「む!?」
俺に狙いを絞った次元ノサハギンの群れが突撃してくるのをケルベロススローターで迎撃しようとした所で、ブレイブペックルが前に立ちはだかり、盾でサハギン達の猛攻を受け止める。
「負けないペンよ!」
クリスが回転しながらサハギンに突撃して、フリッパーでコンボを繰り返す。
うわ、地味に動きが良いな。
開拓の七つ道具を使用した攻撃コンボがある意味綺麗に、サハギン達を蹂躙して行く。
さすがはペックル。海の生物って事なのか?
NPCがこれだけ活躍してくれるなら、今回の波は楽勝だな。
「……ん?」
闇影の威力やペックル達の動きから早くも勝利を確信した所でオープンチャットが聞こえてきた。
『敵を倒す前に敵が湧いてきて!』
『うわぁああああーーー! ゴボゴボゴボ……』
『こちらEの3。風が強くて船が転覆した。誰か助けてくれ!』
『救援に行きたいけど船が上手く動かなくて無理だ!』
「ペックルはモンスターじゃないペン」
そんな声が結構聞こえてくる。
あっれー?
これって結構やばいんじゃないか?
まあ今回は船上戦闘スキルや舵スキルが必要になる。
そしてそれ等のスキルを波に挑む全プレイヤーに求めるのは酷だ。
特に舵スキルは移動する為のスキルなので、これが無いと移動するのも難しい。
これは思った以上にきつい戦いになるかもしれないな。
……最後のは無視する。
少なくとも俺のペックルではないしな。
「絆さん、右隣の船の方々が助けを求めているので行っても良いでしょうか?」
確かに右隣の船は船上戦闘も舵も無さそうなメンツで困っている。
無視していると壊滅して流れてきそうだ。
何よりこちらは闇影と俺達で十分削れ切れている。
「わかった。動きがあるまで周囲の援護していてくれ」
「はい!」
そう硝子は頷くと船の縁を蹴って右隣の船に飛び移った。
俺達の船の方が大きいので見えるが、着地と同時に次元ノサハギンを一匹仕留めている。
「じゃあ私は左の助けに行くね」
紡も反対側へ硝子と同じ様に飛んで行った。
こちらは確認するまでもなく蹴散らしてくれるだろう。
「……前進する」
しぇりるが突然船を進ませ始めた。
いや、硝子達が今さっき飛んでいったばかりなんだが……。
「硝子殿達はどうするでござる? サークルドレインでござる!」
「このままだと圧迫される」
そう言われて周囲を眺める。
地面と違って船ばかりの光景だが、至る所に船があり、そして戦闘を繰り返している。
中には船が転覆して海に落とされている者までいるな。
これが地上であれば連携をして敵の進行をなんとか出来るんだろうが、如何せん敵は海中からやってくる訳で、中々にぐだぐだな状況になりつつある。
お、素潜りして海中で戦闘している奴がいた。
特殊な戦場だが、スキル相性の良いプレイヤーもいるみたいだ。
しかし……それでも周囲を見る限り、しぇりるの言う通り動けなくなる前に進んだ方が良い。
「そうだな。まともに少なくとも動ける程度までは前進しよう」
「うん」
そうして船を前進させながら、俺はパーティー会話に切り替える。
『硝子、紡、このままだと船が動けなくなるから、船を前進させる。船から船に飛び移って適当に蹴散らして移動してくれ。合流はそっちの判断に任せる』
『わかりました!』
『了解ー!』
幸いな事に俺達の船は目立つ。
近場に船が並んでいる現状なら、それ等を足場にして合流する事も可能だろう。
次元の白鯨
「むう……硝子殿と紡殿、かっこいいでござる!」
「闇影、お前は船の護衛な」
「わ、わかっているでござるよ」
闇影が硝子達に羨望の眼差しを向けている。
飛んで移動する感じは忍者に通じる物があるからだろう。
とはいえ、闇影まで消えると俺達の戦力的に厳しいので残ってもらわないと困るんだ。
おっと、フィールドチャットで報告しておかないとな。
『こちらEの3……じゃなくてDの3。Eの3からパーティーメンバーを左右へ一名ずつ救援に向かわせた。困っている人は『ディメンションウェーブ対策委員会』のギルドメンバーに助けを求めてくれ』
『いや、一人来た位じゃ……あー、助かる。扇子の着物の子が敵を倒してくれた』
『こちらは鎌の子が……』
別行動を始めてそんなに経っていないのにもう活躍してやがる。
まあ敵単体の強さは低めに設定されているのは運営の良心か。
きっと特殊なマップだから必要なスキルを揃えている人からすれば難易度は低めなんだろう。
逆にスキルが揃っていないと厳しいんだろうが。
なんてやっている間も敵が大量に海面から飛び乗ってくる。
それ等の攻撃を受け止めてくれるブレイブペックルと攻撃するクリス。
俺はブレイブペックルに合わせる様にバリスタを撃ちまくる。
そして船の敵を殲滅したら周囲の船や海面にバリスタを射出、射出、射出。
うん、金銭的にはきついのかもしれないが、ポイントが凄い速度で上がっていく。
何よりMMOなのに無双感が凄い。
俺にはこの手のネットゲームで無双する経験なんてほとんどない。
何故なら俺は紡や奏姉さん程プレイヤースキルが無いからだ。
そもそもネットゲームはプレイヤーキャラクターのスペックはほとんど一緒だから差が付き難い。
しかしどうだ。
バリスタで蹴散らされていく次元ノサハギン、次元ノ怪魚、次元ノカジキ。
闇影の魔法でもそれは同じで、なんていうかアルトではないが『ははは、敵がゴミの様だ!』って感じだ。
アイツは金に関してだけどさ。
「よし、闇影、しぇりる、俺達は戦線を押し上げていくぞ!」
「うん」
「おう、でござる!」
†
「しぇりる、バリスタの矢の追加が来たぞ!」
「……ん」
あれから俺達はバリスタを撃って撃って撃ちまくった。
途中バリスタの矢が切れた事もあったが、定期的にアルトから追加の矢が届くので弾切れにはならない。
一時的に切れても弓に切り替えて撃ちまくるだけだ。
何より……。
「島が見えてきたな」
黒い島……今回の破壊対象が見えてきた。
マップを一直線に突っ切って向かったのでBの5だ。
どうやら、というかやはり俺達が一番乗りだ。
「周囲の警戒するから、行って」
「了解! 闇影、行くぞ!」
「任せるでござる!」
船がそのまま黒い島に突撃する。
重い衝撃がするが、気にせずに飛び出して着地。
島の中心にある黒い塔を目指す。
しかし、島には当然ながら敵の姿が……。
「クレーバー! クレーバー! クレーバー!」
「サークルドレインでござる!」
それ等の攻撃で敵が面白い様に沈んでいく。
エネルギーがここに来るまでに現在の限界値に到達したので、出し惜しみなどしない。
何よりスキルを使ったその場からパーティーシステムの影響でエネルギーが回復していく。
きっと硝子や紡が倒しているからだろう。
まあそうでなくても闇影が範囲魔法で蹴散らしているしな。
「よし! 張り付いた! ペックル共、総攻撃だ!」
「「「ペーン!」」」
黒い塔に張り付いて攻撃を開始する。
大量のペックルでガスガスと攻撃していく。
俺もスキルを撃ちながら通常攻撃を織り交ぜて殴りまくる。
後方はしぇりるがバリスタで援護してくれているのでなんとかなっているみたいだ。
時折闇影が後方に戻っていって雑魚を蹴散らしているし、なんとかなりそうだな。
「しかし堅いな……」
「多人数前提だからしょうがない」
「そうでござるな。十人以上で叩くのが基本でござる」
それを三人+ペックル達だからな。
単純な数だけで言えばペックルの影響で多いが、所詮はNPC。
プレイヤーの威力には勝てないだろう。
……使ったその場で回復するんだし、久々にあれを使うか。
「エネルギーブレイド!」
俺はアイテム欄からエネルギーブレイドを取り出して振り被る。
当然、使用エネルギーは無理の無い範囲だ。
それでもエネルギーの回復を考慮しているので、一発の威力としては多いはず。
とはいえ、それでも一発で塔破壊とはいかないが。
よし、武器をケロベロススローターに持ち替えて……って既に使用した分の四分の一も回復している。
ディメンションウェーブ中だけあって敵の殲滅量が多いからだろうな。
これならさっきの二発分位使っても大丈夫そうだ。
「回復を考慮してエネルギーブレイド使うから護衛頼むな」
「承知でござる!」
そのままエネルギーを振り込み、俺はもう一度エネルギーブレイドを振り被った。
ジジジっと出力のあるエネルギーが黒い塔に切り込みをいれる。
すると黒い塔が崩壊していく。
くくく、通常の攻撃とは桁が違うのだ。
『よし! Bの5の塔破壊成功! そのままAの6に向かう』
『おお、助かるのじゃ』
『早いな』
『いや、早過ぎない? 火力的に無理でしょ』
『無理ではないのじゃ。あの大きな船の人員はスピリットが多い。火力を集中させれば不可能ではないじゃろう』
おお、よくわかっているな。
不遇扱いをされているがスピリットはディメンションウェーブと相性が良いんだ。
まあ今回のエネルギーを回復出来なかったりするときつい種族なんだけどさ。
『なるほど……って毎回この話題出てるだろ』
『ですよねー』
『というか俺よりペックルの方が活躍しているんだが……?』
などという雑談染みた会話になっている。
どうやら毎回の事らしい。
もしかすると最近ではスピリットが不遇扱いされる事はないのかもしれない。
この辺りは孤立状態にいた関係で疎いんだよな。
「そういう訳でAの6に向かうぞ」
「……ん」
「承知でござる!」
「「「ペーン!」」」
などと言いながら俺達は船に帰還して、移動を再開した。
†
最終的に左から行った紡がA1の島を潰し、右から行った硝子がA6の島を潰した。
それまでにそんなに時間は掛らなかった。
さすがに島で存分にやりこみ、装備も資金も出来る限り投入する俺達の敵ではなかったって事だろう。
波にもみんな馴れて来ているみたいだし、最初の波よりも動きが良い。
正直……チョロイと感じてしまう。
『島の崩壊を確認。ボスがそろそろ出るのじゃー! みんな復帰が出来なくなるから備えるんじゃぞ!』
なんてチャットが全体会話から聞こえて来る。
相変わらず指示が上手いな、このチャット主。
「さーて、ボスはどんなのが出て来るのか」
甲板からボスが何処から出て来るのか見渡す。
雑魚は相変わらず無限湧きしているから余裕のある範囲でやってる訳だけど……。
『し、Cの3にボス出現――うわあああああああああ』
という声がして、その方角に目を向ける。
するとそこには海中から海面にある船に先制攻撃を仕出かしたボスが悠々と空中に飛び出している姿が映る。
……攻撃を受けた船が消えた。何処へ行ったんだ?
「おおー……」
その姿は一種の幻想的な光景に見える。
少なくとも波の背景とボスの姿が上手くマッチして何処かのポスターにも見えなくもない。
自然と撮影モードで撮っていた位だ。
「クジラでござるな」
闇影が呟く。
「Moby-Dick or The Whale!」
だからしぇりる、妙に良い発音をするな。
ともあれ、形状は白いクジラ。
ただ背中に複数の目と言うか、宝石っぽい何かが無数に付いている。
宝石鯨って感じに見えなくもない。
名前は次元ノ白鯨。
空中で宝石の部分から無数の光を放って雨の様に攻撃を繰り出しながら海中へと潜って行く。
その様子は、凝ったムービーの様だ。
アレを倒せって事なんだろう。
泡攻撃
『ボスが出現したのじゃ! 余裕のある者達は挙って攻撃をするのじゃ!』
「「「おー!」」」
「行く!」
しぇりるがやる気を見せて舵を切る。
船が素早く移動して次元ノ白鯨へと急接近。
「闇、舵をお願い」
「おわ! しぇりる殿!?」
闇影に船の舵を任せたしぇりるが船の武装、大砲やバリスタへと近づき、ペックル達に混ざって攻撃を始めた。
そして徐に、バリスタとも異なる銛を射出する捕鯨砲に手を掛けて引き金を引く。
捕鯨砲に装填されていた銛が伸びて行き、次元ノ白鯨に突き刺さる。
おー……結構、良い感じにダメージ入っているんじゃないか?
ゴリゴリと次元ノ白鯨のHPバーが減って行く。
反撃とばかりに次元ノ白鯨が宝石の光線を飛ばして来る。
「任せろペン!」
攻撃に反応してブレイブペックルが船から飛び出して盾を構えて攻撃を受け止めた。
「俺達も続くぞー!」
「おお!」
他のプレイヤーも次元ノ白鯨目掛けて、各々船の武装で攻撃し、素潜り部隊も飛び付いて各々の武器で攻撃を始めた。
俺は相変わらずペックル達と協力してバリスタや大砲で狙撃をしている。
「絆殿、拙者も攻撃に行きたいでござる」
闇影が目をキラキラさせている。
まあこういう戦いをするのがゲームの醍醐味だ。
巨大ボスとの戦いをのんびり見ているなんて嫌だろう。
「はいはい」
しょうがないのでペックルの笛を取り出し、操作を受け持つ。
この船は舵での操作も出来るが、笛での操作も出来る。
闇影が舵から手を放し、次元ノ白鯨目掛けて魔法の詠唱を始める。
「ドレインでござる!」
相変わらずだな。
「サークルドレインでござるー!」
で、増援で現れた雑魚の一掃も闇影が行ってくれた。
笛の操作の限界もあって、俺が舵を握り、次元ノ白鯨が放って来る攻撃を避けるように意識する。
結構大変だな……。
何故かしぇりるは嬉々として次元ノ白鯨目掛けて攻撃を繰り返しているし……。
というか、雑魚の方は無視して次元ノ白鯨の方しか見てない!
やがて次元ノ白鯨は海中に潜って行く。
また海面にある船目掛けて突撃でもして来るのだろう。
と言う所で硝子と紡が船に戻ってきた。
器用にもペックルに捕まってだ。
「ただいま、お兄ちゃん」
「ただいま戻りました。随分と巨大なボスですね」
「まあな。さっきからしぇりるが興奮してボスを嬉々として攻撃しているぞ」
「珍しいですね」
ボーっとしている事が多いしぇりるがここまでやる気を見せるのは、確かに珍しい様な気がしなくもない。
そういや前に、エイハブスピアに関して話していたっけ。
白鯨とか呟いていたし、何かしら関心がある相手って事なんだろう。
って考えてみればエイハブスピアは次元ノ白鯨に効果が高そうではある。
で、次元ノ白鯨の攻撃に備えていると……ぶくぶくと海面が泡立ち始めた。
「うわ! これ、進行妨害攻撃だぞ!」
泡の上を航行しようとしてクルクルと船が回転している船が俺達の近くにいる。
「うわあああ! 俺達の船が、し、沈む!」
小型のボートに関しては耐久の限界を迎えたらしくぶくぶくと沈み始めていた。
地味に厄介な攻撃してんな。
やがて……海中にある影がドンドンと俺達の船目掛けて近づいて来る。
これって登場時にやらかした海面からの突撃じゃないか?
「硝子、舵を任せた! ブレイブペックル!」
「あ、絆さん!」
舵を硝子に任せ俺は船の縁から海中目掛けてブレイブペックルに指示を出す。
「任せろペン!」
ブレイブペックルが俺の指示に従い、海中に飛び込んで船底へと回り込んだ。
そしてガツンと何かがぶつかった音と共に次元ノ白鯨が俺達の船の脇から斜めに飛び出した。
どうやらブレイブペックルにぶつかって進路が変わって飛び出したって事のようだ。
「チャンス」
しぇりるが、俺達の船の近くに着水した次元ノ白鯨目掛けて捕鯨砲を放った直後、船から飛び出して次元ノ白鯨に飛び付き、背中に乗る。
そしてエイハブスピアを振りかざして突き立てた。
「ボマーランサー」
先端が爆発する銛の一撃に次元ノ白鯨は声を上げる。
おお……なんとも凄いな。
というか、しぇりるが物凄く楽しそう。
まあ、武器が武器だから相性は良いのかもしれない。
その理屈だと俺の勇魚ノ太刀も特効になるはずだが……それは倒して解体する際にでも確かめれば良いか。
あんな巨体に飛び付いて武器を振りまわすほどの運動神経を俺は持ち合わせていない。
ゲームだからと言って、俺のプレイヤースキルは高くは無いのだから。
「しぇりる殿、映画の登場人物になり切った様な顔をしているでござるな」
なりきりのスペシャリスト(笑)である闇影が察する。
確かに……何か因縁があると言うよりも、戦いたかったモンスターが居て喜んでるって感じだ。
しかし……動きが良いな、しぇりる。
事、海が関わる所だと硝子や紡並みに動きが良いのがわかる。
船とマシンナリーの製造職だから俺と同類だと思っていたのに。
さて、俺もやる事をやって行こう。
狙いを絞ってバリスタや大砲、捕鯨砲を発射させる。
もちろん、ペックル達への指揮は俺が担当している。
ただ……なんだろう。
昔、紡や奏姉さんと一緒にプレイしたゲームで似た様な事をした様な覚えがある気がする。
アレは砂の上を走る船だったけど、鯨みたいに大きなモンスターを倒した感じだった。
なんて言うか、アレに似てる。
次元ノ白鯨の背中でツルハシとか振るったら何か採掘出来そう。
発想は力だよな。
今まで、その発想力で俺達は登って来た訳だし。
とは言え、今は目の前のボスに意識を向けるべきか。
次元ノ白鯨は大人しくしているはずもなく、割と過激に突撃や複数ある宝石の部分から熱線を放つ。
挙句津波を起こしたりと、攻撃のバリエーションは多岐に渡る。
俺達の船の機動力は波に参加している船の中で最も良い物で、次元ノ白鯨の攻撃をその機動力とブレイブペックルの強固な守りで抑え込んでいる。
しかもバリスタ等の装備は潤沢、投網や機雷まで用意してある分、しぇりるが用意した品々が大いに役立っている。
「しぇりるさん楽しそうですね」
「だなー」
次元ノ白鯨の上に引っ付いて『エイハーブ! モビーディーック!』って叫びながら技を放ちまくっている。
「しぇりる殿は白鯨のエイハブ船長になりきっているのでござるな。大元は小説でござるよ。拙者、読んだ覚えがあるでござる」
「確かエイハブって白鯨に負けた人物だとかしぇりるが言っていたな」
「そうでござるな……語り手が唯一の生存者で、他の船員は全員死んだと言っても間違いは無いでござる」
改めて聞くと縁起の悪い武器って意味がわかるな。
捕鯨に興味があったのか、好きな物語だったから実際に挑めてやる気を見せているのか。
たぶん、後者だろう。
まさかしぇりるはその血縁者って訳ではあるまい。
血縁者だとしたら外人だろうし、あんなに嬉々として戦ったりしないだろう。
後に本人から直接聞いた所だと、好きな物語だったからだとか零していた。
「ちなみに映画だとエイハブ船長が勝ったハッピーエンドのバリエーションもあるでござる」
「へー」
割とどうでも良い。
どちらかと言えば闇影がどうしてそんなに詳しいのかの方が気になる。
と言うか、こんなに雑談して居られるのは、出て来るモンスターや攻撃に対して余裕があるからに他ならない。