ぐるんぐるんと空中から斧を持った小型のリザードマンダークナイトみたいな明るい色合いのリザードマンが現われて地面にたたき付けを行い、霧散する。
「もしかしてブレイブペックルの攻撃パターンが増えた形?」
「みたいだな。勝手に使う技だからこっちは操作できないけど、攻撃能力の無かったブレイブペックルが召喚をして攻撃するって事みたいだ」
ラースペングーの時みたいにダークフィロリアルって魔物を呼び出して戦う感じのスキルなんだろう。
「意外なスキルを習得させる事が出来ましたね」
「そうだな。因縁の対決をした後にこんな褒美があると偶然とは思えなくて良いな」
「絆殿の意見に賛成でござる。まるで運命のようで素敵でござる」
「なんか私仲間はずれにされてなーい?」
紡がここで抗議の声を上げているが、ここは俺達の思い出の場所なんだからしょうがないだろ。
「ゲーム的な判断だとブレイブペックルってボスを倒して素材を渡すと様々なスキルが使えるようになるという事でしょうか?」
「いや、河童のボスを倒した時には反応がなかっただろ? 白鯨の時もそうだったから特定のボス素材なんじゃないか?」
「ありそうですね。ただ、どの素材が反応するのか法則が気になりますね」
「カルミラ島の図書館でブレイブペックルの記述があるらしいからそこにヒントがあるかもな」
アルトが調べていたから間違い無い。
赤髪の女の人形とかも関わっているらしいし、俺も確認しておくべきだろう。
「まだリザードマンダークナイトの素材があるし、もしかしたらブレイブペックル用のアクセサリー素材とかあったりしてな」
ラフぬいぐるみをブレイブペックルは常時着用させているけど、もしかしたら他にもバリエーションがある可能性は大いにある。
「これ一つで十分とかありそうでござるけどな」
「それくらい優秀なアクセサリーを今つけているのは間違い無いか」
「意外な発見がありますね」
「ある意味、これもお兄ちゃんとじゃないと分からない事だね!」
「島主補正だけどな! さて、早速この森の泉を探させて貰おうか!」
ここにダークバスがいる事はわかっているんだ。
早速釣らせてもらうぞ!
空き缶
「硝子や紡、闇影もだけどここにある水場に心当たりはないか?」
「たぶん、こっちでござるな」
「ええ」
「こっちだよお兄ちゃん。まあ今回はボス退治とお兄ちゃんへの釣り場案内で良いかな」
「夜の間しか入れない森なので朝になったら外に出てしまいますので注意してくださいね」
当然だ。前回ここに来たときは闇影と意気投合してそのまま第二都市の宿に戻ってしまったが今回の俺の目的は釣りだ。
そんなこんなで常闇ノ森の泉に到着した。
探さないとこんな所に泉があるだなんて思いもしないな。
「それで絆さん。早速釣りをしますか?」
「もちろん、場所は分かったし今の俺なら魔物が来てもここでなら戦えそうだから先に行ってても良いぞ」
「先……というより第二都市に戻って宿で寝るでござるよ」
「そうだねー念のためここに立ち寄っただけで今夜は寝ても良いかも、なんだかんだ色々と狩り場は回ったし」
「私はご一緒しましょうか」
お? 硝子も付き合いが良くて良いな。
「絆さんは私が止めないと一晩中釣りをしていそうですからね。ヌシのダークバスでしたっけ? が釣れるまでずっとやっていそうです」
よく分かって居るじゃないか。確かに俺は釣ると決めたらやり遂げるぞ。
「今日は色々とやってきました。明日もあるのですから程々にしましょう。余裕があったらまた来れば良いのですから」
「時間制限付きか……」
「そう思ってください」
「となるとフィーバールアーで入れ食いをして短期集中で片付けるのが良いか」
俺の考えに硝子は頷く。
「それで良いかと思いますよ」
「わかった」
「じゃあ私たちは先に帰るねー闇ちゃん。この後どうする?」
「拙者、思い出の店を紡殿に紹介するでござる」
「あの店でしょーお兄ちゃんが行方不明だった時に行ったから覚えてるよー」
なんて話をしながら闇影と紡は行ってしまった。
「では時間は短いですがやりましょう」
「そうだな」
俺はフィーバールアーの準備を始め、硝子も釣り竿を取り出す。
「絆さん。この泉だとどんな仕掛けをするのが良いのでしょう? カルミラ島の池と同じ仕掛けで良いのでしょうか?」
「うーん……」
「それと絆さん。ここにカニ籠は設置しないのですか?」
「……考えて見ればそうだな」
各地にカニ籠を設置している俺が釣り場で設置忘れをするとは思いもしなかった。
カニ籠を取り出して泉に投入する。
ボチャンと落ちるカニ籠を見て……森の奥深くにある泉って所でふと、とある童話を思い出した。
「ここで泉から女性が現われて『あなたが落としたのは銀のカニ籠か金のカニ籠かどちらでしょうか?』とか聞かれたら困りそうだよな」
俺はこの泉にカニ籠を設置しただけです。とか言ったら凄くシュールだ。
「泉と言えばその童話も有名ですが、かの聖剣も泉の精霊から頂いたって話がありますよね」
「あー……確かにこんな闇属性な魔物が多い森の泉でそんな大層な剣が見つかったら嫌だけどさ」
何せ釣れる主の名前がダークバスだぞ。一番乗りじゃなくても単純に釣りたいだけでここに来たんだけど。
「確かに……呪われた剣とか釣れそうですね」
「フラグを立てないでくれよ」
不吉で嫌だぞ……妙なイベントが多いゲームなんだ。
ここで闇の精霊が出てきて呪われた装備なんてもらって外せず過ごすとか勘弁願いたい。
「そもそもここで主を釣った奴がいるんだからイベントは先に叶えられているだろ」
「絆さんほどの釣り技能持ちはまだ居ないと思いますよ」
全く否定できない!
自他共に認める釣り好きの俺だからこそ変なイベントを引き当ててしまうかもしれない。
「……釣りをせずに帰ったほうが良い気がするけど、これ以上の成長を遂げるために俺も実績が欲しいんだ」
今の俺の釣り技能を上げるには数ではなく釣った種類を増やさねばならない。
「硝子、とりあえずありそうなネタを喋るのも良いけど今回は真面目に仕掛けを考えよう」
「そうですね。絆さん、ここではどんな仕掛けが良いでしょうか?」
「俺達がこれから釣るのはダークバス、闇属性のコイだ。仕掛け自体はルアーとかではなく釣り針で餌は練り餌系、パンとかで釣れるはずだ」
水族館などの資料などを調べたし、ゲームで釣りをする前にコイ釣りは調べたので覚えて居る。
「今回の仕掛けは俺がやっておくから硝子はいつも通り泉に落とすだけで良いはずだ」
「わかりました。では絆さん。お願いしますね」
「もちろん。任せろ」
とは言ってもシンプルに釣り針に練り餌をつけるだけなんだけどな。
「ルアーとは異なりわかりやすい仕掛けなんですね」
「そうだな。コイを釣るときの仕掛けと根本的には同じだ。ただコイって意外と針を引っかけるのが難しい魚だからタイミングは大事だぞ」
「わかりました」
「とは言っても俺達の釣り技能は高いから相当鈍感でも無い限りは引っかけられるはずだ」
「ええ、それではやってみましょう」
って感じでシンプルに釣り竿を泉に垂らして引っかかるのを待つ。
「ダークバスって魚を目当てに釣る訳なんだが……名前だけだとブラックバスみたいだな」
「確かにそうですね。絆さん、どんな魚か事前に確認しているんですよね」
「水族館の方でな。ヌシ情報だけど……ブラックバスより黒いコイって感じだぞ。口は小さめだから別種だな」
コイの方の黒い奴って感じな訳で……コイは元々黒いの居るけどさ。
ここはゲーム風に闇属性のコイって事なんだろう。
「あ、引っかかりましたね」
硝子の竿がぐいっとしなってヒットした事を教えてくれる。
俺がフィーバールアーをする前にヒットか。割と入れ食いか?
「手応えは十分ですね。ハァ!」
ザバァっとあっさりと硝子は泉から真っ黒な闇を纏ったコイをつり上げた。
色的な意味じゃなく文字通り闇の気みたいな物を宿しているんだ。
どう見ても食用に向かないのが分かるなぁ……。
「やっぱり釣りやすい方の魚なんだな」
「そのようですね」
「第一都市のニシン枠で良さそうだ」
「ちなみに解体するんですか?」
「当然するぞ。他に何が釣れるかなー」
っとフィーバールアーを使ってルアーを泉に投げ入れる。直後にヒット!
仕掛けを考えずに掛かるから楽と言えば楽だけど手抜きであるから乱用は避けるべきだな。
サッと俺もダークバスをつり上げる事が出来た。
「どんどん釣って行くぞー。意外な魚が釣れるかも知れないし」
って事で硝子と一緒に再度キャスティング。
ぐいっとそのままダークバスが三匹釣れる。
「私の方は最初すぐに引っかかりましたけど、あまり釣れない場所みたいですね」
フィーバールアー状態の俺に比べて硝子の方は魚が引っかかるペースが遅い。
「変わった魚が釣れる釣り場みたいだしな」
って所でボーンフィッシュが釣れた。
意外と釣れる範囲広いなこの魚。
食う場所も解体する所もないハズレも良いところの魚だ。
「あ、ヒットしましたってボーンフィッシュですね」
「第一都市周辺の釣り場だからしょうが無いのかねー」
「でしょうね」
って所で目新しい魚が引っかかった。
シャドウウグイが釣れた。
ウグイ……川魚じゃなかったっけ?
「あ、普通にコイやウグイも釣れるな」
ヒョイヒョイと釣り上げて行くとどんどん引っかかっていく。
思ったより釣れる魚の種類は多いようだ。
で、最近はあまり引っかかる事は無かったゴミも色々と釣れる。
空き缶とかな。
「空き缶釣れたー! ……あ、この空き缶、見たことない奴だ」
「空き缶にも種類があるんですか?」
「ああ、見ろ……お汁粉の空き缶だ」
「……」
硝子があきれ顔で俺が見せるお汁粉の空き缶を見る。
ダークサーモン
「色々と芸が細かいんですね」
「そうだな。お? ナマズが釣れた。泉なら居るのかもしれないな」
泉ってカテゴリー的には池って事なのかも知れない。
「で……藻も釣れるな。漆黒の藻って名前が付いてる」
「ダークバスもそうですが、何か使い道があるのでしょうかね?」
「調合とか付与、染料とかでありそうだな」
「なるほど、闇の力を凝縮するって事でしょうか?」
「そうなるな。闇影が好みそうだな」
「ですね。闇影さんの装備に使えないかロミナさんに聞いて見ましょう。加工すれば今でも使えるかも知れませんし」
「そうだな。濃縮することで上位素材になるんだったら良いかもしれない」
ゲームだとそう言った要素があったりする。割と初期の素材だけど色々と加工して行った結果、上位の道具の素材なんかになったり。
属性装備の材料に使われたりするのは安易に考えつくな。
「調合とかアルトが結構覚えている的な話をしてたし持ち込んで見るか」
「良いですね。金勘定だけじゃなくアルトさんも色々と覚えていらっしゃるでしょうし」
「どうだろうな……あいつ、交渉事だけやってそうなイメージもある。鑑定とかは得意だし火炎瓶とか投げていたけど」
よくよく考えて見ればアルトって何が出来るのか俺達は把握してない気がする。
とりあえずここで釣れる物の使い道を聞くのは良さそうだ。
サクサクと釣って行くのは昼間の狩りを思い出す、歯ごたえが無いのはそれだけ釣り具と俺自身のLvが高い所為なんだろう。
味気ないと思うか俺自身の成長を喜ぶべきか……もっと歯ごたえのある釣り場を探すのが良いのか。
って感じで釣って行くとダークバスなどの登録が済んだ。
けどフィーバールアーが勿体ないので釣り続ける。
「ヌシ釣れろー! ヌシダークバスー」
再出現までのクールタイムが過ぎている事を祈りながら釣りを続ける。
「ここでフィッシングコンボが出る場合、どんな魚が引っかかるのでしょうね」
と言った直後、釣り上げて水面から飛び出したダークバスにダークネスリザードマンが水面から飛び出して食いついた。
「噂をすればなんとやらだな」
電気ショックを作動させて食いついたダークネスリザードマンを感電させて引き寄せる。
「リザードマン……ワニという扱いなんでしょうかね?」
「そうかもしれないな」
新要素であるフィッシングコンボの影響か手応えは中々ある感じだ。
「一本釣り!」
ザバァ! っとダークネスリザードマンを釣り上げる事に成功した。
ビチビチとダークネスリザードマンが打ち上げられて抵抗している。
「……絵的に酷い状況ですね」
「そうだな……ところでここに更なるコンボが発生したらリザードマンダークナイトが食いつく事になるのかな?」
「闇影さんが居たらシュールって叫んでいると思います」
「紡が居なくて良かったな。間違い無く爆笑してる」
今の状況でさえも笑うだろ。
「釣れるのがダークネスリザードマンという状況が不思議ですね」
「魚判定なんだから気にしないで行くべきだ。ワニを釣り上げたって思えば良い」
釣り上げたダークネスリザードマンを解体した所、ダークネスリザードマンの魂って素材が手に入った。
「魂って素材が出てきたんだが、これなんだ?」
「えっとスピリットの強化要素みたいですよ。エネルギー上限突破以外にその魂を媒介石に取り込む事で強化出来るそうです。これはその結晶でしょうね」
「へー……今まで気にせずやってきちゃったな」
媒介石を確認すると……あ、これまで倒した魔物の魂が結構入ってる。
よくわからず後回しにしていたけどこんな要素まであるんだな。
「むしろ絆さん気にせずやっていたんですね」
「釣りが主体だからなー……ってヌシも魂に登録されるのか」
アップデート後に釣り上げたヌシが魂として登録されている。気付かなかったぞ。
「今まで知らずに居た要素とかあるもんだなー」
「なんだかんだごり押しが出来てしまっていましたからね」
「そういえば連携技なんて要素もあるんだったな」
島のアップデート一覧で見た覚えがある。
「そうらしいのですけど、見ませんね?」
「何か前提クエストをクリアしないと出来ないとかかも知れないな」
「アルトさんに聞いて見ましょう」
なんて話をしながら釣りを続けているとガク! っと今までに無い手応えが釣り竿に掛かった。
「うっし! 何か大物が掛かったぞー! ヌシダークバスだな! おりゃあああ!」
バシャバシャと水面から飛沫が発生。
俺は今までの釣り経験と釣り具の力を集結させて右へ行ったら左へ、左へ行ったら右へと釣り竿を傾けつつ……リールを回して行く。
「これでも食らえ!」
もちろん釣り竿に仕掛けた電気ショックを発生させると水面に魚が飛び出した……のだけど黒いシルエットがどう見てもヌシダークバスじゃなかった。
「なんだ今の?」
「えっと私の目には魚としか分からなかったのですけど、絆さん。何かあったのですか?」
「ああ、水族館で見たヌシダークバスじゃなかった。なんか別のが引っかかってる」
「新しい発見でしょうか、期待に胸が躍りますね」
「そうだな」
と、俺はわくわくしながら魚との攻防を続行する。
電気ショックでダメージが入りはするけど決定打にはなっていない。
結構釣りづらい魚だぞ……ヌシだと思って挑んでいるけど、かなり集中を強いられる。
難易度が高い……。
「あの黒い感じからして闇なのは間違い無い……どう釣り上げるべきか……」
俺の出来る手札に何か無いか?
……トラップマスタリーが俺にはある!
「食らえ!」
手持ちの罠で投網を生成して泉の中、ヌシが逃げそうな方向に設置して引っかける。
バシバシと網が引っかかり先ほどよりも目に見えて動きが鈍りだした。
よし上手く行った! 逃げる方向制限はいい手だな。
後は攻撃して弱らせる。
「硝子、攻撃して弱らせてくれ」
「ええ、やりましょうか」
って事で硝子が狙いを定めて今引っかかっているヌシらしき魚へと攻撃を仕掛ける。
バシャバシャと水面で抵抗を繰り返すヌシだけど……かなりタフだな。
手応えで言えばかなりのモノだぞ。釣り技能は元より仕掛けの質が悪ければあっという間に外れてしまう。
やがて大分弱ってきた所で、一気に竿に力を入れて……。
「一本釣りーーー!」
バシャっと水面から引き上げる。
ビチビチと陸地で跳ねるヌシを確認する。
「やっぱりヌシダークバスじゃないな。というか……ヌシですらないのかよ」
この釣りづらさから驚愕するしかない。
俺は釣り上げた魚、ダークサーモンという黒い鮭に愕然とするしかなかった。
「鮭ですか?」
「そうみたいだ。初の鮭だけど……」
何だろうな。このいずれ釣りたかった魚の一つなんだけどゲーム独自の鮭じゃなく本来の鮭が釣りたい気持ちと言うべきか。
むしろこんな泉で釣れるのは納得がいかないので完全に別種と認識すべきだな。
鮭って一応種類が色々と居る訳だし。
日本人が思い浮かべる鮭とキングサーモンが違うのと同じ感じで。
「俺の思う鮭では無かったカウントにしよう」
「それでこれ……どんな魚なんでしょうね? 食べられるのですか?」
「一応食べる事は出来る魚っぽいけど、闇属性が多いな。鍋とかに入れたら文字通り闇鍋だな」
まだ解体していない。
道具欄に入れてみんなに見せてから捌こうか。
ダークバス
「闇影さんがネタにされるような気がします」
確かに……これは闇影からしても美味しい魚か。
「本当、ここは何から何まで闇がテーマの場所だな。闇影との出会いもそうだったし」
「ですね。私も負けられないです」
「こんなのが追加で釣れるのは分かったけど……ヌシの追加はされているのか分からないからこのまま継続だ」
「ディメンションウェーブイベントが起こる毎に色々と追加されて行きますからね。居なかったとしても新しいヌシがここで釣れる事になるかも知れませんね」
「そうだな。もしくは……似たような闇の水場とかあったりしてな」
ありそうですね。なんて冗談を言いながらフィーバータイムが切れるまで釣りを続行しようとルアーを投げて何度も釣って行く。
「ちなみに鮭の生食は養殖じゃないと食中毒になるのを硝子は知っていたか?」
「そうなんですか? このゲームだとどうなっているのでしょう?」
「大雑把に川魚は熱処理しないと毒効果が付くっぽいぞ」
「色々と再現はされているのですね」
「ああ……しかし、ダークサーモンの二匹目が引っかからないな」
「ダークサーモンは引っかかる確率が随分と低いみたいですね」
入れ食いになるフィーバールアーでも全然引っかからずダークバスとシャドウウグイ、ボーンフィッシュ等が大半だ。
「あ」
ガクンと硝子の釣り竿が大きくしなる。
「お! 何か大物が引っかかったか?」
「そのようです。頑張って見ますね」
キリキリと硝子はリールを巻きながら俺がやった様に魚との戦闘を始める。
うん。俺が教えた動きを正確にしていて、前よりもスキル効果ではなく単純に腕前が上がっている。
ぐいぐいと暴れはするけど抵抗自体はそこまで強く見えないな。
「俺も手伝うぞ!」
網の罠を仕掛けて逃げる先を制御しつつ呼び出したクリスに命じて攻撃をしてもらう。
ルアーで攻撃? 今フィーバー中だから投げ込むと俺も何か引っかかって手伝えないんだ。
「行けます! はあ!」