんまり見た目に拘っていないから良いんだけどさ。
ふむ……確かに釣りに関して補正が掛るみたいだ。
フィッシングパワー+50とか書いてある。
この効果がどの程度かはわからないが、後で釣りをして確かめないとな。
「この装備ってどれくらいの性能なんだろう?」
今まで装備していた硝子からもらった装備の5倍くらいある。
「じゃあモンスターの一撃を一度受けてみたら? さっきも被弾してたでしょ?」
「ああ……かなり痛かったな」
弓で安全な場所から撃っているけど、それでも被弾する事くらいある。
何だかんだ言ってここは地下80階よりも下なのでモンスターの一撃も痛い。
若干、マイナスになるだろうけど、それを覚悟しないとどれだけ受けるダメージが減ったか分からない。
そんな訳で出てきたモンスターにわざと攻撃を受けてみる事にしてみた。
前と同じくシトラスジェリーの突撃を受け止める。
ペチ……。
「……」