「もちろんだよ。お姉ちゃんがいた所じゃ無いけどこのゲームじゃあんな極限プレイは不要だもん」
確かにな……Lvだけが全てじゃ無い。
俺達の周囲の評判は金を持ったトッププレイヤーって扱いらしいけど、割と好き勝手に……楽しんで、無理の無い生活をしている。
「姉さんとも合流して次の波への対策を整えよう!」
「ええ! 連携スキルも大分感覚が掴めてきましたものね」
「しぇりる殿にも報告でござるな」
そういや、しぇりるとは最近まともに話をしてないなー……全然顔を出さないし。
という訳で俺達はカルミラ島に戻り、みんなと合流した。
「しぇりるー、いるかー?」
籠っているしぇりるの元へ行き、声を掛ける。
するとしぇりるは顔を上げてこちらに気付いて手を上げて作業を中断して近づいてきた。
「……おかえり」
「ただいま。ロミナから話は聞いたか?」
ここに来る途中でロミナがしぇりるには話をして置いたと聞いたので尋ねる。
「……そう」
肯定とばかりにしぇりるはこくりと頷く。
「リベンジ」
「やる気は十分あるようだな」
ここ最近、ずっと工房に籠って遅れがちだった技能習得に励んでいたみたいだけど、やる気があるようで何よりだ。
「作業の方はキリの良いところまで来たか?」
「そう……ちょっと準備してた」
波に備えた準備をしていたって事ね。
「それは何より、最近俺達も連携スキルって代物に手を出してきた所だし、後でしぇりるは闇影と一緒にどんな攻撃が出来るか試して見てくれ」
「……そう」
若干乗り気じゃ無いって感じにも見えなくは無いが……ともかく、しぇりるも準備万端みたいだな。
「絆ーってそこにいるのは、みんなが話をしていたしぇりるちゃんね」
奏姉さんがしぇりるに気付いて近寄って来る。
「私は絆の姉の奏よ。ちょっと前に厄介になったからこれからよろしくね」
「そう……絆と紡が話してた」
しぇりるは奏姉さんを見て答える。
「ちょっと絆、紡と一緒にどんな話をしてた訳?」
「そんな大層な話はしてないぞ? なあ?」
「……そう。よく知らない」
しぇりるも闇影ほどじゃないけど結構人見知りをする奴だからな……姉さんと打ち解けるのに少し時間が必要かも知れない。
「よろしく」
「ええ、よろしく。これからはみんなの台所事情は私が担当するから、魚料理以外も食卓に上るわよ」
姉さんめ、ここぞとばかりにアピールをしてくるな。
「しぇりるちゃんは何が好みの料理かしら?」
「……」
好物を尋ねる姉さんと沈黙するしぇりる。
少し時間が経った所で姉さんが俺を後ろで小突いて個人チャットを送って来る。
『私何か変な事言った? なんか反応が無いんだけど』
『特には。しぇりるって少し会話のテンポが独特だからあんまり気にしない方が良い。嫌だったり不快だったら露骨に顔には出るから問題は無いはず』
姉さんもしぇりる相手だと最初は戸惑うか。
「……和食をもっと知りたい」
「和食ね。わかったわ。魚料理以外も作って行くわよ」
好物は? と聞かれて和食を知りたいと答えるしぇりる。
ちょっとズレてるけどあんまり気にしてもしょうがないな。
「よし、後はロミナから装備を貰って波に備えるぞ」
「おー」
しぇりるがグッと拳を握って手を上げた。
やる気は十分って事らしい。
それから俺達はイベントが発生するまでの間の詰めとしてミカカゲの方へと移動して連携スキルと陣形の調整をした。
「ミカカゲの最新到達地ってこんな感じなのね。ちょっと歯ごたえあるけど、効率狩り場を見つける暇は無さそうね」
「奏さんが前に立って下さるお陰で非常に戦いやすくなりましたね。私も攻撃しやすくなりました」
「お姉ちゃんがいると安定性が段違いだね」
姉さんが加入した事で前衛の布陣が固まったかな。
「闇影ちゃんへの負担がちょっと増してるわね。やっぱりヒーラーが必要よ。火力は十分だから戦闘時間は短いけどね」
回復を頼まれて闇影がちょくちょく姉さんを回復させていたので闇影の攻撃頻度が若干少なめだった。
ヒーラーかー……色々と考えて行かなきゃいけないかね。
「あんまりガッツリと陣形が求められないゲームだから大丈夫だよお姉ちゃん。どっちかというと狩猟するゲーム感覚でもどうにかなるし」
「紡、安定性を考えなさいって言ってるの。波も近いしいきなりの方向転換は無理でしょうけど……私のフレンドで良さそうな子に頼むのも一考かしら?」
「うちのメンバー人見知り多いからなぁ」
闇影は元より、しぇりるも人見知りする方なので敢えて増やすのもな。
「みんな中々強いからちゃんとしたヒーラーが居たらもっと戦えるはずよ。それこそ何倍もね」
「姉さんの望む事は分かるけどさ」
あくまで俺達はエンジョイでやってきた訳だからそこまで気にしないでも良いだろう。
「あー……私の知り合いのヒーラーを連れてこれたら良いんだけどね。アンタたちもあの子と一緒に狩りに出たら認識変わると思うんだけどな」
そんなにも凄い奴がいるのか。
「型の押しつけとかされそうだけど大丈夫か?」
みんな好き勝手に遊んでいる連中ばかりで、紡と硝子は対応出来るだろうけど、闇影達は怪しいぞ?
俺もそうだろうな。
「腕はピカイチだから大丈夫よ。ただねー……連絡取れないから、無い物ねだりか」
既に縁が切れてしまった人物か。
「とにかく、大分みんなの戦い方を把握したわ。波だとどんな動きを基本してるのかしらね?」
姉さんは最初に闇影の方を向いて尋ねる。
まあ、戦果が一番良いのは闇影だもんな。
「敵が多いところに向けてドレインでござる」
「みんな思い思いに攻撃して、何か仕掛けがあった際は絆さんが結果的に上手くやって行きますね」
「お兄ちゃんに期待だね。今回も何をしてくれるかみんな期待してると思うよ」
「そういえば魔王軍侵攻イベントで絆達の噂を聞いたわね……」
姉さんの呟きに俺と闇影は視線を逸らす。
河童着ぐるみを着用し、罠を解除して回りながら攻撃をしまくった。
もはや過去の汚点となるネタ装備による偉業を戦場に居た人たちがふれ回って居たのは間違い無いだろう。
「硝子と紡が大活躍だったって話だな!」
「お兄ちゃん達の方が話題を浚っていたと思うよ」
「そんな話は忘れた。あの場所に河童なんていなかった」
「……」
しぇりるが不満そうに眉を寄せている。
そんなにも惨敗した事が悔しいのだろう。
だからこそ今回の波でリベンジと燃えているみたいしな。
そこをみんな気付いているみたいだし、話題を変える事にしよう。
「うちは凝り固まった考えに囚われず……あっ……イノベーションによって培われた新概念を、無理をしない範囲で、臨機応変にベストを尽くし、クリエイティブに富んだ結果を生み出すパーティーだから、一騎当千のデュエルは出来る猛者達に任せる!」
「どこの意識高いブラック企業でござるか!」
「うちは自由な社風……アットホームなパーティーだから! 休日は社員全員でバーベキューだから!」
うん、途中から突っ込み待ちだった。
闇影のこういうしっかり突っ込んでくれる所、俺は好きだぜ。
何言ってんだコイツって顔を呆れと微笑に変えるには闇影の様な突っ込みが必須なのだ。
「お兄ちゃん、ソレどういう意味か自分でわかってる?」
「いや? 全然? 適当にそれっぽい言葉を並べただけだが?」
「……絆は相変わらずなのね。まあ、大分感覚もわかったし、貰った装備品で私も十分強化出来たと思うわよ。それで絆、ちょっと私も効率的な考えになるんだけど城の倉庫にあったペックル着ぐるみってあったじゃない?」
保管していた着ぐるみをここで姉さんが取り出したのでみんな揃えて身構える。
一体その着ぐるみで何をするつもりだ?
「これ、ロミナさんに聞いたらまだ拡張する要素があるみたいでね。特化拡張すると装備するのに条件が求められるけど前線組でも驚く性能の装備になるみたいよ」
「そりゃあ……」
河童装備の大本だし……色々と拡張性があるのはわかってる。
「でね、ブレイブペックル着ぐるみってのがあって――」
「姉さん、その流れだと姉さんしか装備できないけど良いの? 盾技能持ってるの俺達の中で姉さんだけだけど?」
商人蒸発
防御担当……タンク役を姉さんがやるのか?
確か防御は相当上がるけど攻撃が大きく下がるって話だったはず。
「うーん……まあ良いんじゃない?」
軽いなー! 姉さん。
「カトラス欲しがっていた癖にどういう風の吹き回しだよ!」
「今の最適解を考えただけよ。見た所アタッカーばかりじゃない。硝子ちゃんをもっと攻撃に集中させた方が私が攻撃に参加するよりも良さそうでしょうが」
「うーん……」
「何より絆、バランスを考えなさい。今のこのパーティーに足りないのはヒーラーとタンクよ。アタッカーがより効率的にダメージを与えられるようにしつつ回復を重視するの」
現状でヒーラーと呼べるのは闇影の魔法の一部で、他に回復が使える奴はいないに等しい。
「とは言ってもお姉ちゃん。お兄ちゃんと硝子さんと闇ちゃんはスピリットだから攻撃さえし続ければ回復するよ?」
「媒介石装備でHPが出るって話でしょ? 何より私たちが消耗品とばかりに回復剤を惜しまず使って戦うなんて非効率にも程があるじゃない」
「だけど、結局回復役は闇影しかいないぞ?」
「拙者も専門じゃないでござるよ?」
そうだよな。闇影は魔法担当だけどメインはドレイン。ほかの魔法はオマケであるのは変わらないのだ。
「だから私が代理でヒーラーとタンクを兼ねるの。ブレイブペックル着ぐるみにはね。詳しく聞いたら固有技にヒールがあるそうだからちょうど良いでしょ」
……へーそんなのあるんだ?
そういやラースペングーはダークフィロリアルを回復させていたからあり得るのか?
「でも姉さんアタッカーやりたいんじゃない?」
「そう思うなら絆? アンタが盾技能を上げて着なさい」
ゲ! 墓穴を掘った!
姉さんの指摘がきつい。
「って言いたい所なんだけどアンタはダメよ。アンタしか装備できない頭装備のバフが着ぐるみをトッププレイヤーさえ垂涎にさせる性能にするんだから。何より技能的に私しか装備できないでしょ」
この辺りの割り切りは実に姉さんらしい。
「なに、安心しなさい。反射効果のある良いスパイク系の盾を装備すれば敵のヘイトを集めながら火力は稼げるから」
反射ダメージで稼ぐ作戦……とは言っても姉さんもアタッカーをしたいだろうに。
「今回は私も入ったばかりの新参だからね。馴染む装備もそこまで無いし、アンタたちに譲るわよ。私もちょっと姑息な手を閃いてるから安心しなさい」
「奏殿は割り切りが早いでござるな」
何か姉さんも考えがあるらしい。
という訳で連携の練習を終えて速攻で城に戻った結果、没にされていたブレイブペックル着ぐるみをロミナが作成した。
姉さんが使い込んだ盾によってブレイブペックルを模した着ぐるみが作られるとは……。
新しい盾をロミナに作って貰った姉さんは手段を選ばずにブレイブペックル着ぐるみを着用して……ブレイブペックルの隣で胸を張る。
「どうよ、みんな」
「姉さん、ヤケクソになってるようにしか見えないよ?」
ブレイブペックルが二匹に増えた……というか親子のブレイブペックルみたいな感じだ。
「なんとでも言いなさい。この装備の防御力凄いわよ? 過剰したカニ装備の倍を余裕で超えてるんだから。しかもまだ拡張性があるのよ」
どこまで……とは思うけどブレイブペックルの性能から考えるとあり得るのかもしれない。
「ペックル着ぐるみ装備ってこれが最大?」
「まだ進化はしそうな気配が一応するね。何となく攻撃性能を強化させたラースペングー着ぐるみとかもあるかもしれないね」
あー……ラースペングーがあるもんな。
感覚で言えば確かにありそうな上位装備。
「絆が被っているサンタ帽子のバフと組み合わせてガッチガチよ。水属性の攻撃なら屁でもないわね」
「海でまだそこまで戦っていない魔物を相手に挑んでも良いかもしれないな」
「それでもいいわよ? 私が注意を引くからみんなで攻撃ってね」
そこまでの自信があるのか。
「ヒール」
姉さんが固有技のヒールを試しに使って感覚を確かめている。
「ま、ヒーラーとしては心もとないけどこんなもんね……ブレイブペックルを参考にすると背中のアクセサリーもオプションであるのかしら?」
効果が高そうよね。と姉さんはロミナに無いのか尋ねている。
が、ロミナは今の所無いと答えていた。
「ここまで真面目にしてくださらなくても良いと私は思いますよ……」
硝子が徹底している姉さんの態度にため息交じりに呟いたのに俺も激しく同意する。
「絆殿……拙者ここまで割り切る事が出来る奏殿を尊敬するでござるよ」
「闇影、金の為に徹底的な節約生活をする姉さんだぞ?」
これくらい平気でやり遂げる。だってホームレス生活を平気で出来る人なんだから。
「極端な所は実に……絆さんとの繋がりを感じますね」
と言った形で俺達は波に備えた。
のだけど……波のイベントがいつ来るかと、波の発生場所のフィールド近くで定期的に確認している所で事件が起こった。
アルトが――蒸発した。
ついにあの強欲な死の商人が正体を現した!
……訳ではないらしい。
なんでも物資の調達を頼んでいたのだけど、件のアルトが城にいないとの話だった。
どこかに買い出しとかに行っているのかと最初は思ったし、定期連絡をしてくるかと思ったのだが全くそんな様子もなく……ロミナが連絡をした際に異変に気付いたとの話だ。
「ちょっと絆くん、アルトくんへ連絡をお願いできないかい? 私が連絡したのだけど返事がおかしくてね」
「え? とうとうアイツ、俺達の資産でも掠め取って蒸発したのか?」
ぶっちゃけそういった事をしても何の不思議もない。
本人曰く、そんな真似をする必要すらない程の金が自然と転がり込んでくるとか言ってたぞ?
「株みたいな代物にでも手を出して大損したのか?」
あれだ。借金のカタに城と島主権限を売却しなきゃいけないみたいな事でも起こったらとんでもないぞ。
波なんて無視してアルトを地獄の果てまで追いかけて制裁をしなくてはいけない。
今度は俺も処刑のダンスに混ざって踊るぞ。
何度もリスキル出来るような場所に呼び出してくれる。
「確かに彼なら十分にあり得る話なのは否定しない。色々と手広くしていたし、絆くん達も見たかどうかは知らないけど手広く広げた事業内で動きの悪い者たちにくどいほどの説教をしていたりね」
いや、それは知らないな。
カニの加工業務には携わったけどあれは単純作業だしペックルにも任せていた。
「昨日もいつの間にか金庫に入っていたお金がかなり減っていておかしいとか、物資がごっそり減ったとか愚痴っていて犯人捜しをしていたよ。今日辺り、絆くん達にも聞こうとしていたんじゃないかと私は思う」
そもそもアルトが他に何をしていたのかよく知らないんだよな。
本人も把握しきれないほどの金と物資の流入があるという事なんだろうけど……大丈夫なのか?
「ただ……私もチェックさせられたのでわかるが城の金庫は特に問題ない。倉庫の方は出入りが激しいので把握しきれていないがね」
つまり金の計算が合わないからおかしいとチェックをしてから減ってない、と。
確かにアイツの立場で犯罪的な蒸発をするとしたら持っていくだろう。
持って行っていないって事は別の事情があると考えるのが自然だ。
「妙な請求者が来たりは?」
「ないね。あくまで彼とだけ連絡が取れない。ブロックリスト入りしている可能性もあるので君にもね」
これは本格的に死の商人が本性を現したか?
「わかった。おーいアルトー」
仕方なくアルトへと個人チャットを飛ばすことにした。
『現在この者の電源が切れているか、電波の届かない所にいます』
親子
えっと、なんかこのメッセージ、覚えがある。
とはいえ微妙に表現が違う様な気もするんだ。
結構前だから細かい所は思い出せないな。
でもまあ、カルミラ島に閉じ込められた時、こんな感じだったはず。
しかし、『この者』って表現は初めてな気がするんだが……。
「どうしました?」
ロミナとチャットをしていると硝子が近寄って来た。
「ああ、ロミナがアルトの行方が知れなくてチャットを俺に送ってくれって言うから送ったらさ」
「え?」
硝子も俺に倣うようにアルトへと個人チャットを送った所でメッセージが帰って来たようだ。
「カルミラ島に閉じ込められていた絆さんにチャットを送った時と同じようなメッセージですね」
「だよな」
「やっぱり絆くん達もそうか……」
アルトの奴、もしかしてカルミラ島と同じくどこかへ呼び出されたのか?
この波が今にも起こるって忙しい時期に。
いや、呼んだ事のある俺が愚痴る資格は無いんだけどさ。
「ブロックリスト入りだとどうなるんだ?」
「私はブロックをする側でされた事は無いので確認したわけではないが、『現在この相手にチャットを送ることはできません』と出るそうだ」
無難なブロック対象への返事だよな。
だけど、俺が確認したアルトへのチャットは少し違う。
電源が切れているか、電波の届かない所にいます、だもんな。
みんなを片っ端からブロックして逃げたにしては色々とおかしいか。
そもそもゲームの世界だぞ。どこに逃げるんだよ。
「ちょっと彼の取引先に片っ端から連絡が来るんだけど誰も居場所が分かっていなくてね。私が代理で相手をしている所だよ」
商売人って所でロミナも鍛冶師だから少しは代理で出来るよな。
「ペックルカウンターはどうなってる?」
俺以外で個人所持設定をしていないギルド所属のペックルはペックルカウンターで指示が出せる。
個数が限られている代物で、アルトにとって大事なアイテムであったはずだ。
「アルトくんが持っていたのは城の倉庫に収められていたよ」
ペックルカウンターさえも手放してどこかに行った?
ますます不安になってくるぞ。
「一体どこに行った、というか呼び出されたのか……」
「おそらくどこかのイベントに巻き込まれたのだと思うがね」
「困りましたね……」
「事業に失敗したとかじゃないなら……まあロミナ、しばらく頼む」
「ああ、彼ほどじゃないし手広くする事はしないけど、代理でやっておくよ」
という訳でアルトと連絡を取ることが出来なくなった。
それをみんなに伝える。
「アルト殿は顔が広いでござるからな。フレンド登録も多かったのでござろう」
「腕を買われて開拓地召喚されたとなるとアルトさん、引く手数多だね」
まあなー……そういう意味では頼りになる商人様だな。
しかし次に会った時、アルトが俺と新しく呼んだ奴のどっちを利用するかで天秤に掛けたりするのだろうか?
……アルトの事だからどっちとも上手く付き合うだろうけど。
「こんな風にみんなも減って行ったのよね?」
奏姉さんが聞くとみんな頷く。
「拙者、無視されて散々だったでござるよ」
「噂は聞いたことあるわよー。闇影ちゃんの話をね。死神ってくどいくらい言ってる人がいたわ」
いたなー……硝子の元仲間達、あれから俺達の周辺じゃ見なくなったからどうなったか知らない。
「嘆かわしい方々です」
「思う所があるのは分かるわよ。まあ……何処かで反省してくれる事を祈るばかりよね」
「何はともあれしばらくアルトは居ないって事ね。とりあえず……俺達が出来るのは波を乗り越えられるようにするだけだな」