「それで絆さん、解体をするのですか?」
「うん。皆には一度見て貰ってからと思って待ってただけ」
皆と合流するまで朝起きてから相変わらず釣りをしていた。
釣果は上々……主が他に居るかもしれないから離れるに離れられないのが難点か。
「大分解体に関しては広まっているみたいですね。解体技能持ちはパーティーに一人は居るのが無難になりつつあるそうです」
「一応、街とかで解体専門で店を開いている人もいるみたいだよ」
「じゃあ専門家に任せた方が良い感じ?」
「なーに言ってんのお兄ちゃん。お兄ちゃんが、解体のトッププレイヤーだよ?」
そうかー? 釣り三昧でカルミラ島でも好き勝手釣りをしていた俺がトップとか怪しさ抜群だぞ。
「絆さんは解体武器を結構揃えていますし、経験も豊富な方なので私達はお店に任せる事はしませんよ」
「でござる」
「……そう」
「了解、まあ期待に答えられるようにこの辺りも強化していくよ」
今の所は硝子達が狩りをしてきた獲物を俺が解体してって事で良いのか?
魔物の場合はその場で捌かないとアイテム欄に入らないのもあるから微妙なラインだ。
大型の魔物ほど、その傾向が強い。
解体技能の難点だなぁ。
「じゃあ早速捌いて行きますか」
って事で俺は勇魚の太刀を取り出してブルーシャーク『盗賊達の罪人』の解体を行う。
……念のため、出来る限りの解体マスタリーを引き上げて行おう。
今まで結構解体をしていたお陰か解体マスタリーをⅦまで上げる事が出来た。下げるかはエネルギーとの兼ね合いだけど一時的に引き上げるのは悪い手じゃない。
解体をするとミニゲームみたいに斬るべき箇所が分かって、そこをなぞる様にやって行くんだよな。
結構これがゲーム的と言うかシステム的なアシストがあってサクサク進む。
まあ、大分馴れているから難易度が高くても特にミスなく解体が出来るようになった。
最初にニシンなんかを捌いた時と今は腕に違いが出るな。
ただ……うん。このブルーシャーク『盗賊達の罪人』はかなり解体難易度が高い。ロミナが鍛冶に失敗だと言った時と同じような難易度の高さが伺える。
勇魚の太刀やケルベロススローターじゃ大分、性能が負けて来ているのがわかる。
何度も刃を通さないと切れて行かない。
解体武器もそろそろ更新していかねばいけないか。
「おおー見る見るうちにあの大きなブルーシャークが捌かれて素材になって行くでござる」
「絆さんも中々やりますよね」
「解体マスタリーの上昇条件を満たしているからだよ」
なんて言いながら解体を終える。
おお、頭が派手に斬る事が出来たなぁ。
上手くすればトロフィーに加工できるみたいだけど、一応、素材優先なので断念する。
盗賊罪鮫の牙、盗賊罪鮫のヒレ、盗賊罪鮫の胸びれ、盗賊罪鮫のサメ肌、盗賊罪鮫の切り身、盗賊罪鮫の筋肉、盗賊罪鮫の軟骨、盗賊罪鮫の心臓、盗賊罪鮫の胃袋……っと、盗賊罪鮫と言う品々が解体で入手できた。
レアリティが高いのか文字が光っている。
「よーし、終了っと」
「お兄ちゃん。ロミナちゃんの所に持って行って新しい装備を作って貰うのはどうかな?」
「良いとは思うが何を作って貰うんだ? 新大陸の武具も確認したいんだろ?」
「そこなんだよねー……正直出来る事が多過ぎるし、まだまだ手探りな感じだし、作って貰って店売りでより優秀なのがあったらなぁ……」
「ですね……」
「新しい装備を入手するまでのつなぎに使うのはどうなのでござるか?」
「それも手ですね。そもそもロミナさんなら変わった素材を持っていけば喜んで下さるかと思います」
確かに、ロミナは面白い素材を打つ事を喜んでいた。
作業的に見慣れた素材を叩くのとは別に楽しんでもらえるだろう。
「そもそも白鯨素材でもまだ武器を作って貰ってないし……」
「技能が追い付いてないってロミナさんが頑張ってらっしゃいますものね」
「立て続けに変わった素材を絆殿が持って来るのでござるよ」
「そう」
「わかってるけどさ……」
って所でコール音が響いた。
誰だ? そう思って確認するとアルトからの連絡だった。
「今、アルトから連絡が来たな」
「そのようですね」
「じゃ、出る」
許可を押してアルトと連絡を取る。
「ああ絆くん。新大陸に向かって早々悪いのだけど、ちょっとお願いしたい案件がある。出来れば来てくれないかい?」
「まだ新大陸の港で釣りをしていただけだから良いが、何かあったのか?」
「僕だけでどうにか出来る案件でもあるとは思うのだけど、こう言った事は絆くんにも話した方が良いと思う事でね」
「で、なんだ?」
「カルミラ島の領主だからこそ発生するクエスト……かな? それとアップデートによる更なる拡張要素とか色々と発見があった感じだよ」
「わかった。じゃあみんなで行く」
「いや、絆くんだけで良いよ。せっかくの新大陸じゃないか。どうせ絆くんの事だし、港でずっと釣りをしていたんだろ?」
「正解です」
「そう」
「うん。お兄ちゃん。港で釣れる魚のコンプリートを狙ってるよ」
「相変わらずでござるよ」
外野が肯定してきた。
良いじゃないか! それが俺のプレイスタイルなんだから!
「絆さんだけで良いのですか?」
「一応ね。硝子くんたちはむしろ新大陸の調査をお願いしたい。もちろん、こちらの用事が終わったら絆くんとはすぐに合流して貰って良い」
「二手に別れろって事か……」
「元より二手だったでござる」
闇影、うるさい。俺だってみんなに合わせて狩りはしたい。
けれど色々と検証したい事もあるんだからしょうがないだろ。
「んじゃ、とりあえずアルトとロミナに報告がてら俺がカルミラ島に一旦戻る事にするか」
「絆さんがそれでよろしいのでしたら……」
まあ、どうにかして硝子達と楽しくゲームをする方法をそろそろ考えて行かねばいけないのも事実だ。
別行動で漁師をし続けるのも良いけどさ。
何か無いかの模索も俺はすべきなんだろう。未開の釣り場が俺を求めているんだ。
「じゃ、ミカカゲ国で良さそうな狩り場とか釣り場が見つかったら教えてくれ、俺は色々と釣り場も探索をしているから」
カルミラ島での出来事から船での戦闘ならペックルさえ呼べばどうにかなる場合も多い。
強過ぎる魔物なんかに遭遇したら逃げれば良いし。
幸い、しぇりるが改造したペックルを使った海賊船はかなり足が早いからミカカゲに来るまでの航路で苦戦する様な相手は遭遇していない。
何より……カルミラ島には一瞬で帰れる。
「わかりました。毎日報告はしますから絆さんも返事をしてくださいね」
「当然。よさそうな装備品が出来たら報告するよ」
「それじゃよろしく頼むよ。絆くん」
って事で本格的に俺だけカルミラ島にとんぼ返りをする羽目になったのだった。
ああ、船は俺が預かる事になったぞ。
水族館建設
早速カルミラ島に到着した俺は城に向かう。
港は相変わらず活気づいているな……あ、なんか図書館で列が出来ているような?
新大陸に向かう連中もいるが、アップデートで色々と解放されたカルミラ島を堪能しているプレイヤーもまだまだ居るんだろう。
ギルドメンバー区域で待機していたアルトに挨拶をする。
「それで俺が必要な、やらなきゃいけないクエストってなんだ?」
「ああ、まずは玉座に腰かけてくれたまえ」
「あんまりここに座るのは好ましくないんだけどなー……」
アルトの指示で玉座に座る。
するとシステムメッセージに色々と領主として出来る事が表示されるのだが、その中にクエストが表示されているのはわかる。
で、アルトがクエスト項目をチェックさせる。
「魚の大規模発注?」
「そう。第一都市と第二都市からの依頼でね。このまま僕たちが何もしないでいると、第一都市と第二都市の魚料理店や名産品とかが品切れになるってペナルティが発生するクエストが起こってるんだ」
「そりゃあ……随分と変わったクエストだな」
「王様プレイって事なんじゃないかな? 国民、プレイヤー達の食料供給補助って名目のさ」
どんだけいろんなクエストがあるんだよ。
「つまり……名目上はカルミラ島の漁業クエストって事か」
「うん。納品クエストで、必要量はこんな感じ」
そう言って提示されたのは途方もない量のニシンやイワシなんかの発注数だ。
トン単位での発注って……一プレイヤーじゃ無理なクエストだぞ。
「面倒なら一般プレイヤーにも募集を募れるよ。僕達の財布にダメージは入らない」
「なるほど……」
釣り好きな俺からすると毎日釣りをし続けられる良いクエストって事だ。
あ、納品する魚の種類とか色々とあるみたいだ。
食糧問題を解決するだけならニシンやイワシの納品だけで済むけど他の事もしておくとNPCからの税収も出来るようになるっぽい?
一般プレイヤーにも恩恵が得られるか。なんかカニの納品を終えると新装備の解放とかもあるみたいだし。
悪いクエストでは無いな。
「後は水族館の建設をさせている所だね」
「水族館?」
「そう。どうやら魚を寄贈する事が出来るコレクション要素のある施設の様だよ」
それは良いな。
今までただ釣っていただけだけど、新しい使い道が得られるなら非常に悪くない。
「淡水海水、奇抜な魚をはじめ、なんでもOKって感じで寄贈出来る」
「魚を全部コンプリートとか夢が広がるぞ」
「そう言うと思っていたよ。まだ施設は小さいしプレオープン状態にしているけれど、寄贈数で施設の大きさも変わるみたいだね。それと主なんかを釣ったプレイヤーと照会をすると、釣った主が別に登録されるらしいよ」
あ、じゃあ主を釣って解体しても実績として残っている訳ね。
それは非常に助かる。
「釣れる場所なんかも表示されて、図鑑代わりにもなるし、絆くんも魚の情報を仕入れたいと思うんじゃないかな? 個人で検証するのにも限界があるでしょ?」
「そうだな……攻略サイトってわけじゃないがそう言った設備があるなら欲しい」
「カルミラ島のクエストはこんな感じで色々と増えている段階なんだ。だから来てもらった訳」
「なるほどな……」
「ちなみに水族館へ魚を寄贈すると特別なコインが貰えて、良い装備やアイテム、釣り具なんかと交換出来るってシステムまであるみたいだよ。開けば君と同じ釣り人が手伝ってくれるんじゃない? 擬似的な釣り人ギルドだね」
色々とコレクター魂を刺激するシステムが内包されたゲームだ。
「アルトとしては俺にどう動いて貰いたいんだ?」
「そうだね……漁業関連のクエストに関しては確認して貰いたかったって所だね。それと絆くん。ロミナくんの鍛冶に関してなんだけど、技能を向上するには色々と種類を満たして行く方向になって来たらしい」
「剣とか槍とか、作れる奴を一つでも作って行く感じか?」
「そうみたい。どうも作製系の技能では数の経験値以外に種類の経験もこれから必要になる。釣り特化の君の場合は……?」
「数と種類、両方必要になるかもしれないか……」
アレだ。10種類の魚を釣り上げるとかが次の技能上昇条件とかになって行く的な事をアルトは言いたいのだろう。
「漁をすれば相応に経験……熟練度、次のマスタリーの上昇を早めやすい、種類も賄える」
「まだ確定した訳じゃないし、絆くんが釣り以外でしたい事が見つかったとかなら良いよ。だからどうする? 僕が全部勝手にやっておこうか? 適当に人を雇ってペックルと漁に行かせるだけでもある程度はどうにか出来ると思うよ」
ディメンションウェーブは釣りゲームではない。セカンドライフプロジェクトと言う第二の人生を楽しむゲームだ。
けれど、俺のプレイスタイルは釣りで、その延長線上に漁船による漁が追加されている状態だ。
ふとここで考える。
俺にとっての釣りとは何処までの事を指している?
釣竿を垂らして魚を釣る事だけか? 確かにそれも間違いは無い。
だが、素潜りなんかも俺はカルミラ島で行ったし、貝採りとかも楽しんでいる。
海産物全般を寛容に認めているのは事実だ。
鮫捕りも……俺にとっては釣りだし、白鯨を釣ったのは凄く楽しめた。
邪道と思う面もあるが、これもまた一つのライフスタイルでもある。
しぇりるの海女プレイで得た貝とかも美味しかったしなぁ。
解釈を広げた方がより楽しめる様な気もする。
魚釣りも狩猟の一つ。
うん……狩猟なんだよな。漁船で海に出て安定した魚の供給も、狩猟だ。
そして……硝子達と一緒に冒険を楽しみたい俺も居る。けれど、硝子達との冒険を優先すると釣りが蔑ろになってしまう。
「いや……しばらくは俺も手伝わねばいけない案件だと思う。釣りも好きだし、水族館を一人でコンプリートしたい欲求もある。ただ、アルト……俺は硝子たちとも冒険を楽しみたいが、それをすると釣りが出来ないんだ」
「わかっているさ。ついでに絆くんには見てもらおうと思った品があってね。これもアップデートで作れるようになった品みたいなのだけど……きっと君なら使いこなせるんじゃない? 市場で売り出されていた代物なんだけどさ」
そう言ってアルトは俺に一つのアイテムを紹介する。
「こ、これは――」
それを見て俺は、現在直面している問題の一つのヒントを得る事になったのだった。
「僅か数日でまた奇妙な素材を持ってきたね……」
ロミナの工房に行き、ブルーシャーク『盗賊達の罪人』の素材を見せるとロミナが苦笑いを浮かべていた。
「何かに使えそうか?」
「この前の失敗を教訓にこっちも技能上昇にかなり力を入れているからね。白鯨素材は加工するのに必要な手順が多くてまだ難しいけれど、こっちはその辺りがシンプルな分だけ、難易度は高くてもすぐに着手出来そうだよ」
「そうか。何が作れるんだ?」
「どうもユニーク品扱いで作れる品は限られている様だね。牙辺りの素材で……うん。釣竿は無理だけど解体武器が作れるよ。それ以外だと刃物だね」
「扇子や鎌、巻物とか銛は?」
硝子達が使えそうな武器が無いかロミナに尋ねるのだが、ロミナは首を横に振る。
「鎌とかありそうだけど無いみたい。技能不足かもしれないけど……短剣とか試作で作ってみて良いかい? 最近は作らないと詳細が分からないんだ」
「ああ。誰か持ちかえる奴がいないか後で聞く」
「了解、ちょっと待ってて」
ロミナは俺が持ってきた素材を持って鍛冶を始める。
ガンガンと何度も素材を叩いて行き、徐々に形にしていく。
制作時間は多少掛るとの事で俺はその間、カルミラ島の港にある市場を一巡し、今後必要になる物資の調達を行った。
メモリアルクエスト
そうして帰って来るとロミナが手招きして出迎える。
ん? チャット? 内緒話って事か?
「内緒で話をしたいみたいだけど、どうしたんだ?」
「いやね。やっぱ絆くんが持って来る代物は個性的な物が多いなって思ってね」
「それは聞き飽きた。と言うか俺以外も最近じゃ解体が知れ渡って似た様な素材を持ってくる奴がいるだろ」
「そうではあるけど、この素材は絆くんが初なんだから聞いてくれても良いだろう」
「わかったわかった。で、何なんだ?」
「うん。短剣を作ってわかったのは、攻撃力も中々優秀で、付与効果にオートスティールが付いてる。戦闘中に勝手に相手からアイテムを盗める場合があるよ」
あー……あるな。そう言ったスキルとか、オンラインゲームとかで聞いた事がある。
通常攻撃で10%位の確率で盗むが発動して相手からアイテムを入手するとかそう言ったスキル。
ぶんどるとか色々と呼び名がある奴だ。
「技能で習得する奴にありそうだな」
「あるみたいだよ。短剣とか軽めの武器のマスタリーを上げて行くと出るらしいね」
「それが武器に入っているのか……」
「特化の人に比べたら劣るだろうけど、付与効果にある武器が出てくると泣けてくるかもしれないね」
とりあえず使える内に使うと便利な武器だなぁ。
「どうにか今の私にも作れるね。とりあえず絆くんに解体武器を支給する意味で作るのが良いかな」
「他に作れる系統で使える奴がいないんじゃしょうがないな」
素材の癖なのだからしょうがない。釣竿は釣り具であって俺の武器じゃないし。
解体も俺の特技だ。
「まだ素材に少し余裕はあるから必要になったらもう一本くらいなら作れるよ」
「わかった」
「今回作る解体包丁は青鮫の冷凍包丁<盗賊の罪人>だね」
「なんて言うか……微妙に恥ずかしい武器名だな」
何その奇妙な名前は。
「ブルーシャーク素材の解体包丁が青鮫の冷凍包丁で。そこに謎の銘が付くんだよ。それだけで似た別モノって位性能が高いんだよ?」
そうですか……とはいえ、雰囲気的には似た武器があって、それと見た目がそっくりだけど中身がまるで違う武器って事か。
モンスターをハンティングするゲームで似たのを見た覚えがある。エンドコンテンツ用の武器で紡と姉さんが粘っていたっけ。
偽装と言うか目立たない様に使うには良いのかもしれない。
あくまでこの武器の入手方法が少ないのならばだけど。
「確か絆くんはアイアンガラスキを持っていたよね。それを素材に使うから出してくれると助かる」
「これも必要なのか」
料理用の包丁って感じで今は使っていたアイアンガラスキを使うのか。
ちなみに俺が持っているアイアンガラスキは正規品だ。空き缶産の粗悪品ではない。
「素材の節約にもなるし、鍛冶をして検証をしていると使いこんだ武器を素材にすると良いのが出来るのが分かってきているんだ」
へぇ……そんな隠れた効果がねぇ。
長年愛用している道具が生まれ変わった際に、普通より良くなるってのは確かにロマンかもしれない。
「ま、アップデートの影響で強化が追加されているからついでに施しておくよ」
「頼む」
アップデートで新たに追加された項目に、鍛冶関連で強化が追加されている。
追加されたのは精錬だな。運よく良い品が作れると+1とか2とか付くのだけど、それ以外に(1)と付けられる。
安全圏として(5)までは付けられるのだけど(6)や(7)になると失敗判定があって、失敗すると武器が消失してしまうと言うオンラインゲームで付きものの厄介なアレだ。
しかも失敗判定を乗り越えて強化するとキラキラと光沢を宿す仕様で、挑戦欲求を激しく刺激する。
紡の読みだと(7)~(8)辺りが無難な強化で落ち着くだろうとの話だ。
一応島から出発前にみんな揃って安全圏の(5)まで強化して貰った。
この強化のお陰で勇魚の太刀でも解体が上手く行っていたが……。
と言う訳でアイアンガラスキも渡して完成を待つ事に。
「そう言えばロミナ、なんか島の図書館に列が出来ているがアレは何?」
島を回った際になんか図書館に列が出来ていた。
そんなに島の歴史とか蔵書に興味があるのだろうかと首を傾げた。
アルトに聞いても良かったがロミナに先に聞いた。
「ああ……アレはメモリアルダンジョンへの入場列だよ」
「メモリアルダンジョン?」
「うん。絆くんがこの島を入手した時のイベントを追体験出来る、リミテッドディメンションウェーブの再現クエスト」
そんなイベントまであるのか。
「絆くん達が旅立って数時間位かな? クエストが出たって口コミで島中に広がった後、腕試しにみんな挑戦して……失敗する人がかなり多くて騒ぎになりつつクリア方法の考案をしてたよ。曰く、『一発でこれをクリア出来た島主パーティーはおかしい』そうだよ」
おかしいって言われてもな。
成り行きでクリアは出来るだろう。
そんな難しいクエストじゃなかったし。
「そこをアルトくんが情報料を請求してクリア方法を売っていたのだけどね」
アイツはそういう事しか出来ないんだろうか。
さすがは死の商人。金になる物なら何でも売る奴。
カルミラ島の税収がありながらまだ金を欲するその貪欲さは感心するしかない。
しかも俺に黙っているという恐ろしさ。
「本来はそこで沈静化すると思っていたんだよ。挑戦したパーティーの一つがボスドロップに強力な片手剣が手に入ると話していてね。なんと今までの武器の倍の威力を持った強力な武器のお出ましさ」