Wave of dimensions — страница 68 из 111


「確かに……そんな日を掛けずに私もフィッシングマスタリーはⅩになりましたね」

「拙者も実は出来るけどやらないだけでござる」

「私もね」

「当然僕も習熟はしてるよ」

「にも関わらずやってくれるのは硝子だけだけどな」

「それは絆殿達が無理矢理拙者達に叩き込んだからでござるよ」


要するにカニ籠の回収作業時に経験値を貰えるのが原因だ。

ちなみに設置する時にも少しはもらえる。

その所為でここにいるみんなはフィッシングマスタリーを習得条件を満たしているのだ。

漁に関する基礎知識って奴だな。


「同じ理由でトラップ系も高レベルの習熟を得ているね」

「四天王戦でも役だったでござる。何が幸いするかわからないでござるよ」

「お兄ちゃん、このゲームに愛されてるよね。運営のお気に入りと言われるのも時間の問題じゃない?」

「その皮肉は島に取り残された身からすると言い返したくなるぞ」


どれだけ俺が島での生活を余儀なくされたと思っているんだ。


「その四天王戦で俺は貢献こそしたけど1位は取ってないだろ」

「そうでござるな」

「俺は硝子や紡、闇影みたいに反射神経はそこまで良くないからな」

「紡さんのお兄さんなんですから才能はあると思うのですけどね……稽古をすると時々光るモノはありますし」


硝子の分析は専門故に感じる事なのか。

よくしてくれているからの期待なのか……。


「戦闘中に色々と考えすぎているのが動きが良くない原因かも知れませんが、考えているからこその発想もありますし、性格的な適性で良いかと思いますよ」

「絆殿はもっと積極的に攻撃して近接は解体武器、遠距離はルアーで攻撃していれば拙者を超える成績をたたき出せる可能性もあるでござるよ」

「急がしくてヘトヘトになりそうだな、その戦闘。俺はそこまで器用じゃないぞ」


せわしなく動いて疲れそうだ。


「え? 出来てませんか?」


ここに来て硝子さんの一言……。


「お兄ちゃん、その辺りは出来てると思うけどね。その頻度を上げていけば良いだけだよ」

「うーん……」


FPSとかのゲームでスナイパーライフルでヘッドショットが得意なら、何度もやれば良いよ、と言われている様な気分だ。

一回や二回出来ても、それを連続してやり続けるのは別の技術が必要なんだよな。

こういうのをプレイヤースキルの高い奴は理解していなかったりする。


赤貧生活



「ゲームなんだし、現実では出来ない動きだって出来るんだからもっと柔軟に動けば良いんだよ」

「はいはい。器用に動こうとして失敗する未来が見えるから練習はするけど期待しないで待っていてくれ。それでアルト、他に稼ぎやすいのは?」

「料理だよ。単純な技能だけならね。バイキング店の厨房手伝いをしたら習熟はあっという間さ」


毎日山の様に供給されていくカニを調理すれば数によるごり押しで料理関連のスキルは上がるか。

数をクリアしたら種類を網羅しないといけないのはどんな技能も変わらないみたいだけどさ。

これはカニ籠で上げた釣り系スキルや罠系スキルも該当する。

やはり釣った魚や量、種類は隠しパラメータ的な要素を受けている様だ。


「どれも絆さんが関わっている所なんですね」

「まあね。それ以外にもちょっとしたモノがいくつかあってね。後はコツコツ上げて行く所が多いよ」

「カニ漁は拙者達だけではないでござるか?」

「この辺りは一部僕が設置したカニ籠もあるからね。元々は絆くんが設置した一部を拝借してるのさ」


アルトも手広く事業を広げているって奴だな。

とはいえアルバイトでカニ業務をやれば釣り技能と罠技能はサクサク上がるって事だ。

やっておけば自然と釣りと罠は出来る様になるので損では無いしお金も貰える。


「殺伐と戦いだけをするよりは良いと僕は思うけどね。ペックル達以外にも働く場所を提供しているのさ」

「船に乗って蟹工船をさせられるのは奴隷みたいなモノでござるよ」

「ははは、当然十分な報酬は与えているから問題ないさ。絆君を見てごらんよ。ああいうのが楽しいプレイヤーもいるのさ。それにマグロ漁船を君達は知らないのかな?」

「いずれやりそうでござる!」


否定はしないなー……もっと簡単にマグロを釣れる様になったらやりそう。

まあ要するに、金稼ぎの方法と経験値稼ぎ、スキル熟練度稼ぎのバランスを上手く取れていないプレイヤー達って事だな。

この辺りはゲームによっては何もかも戦闘じゃないと稼げないってパターンもあるから一概には言えないんだが……少なくともこのゲームでは、経験値稼ぎだけではどうにもならない部分があるよな。


「まあ料理に関しては技能だけではどうしようもない要素もあるけどね」

「私達だと絆さんのお陰で毎日美味しく料理を頂いてますね」

「魚料理ばかりで最近ちょっと飽きてきたけどね」

「唯一の難点でござる。絆殿、肉料理とか他に無いでござるか?」

「作れなくはないがー……」

「お兄ちゃんは本来料理は出来るってだけで、うちの場合、お姉ちゃんの方が上手だからねー。ちょっと聞いてみようか?」


そうだった。

奏姉さんを追いかけて妙に殺伐とした広場に来ていたんだった。

……なんか固定パーティーがいる的な話してなかったっけ?


「で、ここに奏姉さんがいるってのはわかったけど……」


紡がそんなキャンプ地の人達のテントを掻き分けるように進んで行き……一つのボロボロになったテントの前にたどり着く。

随分と使い込んで耐久力が落ちたテントだな。

当然の事ながら修理などをしたりして誤魔化す事は出来るけど段々とテントなどは消耗して質が悪くなっていく。

寝心地とか悪くなるし使って寝てもあんまり回復した気がしなくなるのだ。


で、テントは性能が悪くて防音効果も低下しているのか……テントの中からチャリチャリと小銭を数える音と剣か何かを研いでいる音が聞こえてくる。


「よし……あと少しでまた挑戦出来る。あと少し。私はまだがんばれる! うん」


なんだ? 何かを姉さんは買おうと貯金でもしているのか?

それからすぐに……手ぬぐいを持った奏姉さんがテントから出てきて、俺と紡と視線が合った。

しまった。見つかってしまった。


それはともかく……なんか私服なのかボロボロの耐久力が低下しきった服を奏姉さんが着ている。

部屋着とかそんな感じだろうか?

まあ安全地域なので装備が悪くても問題ないけどさ。


「あ……」

「……」


沈黙が賑やかとも殺伐とも取れる周囲の雑音の中で起こる。


「アハハハハハハ! 話を聞いて確認しに来たけど間違い無かったみたい! お姉ちゃん、何やってんの!」


紡がここぞとばかりに爆笑を始める。


「くうううう……」


あ、奏姉さんが悔しそうに顔を赤面させつつ唇をかみしめてる。

程々にしておけ!

ゲームが終わった後が怖いぞ!


何だろうな……姉がホームレスをして居るのに遭遇したような複雑な心境は……。

そもそもここは俺が領地としている島な訳で……言えば城で泊めさせる事さえ出来るというのに何で態々こんな所でボロボロのテントを広げて寝ているのやら。


まあ、奏姉さんの珍しい姿が見れたから……俺もここは姉さんを指さして笑ってから助けるとしよう。

コレはけじめだ。うん。

うん。俺を勝手に幼女アバターにした罰と思えば笑っても許される気がしてきた。


「ワロス、草生えるわ。姉さん、こんな所で何をしてるんだよ。もしかしてカニバイキングで詰め込めるだけ食べて宿代ケチって寝てた?」

「――そうよ! だから何よ何が悪いってのよぉおおお!」


あ、頭から煙を出して奏姉さんが鬼の形相で俺達を追いかけてきた。

生憎このゲームにPKは無いので怒鳴られたり罵声を浴びせられる程度しか出来ない。

ただ、奏姉さんの罵声は今の俺達からすると鳥の囀りと似たようなもんだ。


「酷い方々ですね」

「笑って良いのでござるか?」

「なんて言うか……エクシード家の面々は似たもの同士と言うべきなのかも知れないね」


などと冷めた表現を仲間達がして居る。

奏姉さんをからかうのはこれくらいにしておくか。


「さて、姉さんへのここぞとばかりの心の傷に塩を塗る仕返しはこれくらいにして」


サッと切り替えて俺は振り返って両手を広げる。


「堂々と塩を塗ると言いましたよ」

「オープンな態度は絆くんらしいよね」

「ハッキリと物を言う絆殿はある意味清々しいでござるな」

「親しいからこそなんでしょうかね。私も絆さんとあそこまで腹を割って話せるでしょうか?」

「していると思うでござるよ。現に島に招かれた時がそうでござる」

「考えて見ればそうですね。私以外は迷惑を掛けると分かっていて呼ばれる訳ですし」

「……呼ばれない方が迷惑な事もあるでござる」


闇影も随分と根に持つなー。

呼ぶのが遅かったの謝っただろうが。

今度似た様な機会があったら最初に呼んでやろう。


「で、姉さん。そんな寝心地悪そうなテントで野宿するくらいなら城の方に来なさい」


冗談はこれくらいにして、しっかりと事情を聞こう。

こう……姉が野宿している所を豪勢な所で寝泊まりし続けましたってのが両親に知られるとそれはそれで面倒だし。


「で、でも……お姉ちゃんが妹達に甘えるなんて……」

「弟な」


このゲームだと幼女アバターを使ってるけど俺は男をやめたつもりは無い。

妹達って言うんじゃねえよ。


「ヒー……お姉ちゃんもしかしてプライドが邪魔して私達に頼れなかったとかそんな感じ?」


笑いを堪えながら紡が奏姉さんに尋ねる。

いい加減笑うのをやめてやれ。からかいすぎると後が怖いぞ。


「くっ……」

「アルト、何か事情とか知ってるのか?」

「多少はね。絆くんの姉である彼女は三日に一度くらいのペースでカニバイキングを山盛り食べた後、ここで野宿をした後、臨時パーティーを組んではミカカゲに行ったりしてるって所はね」

「数日の一度の贅沢って所か……その様子から考えて普段は食費すらケチってまともに食べてないとみた」

「う……」


奏姉さんが二の足を踏んだ。図星かよ。

相当赤貧生活で装備か何かを購入してるって所だな。

半年後に発売する最新のゲーム機やハイスペックPCに備えて貯金、みたいな事をしている。

あの頃は大変だったな……。


うちのギルド……アルトが主催しているカニバイキングに参加する常連か……。

経営している店に家族が知らずに入って貪っている姿とか想像するとなんとも複雑な気持ちにしてくれるな。


「とにかく、見栄を張るのは良いけど逆に俺達の風聞が悪くなって迷惑が掛かるから来るように。わかった?」

「……わかりました」

「お姉ちゃん、連行ー」


って事で俺達はその足で城へと戻ったのだった。


固定観念

城の広間にある椅子に姉さんを腰掛けさせる。ああ、先に入浴とかはして貰ったぞ。

どうもして居なかったそうで、城にある風呂に入って貰った。

かなりさっぱりしたようだ。

しかし……奏姉さんの装備品を確認するんだけど……前見た時より質が落ちてないか?

魔王軍侵攻の時より悪くなってるって……。


「ほう……絆くんの姉君か」


城に戻った所で、休んでいたロミナと合流した。


「あ、どうも……」


ロミナは前線組の装備をよく作って居る有名プレイヤーなので姉さんとも顔見知りのようだ。


「最近は店に来ないようだからどうしたのかと思って居たよ」

「え、えっと……」


姉さんがロミナの問いに返答に困るように顔を逸らす。

何か後ろめたい事があるって態度だな。


「あれかね? 絆くんの身内だから優遇などをされるのを嫌がって他の鍛冶師辺りに鞍替えをしたという所かね? 私は気にしないぞ?」

「ロミナ、姉さんはそんな遠慮するような人じゃないぞ。紡ほど遠慮無しじゃないし、面子は気にするけどな」


そんな義理立てするような真面目な人だったらこんな事態になってないだろう。


「大方、ロミナの店が高いとか予約が多くて手間が掛かるとか、しょうもない理由で来なくなったんだろ。それと極貧生活している所から考えて俺達に通報されるのがわかっていたって所か」

「う……」


図星か。

複数の理由が絡まってって奴だ。


「絆くん達にバレないようにとな?」

「見栄っ張りな姉なんでね。現場を掴んでここに連行したんだよ。それで姉さん、なんであんな貧乏生活をしてたわけ? こう……姉さんもずっと遊ぶフレンドがいるって感じだったけどどうしたんだ?」


現在のディメンションウェーブではギルドがあるのは元よりマイホームなんかもあるわけで、友人と冒険や魔物を倒す楽しい日々を過ごしているプレイーヤーは多い。

姉さんも紡と同じく一緒に遊んでいた友人がいたはずだ。

すると姉さんは拳を握りしめて震え始めた。


「ああもう……わかったわよ。アイツらはね。私を戦力外だって事で狩りに誘ってくれなくなったのよ。装備の更新が遅れただけで!」

「競争意識の強いプレイヤーだったという事ですか?」

「元々はリーダーをしていた人が色々と管理してくれていて、私もやりたい事をやっていたのよ。だけど何かクエストを達成した際に連絡が取れなくなって、別の人が引き継いだ辺りからおかしくなり始めてね」

「……聞き覚えのある話だね」


この場にいるみんなが俺を凝視する。

はいはい。

カルミラ島の開拓クエストみたいにリーダー格の人物が行方知れずになって連絡出来なくなったのね。

……となると、その人は今、カルミラ島みたいな特殊な状況にいるのかもしれないな。


「で、後任の奴が向上心の塊で周囲に気を配らないタイプだったって事。そのシワ寄せを姉さんを含めた複数のプレイヤーが被って、競争に負けた姉さんは縁が遠くなった、と」


なんだかんだMMOタイプのゲームは一人で遊ぶとなるとハードルが高い傾向にあるんだよな。

多くの場合、パーティープレイが推奨される。

その為に臨公広場などを利用する訳だけど、そこでも最低ラインの強さを求められる。


「アイツら私の攻撃力が足りないって馬鹿にして装備自慢をしてくるのよ。だから私もアイツらに負けない装備を手に入れれば別のギルドに入れると思って……」

「それで何してたの?」

「そ、装備強化を……」


あ、これは姉さん独特のごまかしをする際の誤解を招く言い方だな。

ロミナは何をしていたのか察したようだ。


「なるほど、過剰強化に手を出して破産したんだな?」

「そ、そうよ! 悪い!? 装備が強く無いと稼げないでしょ! 稼ぐために装備を強化しないといけないでしょ」

「装備が弱いから稼げない。稼げないから装備を強化出来ない。強い所に行けないから稼げないしLvも上がりが悪くなる……っと」

「ネットゲームあるあるでござるな」

「このゲームは戦うだけが全てじゃないんだけどねー。お金が欲しいならアルバイトも今じゃあるし」


まあ、戦闘なんて毛頭するつもりは無いってプレイスタイルをアルトはしているもんな。

文字通り食うに困らず商人界隈で一目置かれる存在になっている。

ロミナは鍛冶はトッププレイヤーだけど戦闘もそこそこ出来るもんな。

現状、装備の影響が強いのは間違いないっぽい。


「だから装備の過剰強化に挑戦し失敗……爪に火を灯す生活をして金をかき集めて過剰を繰り返していたと」

「現状の状況でそこまでこだわる必要はあるのかね?」


過剰強化担当のロミナがそれを言ったら姉さんの立つ瀬は無いな。


「絆くんの姉君にそんなデマを押しつけた職人がいるとは……とんだ不届き者だぞ」

「職人が原因とは限らないぞ。姉さんを馬鹿にしたプレイヤーが言った装備以上の品って固定観念が出来ているって可能性も高い」

「お姉ちゃん、何が欲しかったの?」


俺達の質問に奏姉さんは顔を逸らしてモゴモゴと小さく呟いた。


「え? ハーベンブルグのカトラス?」

「……」


ロミナが露骨に額に手を当てて……なんか若干青筋つけてないか?


「絆くん、紡くん。君達の持っている武器を彼女に見せてやってくれないか?」

「あ、ああ……」

「わかったよ、ロミナちゃん」


俺と紡は奏姉さんに青鮫の冷凍包丁<盗賊の罪人>と使っている鎌をとりあえずとばかりに差し出して確認させる。


「ちょっと何よこれ! 装備自慢のつもり!? そりゃあアンタ達は匹敵する位の装備を持ってるでしょうよ!」

「奏くん、君は大きな勘違いをしている。絆くんの装備は確かに希少素材を元に作っているが過剰強化など全くしていないのだよ。紡くんの装備もそこまで手が込んでいる品では無い」


確かに紡って装備品の類いの作成はそこまで手の込んでいる品は少ない。

むしろ俺はワンオフ装備みたいなのばかりだけど、それにしたってほぼロミナに作って貰った品ばかりだ。


「絆くん達は解体で得られた素材で作ったものばかりでボスドロップでは無い。君が狙っている海賊船長のサーベルからのカトラスの方が特殊な品なのだよ」

「お姉ちゃん、ぶっちゃけカトラスって次のアプデできっと型落ちする装備だよ? 結局は何処かで再強化する事になる程度で、ゲームの最強装備じゃないよ」

「あの程度で打ち止め扱いにされると職人プレイヤーとしてのプライドを傷つけられてしまうよ」


ロミナも武器に関する所はこだわる訳ね。


「次のアプデで良いのが来ると思って生活を維持しつつ貯金するくらいが丁度良いと思う」


これもオンラインゲームあるあるの話だ。

現在最強の装備が翌週のアプデで型落ちする、なんてな。

装備じゃなくキャラだったりして、そこはゲームによって違う訳だけどさ。


「けどみんなアレが凄いって言ってるじゃない。アレが今後の人権になるって話よ。カニ装備は頭打ちになるって」

「何処の誰がそんなデマを広げているのやら……悪徳商人かな?」


このゲームで最も悪徳な商人が何か抜かしている。


「カトラスだけが全てじゃないよ、奏くん。君が長く愛用した装備をもっと大切にしてくれたまえ……でないと装備が泣いてしまうよ」


姉さん、どうやら周囲のプレイヤーに恵まれなかったみたいだな。

情報がなんか凄く狭い。

もっと視野を広げないとダメじゃないか。

おそらく件のリーダーをやっていたプレイヤーの舵取りが上手かったのかな?


「なんかロミナが本当の職人みたいな事を言ってる」

「間違った事など私は言っていないぞ? 愛用した装備を強化する事でより良い効果が付くのだからな」


と、ロミナは試作品で作ったブルーシャークの短剣を奏に差し出す。


「そもそもだね。新しく行ける所で……絆くんが持ってきた材料の一部でこんな代物を私は既に作っているのだよ?」

「こ、これ……カトラスには劣るけど……」


奏姉さんも性能の高さが一目で分かったっぽい。

材料集めはちょっと面倒だけど、ボスドロップと比べれば簡単に作れる装備だもんな。


姉加入

「職人である私が断言しよう。カトラスが絶対では無い。もうカトラスに並ぶ装備が既に入手出来る段階にある。君の周囲は視野が狭すぎるのではないかね?」

「どっちにしてもそんな面倒な連中を見返すとか馬鹿な事を考えて無いで、一緒に来るように。しばらくは養生して臨公広場の使用は禁止」


姉さんって変な所で凝り性だからゲーム終了まであんなホームレス生活をやりかねない。

ゲームって言うのは楽しんでなんぼだ。

ゲームは遊びじゃないんだよ! なんてのに付き合っていたら馬鹿を見る。


「装備は私が見繕ってあげよう。城の倉庫に大量に作ってある品がある」

「そんな……悪いわよ。絆や紡ならともかく……」


ここに来て遠慮を姉さんはしているけど、その対象に俺達を入れないのはどうなんだ?


「じゃあ装備の支給代金として僕が雇用しよう。しばらく僕の指示に従ってくれれば良い。なーに、魔物と戦えなんて言わないから安心してくれたまえ。なんと罠に関する技能が大きく伸びるし、絆くんほどじゃないが釣り技能も上がる。給金は……」


と、アルトが姉さんに交渉を持ちかけている。

何をさせる気だ?