「ここで芸をしてると周囲のプレイヤーに馬鹿にされるぞ?」
前回の波の時に俺が釣り竿を海に垂らした際の事を思い出す。
絶対にあの時みたいに奇妙な行動をしていると、周囲のプレイヤーが俺達に期待の眼差しを送るだろう。
「そうでござるな。ぶっつけでやるのはやめた方が良さそうでござる」
「えーやらないのー? 出来たら面白いのにー」
「仮に出来たとしてやるなら闇影が良いだろ、炎の矢とか出す魔法とかでさ」
問題は河童に乗った闇影が硝子の扇子に向けて火矢を当てて発動する合成スキルってどんなもんなんだ? って事だけど。
「無難に発動出来そうですね」
「魔法剣とかその辺りの発想的にね」
チャージ系のスキルが該当するだろうから扇子を広げて待機してればそれっぽい感じに出来そう。
「闇影、墓穴を掘りそうだったな」
「く……気付かず自爆したでござる」
「そもそも闇影ってドレイン忍者だけど、使える魔法の種類が多いよな。スキル管理的に重くない訳?」
ドレインに始まり、光魔法や回復魔法等、雷魔法とか風魔法とか使える魔法の種類は非常に多い。
必要な時に付け替えをして居るんだろうとは思って居るけどそれもポンポンしたらマナの消費が多いだろうに。
「そこは困らない範囲でやっているでござるよ。拙者だって色々と学んで居るでござる」
出会った当初は馬鹿みたいなスキルLvで時間でマイナスだった癖にな。
「色々と実験しているでござる。ちなみに絆殿達と行動すると勝手に習得条件を大きく満たしている属性があって取得するか悩んでいるのはあるでござるよ。サブ属性で特化出来そうな奴でござる」
硝子と同じく日々エンジョイしてる内に習得条件を満たしてしまった魔法ね。
「生活でも技術が上がる魔法ってあるんだな」
「絆殿や硝子殿も前提のスキルを習得すれば絶対に出るはずでござる。むしろ絆殿向けの属性でござるよ」
「あ、私……少し分かった様な気がしますね」
「何? 硝子も何か心当たりあるの?」
「ええ、私が使っている輪舞零ノ型・雪月花って習得に扇子の技能以外があるようで水に該当するスキルとあるんですよね」
そうだったのか……水?
「水?」
「ええ、船上戦闘スキルや複数のスキルで条件を満たしている様で、出現した時に既に条件は満たしていたんです。直球のスキルは分かりませんけどね」
「じゃあ闇影が俺達と一緒にいるだけで条件を満たせるのってのは?」
「水属性でござるよ。もちろんブラッディレインも使用する事で水属性魔法の熟練度が上がって習得しやすくなるでござる」
「闇ちゃん水魔法をサブで覚える感じ?」
「闇魔法が通じない時に使うか検討しているって段階でござる。この先、張り替えで行くのは火力が不安になるでござるからな」
ちなみに雷魔法は水と風のどちらかを上げると習得出来るという話だ。
スキルツリーがちょっと複雑そうだな。
サブ考察
「もちろん硝子殿が釣り竿を武器に使って居る所から考えて、このゲームの仕組み的に滑り止めに何か変わった技能は覚えて置いても良さそうだと思うでござる」
戦闘だけが全てじゃ無い、では無く戦闘でも使える日常生活スキルを何か覚えて置くと今後有利に働くという発想か。
「じゃあ闇影も釣り仲間になるんだな」
ようこそ、釣りの世界へ。
と、手招きしていると闇影が拒むように手を振る。
「拙者釣りは興味無いので断るでござるよ。ただ、ちょっと心当たりがあるので今後やってみようと思う物があるのでござる」
「闇ちゃん何をする感じー?」
「楽器でござる。ちょっと興味が湧いてきているでござる」
……闇影からすると意外な感じだな。
「楽器演奏出来るのか? 闇影」
「技能は覚えてないでござるが、そこは硝子殿のような元々得意な要素でござるよ。ちょっと演奏には覚えがあるでござる」
「やはり闇影、お前はアイドルなのか?」
実はこのゲームにINしているアイドルって奴。
「間違い無く違うでござるよ。何の裏もなく拙者はアイドルじゃ無いでござる。ゲーム内アイドルは絆殿でござる様に」
「おう。その喧嘩、買うぞ」
誰がアイドルだ。俺がなぜファンクラブがあるのか謎で仕方ないんだからな。
むしろ闇影の方が萌え所あるだろうに。
ジャパニメーション忍者だぞ?
しかも不幸属性持ちなんだぞ。
「拙者、習い事で楽器を嗜んでいるのでゲームでも生かせると思うでござる。きっと上手く使えて、演奏……魔法詠唱関連のシナジーを期待出来ると睨んでいるのでござる」
ああ、あくまでメインは魔法でサブで楽器演奏系のスキルを覚えてシナジーで魔力増加を狙っているのか。
理に叶った発想だな。
しかも馴れた技能ならゲームアシスト無しでも練習しやすい。
他のゲーム経験が生きるってのと同じ感じだろう。
というか……闇影、お前って楽器演奏出来るのかリアルで。
内の姉も妹も女故に両親が音楽教室に通わせようとしたけど姉さんは小学生の頃にそこそこ嗜んで、紡は興味無いと突っぱねたっけ。
で、紡は一時期やっていたのは運動系の習い事。
……思えば姉さんは卒無いけど紡って本当、男っぽい感じのやんちゃな奴だよな。
「もちろんメイン戦闘で使う武器種の目は光らせているでござる」
あくまでサブで楽器演奏とかその辺りを活用してみようと模索するって形ね。
「紡殿は何か無いのでござるか? 奏殿が料理やサバイバルがサブだとするなら戦闘以外で何も無いでござるよ?」
「えー」
紡が俺達を見つめる。
お前飽きっぽくて格闘ゲームとかFPSとかばっかりやってるもんな。
何か生産的なスキルをまともに覚えるとは全く想像出来ん。
鎌とか戦闘系のスキルは迷いなく覚えるけどな。
加工業務で自然と上がった釣り、罠辺りで妥協するか?
「何か覚えないとダメなのー?」
「別にそうじゃないけど、戦いだけだと飽きるだろ? RPGだって寄り道で出来る技能とかあるじゃないか」
「そうだけどー私生産系って全然やりたいの無いんだよねー」
完全に戦闘よりの紡に何か別の趣味っては土台無理な話か。
手伝いでカニ籠業務は出来ても何か別の趣味を覚えるとなると嫌って感じで。
「紡殿向けというとジャグリングとかどうでござるか? 他にダンスとか、体を動かして周囲を楽しませるのは良いかもしれないでござるよ?」
「ジャグリング?」
「簡単に言うなら曲芸でござるよ。魅せ技に凝るのでござる。ほら、ヨーヨーとか凄く長く回して色々と芸をしているでござる」
なるほど、確かに飽きっぽい紡にはそう言った芸は向いているかも知れない。
「えー練習とか面倒臭くない?」
「格闘ゲームで勝つためにトレーニングモードで少しは研究するだろ? あの延長線上だろ」
「なるほど、お兄ちゃんわかりやすいね」
「そもそも紡の場合は元々感覚派だから練習を少しするだけで戦闘系のシナジーで習得も早いんじゃないか?」
趣味系の技能が戦闘に役立つシナジーがあるように戦闘系から趣味系の技能へのシナジーがあっても何の不思議も無い。
「そっかーだけど、曲芸で何か目に見えた何かとか貰えるの?」
まあ……そこを突かれると色々と痛い所か。
生産とはやっぱり何か違うんだよな。
「拙者が模索する楽器演奏も目に見えたメリットは無いでござるよ」
「闇ちゃんそれなのに楽器演奏を覚えるの? 詠唱にシナジーがあるかもって事だけど」
「紡殿、魔物を倒すだけがセカンドライフじゃないでござる。何か別の第二の生を楽しまないと魔物退治も飽きが来るかも知れないでござる」
「その時に考えれば良いよ」
確かに……紡の言い分も間違いは無いんだよなー。
こう言った趣味って生活が安定してからやるのでも幾らでも遅くは無い。
「紡殿、シナジーによって硝子殿が新技を覚えたりしてるでござるよ? 何が新しいスキルになるか手探りをするのは悪では無いでござる」
「うーん。まあ、曲芸は気が向いたらやってみようかなー新技のヒントとかありそうだし」
一点特化じゃなくするというのがこのゲームで有効の可能性が出てきたからな。
「色々と模索して楽しまないと勿体ないってのは分かるぞ。俺だってみんなと一緒に戦うのは釣りの合間の趣味なんだからな」
「絆殿……」
「まーお兄ちゃんはねー」
あ、なんかみんな揃って呆れるような空気がしてくる。
「絆さんはぶれませんね」
「化石のクリーニングも魚を見つけたからやっていたでござる」
「徹底してるもんね。さーて、そろそろ目当ての塔が見えてきたよ。みんなボコボコに叩いてるから塔が壊れるのも時間の問題じゃ無い?」
紡の言葉に俺達が前方へと意識を向けると残された塔を見るとみんなで総攻撃をして居る様だ。
『結構塔固いな』
『段々固くなってるのはしょうが無くね?』
『だけど前回に比べて倍以上固い気がするぞ。まあ装備品で俺達も結構強くなってるけど』
なんて形でみんな思い思いに感想を述べている。
俺達の場合は連携技のデバフを掛けた後のエネルギーブレイド三連発でごり押ししたからな……ただ、もう一本の塔も結構早めに折れたと思うが。
最後の塔だけ固いのか……なんか塔周辺に集まるプレイヤーがゾンビパニック映画で生存者が立てこもった建築物に群がるゾンビに見えてくる。
非常に失礼なんだけどさ。
「ちょっと近寄りがたいでござるな」
「だな」
「えー? 私平気だよー攻撃してくるねー」
と、紡が突撃して塔へと攻撃をしている。
残った俺達は遠距離攻撃で様子を見ながら攻撃をする事にしていると、塔が倒壊する。
他のプレイヤー達が頑張っていたから来なくても良かったかも知れない。
『おーし! 三つ目の塔が壊れたぞー! ボスのお出ましになるはず』
『だな! 今回のディメンションウェーブはサクサク行けてて良いな』
そりゃあもう四回目のイベントなんだから馴れて来るもんだろ。
『ばっかおめー、敵が結構強いじゃねえか、島主パーティーの助けとか一部の廃が削ってくれてんのわかんねえのかよ』
おや? 結構魔物が強い判断で確定したっぽい。
まー……俺達って装備がかなり良いし連携技でデバフを振りまいているからってのは否定出来ない。
足りない人員はペックルで埋めて受けるダメージを極端に下げて進んで居るしなー。
『逆にボスがどんだけ厄介なのか分かったもんじゃねえぞ――』
って話をしている最中、魔物が大量にポップし始めた。
それと同時に地響きが発生する。
「な、なんだ?」
『え、Aの2にボス出現! ゾウの頭を持った大きな人型魔物、次元ノガネーシャ! 地響きがすげぇ!』
ちょっと待て、俺達のいる場所ってAの2からちょっと離れてるぞ。
その地響きがここまで来てるってのか?
うお……地面が揺れる揺れる! エフェクトが果てしなさ過ぎる。
設置クロスファイア
「絆さん!」
「おっとこれはちょっと歯ごたえありそう!」
わらわらと魔物の出現頻度が跳ね上がり、次元ノガルーダや次元ノジンが大量に俺達やプレイヤー目掛けて襲いかかって来る。
その数は十や二十じゃない。
まさに無数と言った様子で一人のプレイヤーが何体もの魔物に囲まれる事態になって来ている。
「はあああ!」
「おりゃあああ!」
「範囲技で削ります! 紡さん! 行きますよ!」
「うん! こりゃあヤバイかも!」
「闇影、こっちも協力でデバフを振りまいて戦えるスペース確保をするぞ!」
『絆ー! そこね! 今行くから堪えなさいよー! この防具のお陰で耐え切れてるけど、ちょっときつくなってきたわね……』
『ありです! 助かりました!』
『ぐわあああああああああ!』
『いわぁああああああああっく!』
奏姉さんは俺達の場所を分かって居るのか近寄ろうとして居るけど戦闘不能になっていくプレイヤー達の声が聞こえてくる。
こりゃあ結構危険だな。
最初の波での戦闘を思い出す、あの頃はあの頃で接戦だった。
やっぱりそう簡単に波はクリアさせてなんてくれないよな。
「はぁ! 輪舞零ノ型・雪月花!」
「紅天大車輪!」
「「ブラッディボムスプラッシュ!」」
硝子の雪月花で周囲の魔物を花びらが切り刻み、紡のスキルで弾き飛ばしながらダメージを与え、俺と闇影の連携スキルで周囲の魔物達を強力なデバフを振りまく爆弾へと変えて周囲に飛び散らせる。
『今だ! 島主パーティー近くの奴らは安全確保をするために魔物共を蹴散らせろー!』
他プレイヤーの周囲に血が掛かりデバフを与える。
お陰でダメージが大幅に入り周囲の魔物は一時的に激減した。
さすがに解体とかして居る余裕は……無いな。
あ、奏姉さんが見えた!
「みんな! 姉さんがめっちゃ抱えてヤバそう!」
「行くペン!」
元祖ブレイブペックルがPTメンバーの危機を感知して姉さんの元へと掛けて行く。
ストレスゲージを確認……まだ大丈夫か。
ただ、耐えれるか怪しいラインだな。
何にしても手早く魔物の群れを抱える姉さんを助けないとヤバイ!
『ブラッディボムスプラッシュを!』
『俺は島主パーティーじゃねええ!』
『ブラッドフラワーにブラッディレインだったか! とにかく、みんな範囲技使って削ってから倒れてくれ! じゃねえとこの魔物を処理仕切れない!』
『ペックルは魔物じゃ無いペン!』
『悪いペックル! 俺達の盾となってくれ! 少しだけの辛抱だ』
『ぺーん』
ペックル達が戦闘不能になる声が周囲から聞こえて来る。
他プレイヤー達のペックルだ。
こっちは辛うじて持ちこたえているけど……まだ俺達でさえボスの所に到着して無いんだぞ!
「倒しても倒しても……」
「キリが無い。ちょっと敵の数が多いよ」
硝子と紡が範囲技、俺がブラッディボムスプラッシュを定期的に放って周囲に群がる魔物をどんどん削って行くけど沸きがきついぞ。
一体どうなってんだ?
『ボスに攻撃してる暇がねえ!』
『俺達のLvが足りねえって事かよ!』
『島主様、絆ちゃんのお兄さん、手加減せずに終わらせて下さい! 今の俺達にはきつい!』
『廃人様キャリーお願いするっすー!』
泣き言を言うプレイヤーが出てきたぞ!
おい前線組! 俺達にお株取られてどうするんだよ!
『あ、島主と思ったらロゼじゃん、サンキュー』
紡の元パーティーメンバーも善戦してるっぽいやりとりが聞こえて来る。
「絆ー紡、やっと合流出来たわね。しかっし……魔物の沸きが激しくなったわねープレイヤー全体でかなり押され気味になってきたわ」
「歯ごたえあって面白くなってきたー!」
「紡はそうでしょうよ。硝子さん、行ける?」
「なんとか……」
とはいえ、俺達もそこそこ被弾して来ている。
既に俺はシールドエネルギーが削りきられて何度かエネルギーにダメージを受けたりして居る。
まだ戦えるけど、継続して戦い続けるとそのうち装備が脱げて大幅弱体化するぞ。
奏姉さんの提案する陣形でサッサとボスの所まで行って攻撃しないとじり貧になるな。
『ぐああああああ!』
『あの地響き、近くに居るだけでダメージ受けるのかよ。運動神経良い奴がジャンプしまくって攻撃するしかねえけどきついじゃねえか』
『岩石投げをしてくるぞ!』
『弱体化ギミックとか無いのか!』
『シンプルにボス強いぞ!』
ボス戦をして居るプレイヤーがかなり手を焼いているっぽい。
これは……相当な被害が出そうだ。
「腕が鳴るねみんな」
で、追い込まれる事でワクワクするぞ! って目を輝かせる妹がここに居る。
いや、頼りになるんだけどさ。結構ヤバくないかこの流れ。
紡がこういう顔してる時って負け戦になる事がこのゲームをする前だとそこそこある。
「拙者達は戦えるでござるが……厳しそうでござる」
「ですね。自惚れるつもりは無いですがもっと倒さないと行けないかも知れないです」
「エンジョイ勢に厳しい現状だ……」
前線組が活躍所だ。頑張って戦って欲しい。と思ってしまう所だけど……俺達も最前線だって自覚を持って頑張らなきゃ行けないな。
『うわあああああああ!』
『悪い! ボス前戦闘していたPTだけど全滅した! フィールドが閉鎖してるからリスポーンで入れない!』
そうだった。ボスが出現すると死に戻りで戦場復帰出来なくなるんだった。
かなりヤバくなってきてないか?
ボス戦闘していたPT全滅ってだけで追い込まれてるぞ。
って所で俺達にPTチャットが飛んで来た。
「……そう」
この声はしぇりる! そういえば別行動してたんだった!
「しぇりる! 大丈夫か! 魔物の沸きが激しすぎて戦場は大混乱状態だが」
「しぇりるさん。無事ですか?」
「そう」
どうやらしぇりるの声音から無事ではあるっぽい。
「しぇりる殿、どこにいるでござる?」
「D……6」
そこそこ遠い挙げ句ボスから離れすぎてる! どうする?
しぇりるの身を考えたら合流するのが一番だけど、ボスを倒さないとじり貧でプレイヤーがどんどん戦場から追い出される!
挙げ句、戦場のプレイヤーが居なくなったらどうなる? 波の突破失敗となるぞ。
早く決断しないとヤバイ。
「絆、しぇりるちゃんを救助するために二手に別れるのはどう?」
「その辺りが妥当か、姉さん。誰が良いと思う?」
と、俺と姉さんがしぇりるを救助しようとPTで話をしていると。
「……問題無い」
しぇりるが平気そうに答える。いや、正確には……自信ありな感じか?
「設置が終わった。一気に行く」
「設置……? 一気に行くって――」
何を? と聞く前にしぇりるが喋る。
「fire!」
するとガシャガシャ! ドドドドド! っと音が周囲から鳴り響く。
「ギギギ!?」
「グギャアア!?」
「ギ――」
同時に周囲に矢の雨と言うしか無い代物が降り注ぎ、魔物達をハチの巣にして行く。
音の方を見渡すとそこには塔を壊す道中で見たバリスタが勝手に動いて周囲の魔物を撃ち抜いているのが確認出来る。
大砲もセットだ。
どんどんバリスタから弾が放たれて魔物の数が減っていっている。
おい! イカとかカニの残骸で作られた弾丸が混じってるぞ。
『な、なんだ!?』
『矢の雨が降ってるぞ!』
『た、助かった! じゃねえ! なんだこれ!?』
『バリスタが勝手に動いてる!』
『タレットじゃねコレ!?』
『なんか戦場で見ると思ってたけ何だコレ!? どんなギミックなんだ!?』
どうやら他のプレイヤー達も助けられたのかみんな揃って驚きの声を上げている。
『見た時使えるかと思ったけど引き金無くて弾も持ってなかったら無視してたけど、なんだ?』
『最初から設定されてたのか?』
『ユーザーに優しい運営、感謝します』
『いや、ここはユーザーにクリアさせろよ。攻略不可なのにゲーム続行の為にこんな八百長されても冷めるだろ』
……違う。
これは運営の仕組んだ代物じゃない。
第四波討伐
『いや、俺見たぞ。このタレット、島主パーティーの海女が凄い速度で組み立てて移動して行く姿』
『俺も見た! 何やってんだ? って思ったけど、布石だったのか』
『ちょっと待て! これって島主パーティーが仕組んだのか!?』
『どんだけタレット設置してんだよ!』
『朗報、何もしなくても魔物達がタレットに撃ち抜かれて倒れていく件』
『悲報、助かった俺達呆然とみてる無能』
チャットは困惑を極めてるぞ。
『次元ノガネーシャさん。タレットでハチの巣にされてて、針山みたいになってる』