「今日の絆さんは驚きの連続でしたね」
「俺も驚きだよ。まさかここまで能力が上がるなんて、問題として人型魔物が出てきたら完全に足手まといなんだけどな」
99%マイナスなんて完全に足手まといだ。
「ダークネスリザードマンとかでしょうか?」
あー……確かにその辺りは狩猟具のマイナス補正でダメージが入らなくなってそうだ。
トカゲなのか人なのか判断が怪しい……検証はすべきだとは思う。
「仮に攻撃が通じなかったらルアーダブルニードルでデバフをばら撒いて硝子達の援護をするさ」
「そうですね。私たちは一人じゃありませんものね」
「後は……ハイディング・ハント」
隠蔽スキルを使うと俺と硝子がフッと半透明になりこっちに気づいて近づいてきていた魔物が俺たちを見失った。
武器を釣り竿に変えてルアーをぶつけてみる。
ブシュ! っと派手なエフェクトが発生して魔物を仕留めた。
「会心の一撃が出る一撃が出せるみたいですね」
「みたいだな」
あれだ。ゲームとかだと暗殺者とかが使う攻撃みたいなやつ。
バニシングアタックとかアサシンキルみたいな感じ。
ハントって所から狩猟する際の奇襲攻撃って意味でのスキルなんだと思う。
隠蔽状態で行動できるってのも無意味な戦闘を避けれるから便利だ。
「大体狩猟具ってスキルの全容がわかって来た感じだな」
戦闘補正がぶっ壊れで狩猟関連、釣りや罠なんかも据え置きで新しくスキルを取得して重複可能。
ゲーム内で一人しか習得できないのに納得の性能だ。
バランスがぶっ壊れているので下手な所で他プレイヤーに見られたら嫉妬の粘着されそう。
「私も会心の一撃が出せるのでしょうか?」
「どうだろ? ちょっとやってみようか」
「はい」
って事でクールタイムが過ぎたのでハイディング・ハントを使用して隠蔽状態になった所で硝子が魔物に近づいて攻撃をする。
すると俺を含めて隠蔽状態が解除されてしまったけれど、派手なエフェクトは発生して魔物に大ダメージが入って仕留めることができた。
「中々強力ですね」
「ルアーダブルニードルと組み合わせられたらいいのだけど……別スキルを使ったら解除されるっぽい」
攻撃行動や別スキルを使うと隠蔽が解除されてしまうようだ。
「どちらかが掛かっているだけで十分ですよ」
確かに……これ以上の火力を検証してもキリがないか。
「それじゃあ帰りましょう」
「ああ」
って事でカニ籠を再設置した俺達は宿に戻り、温泉に入ってゆっくりした。
「それじゃあ絆さん。おやすみなさい」
硝子と温泉を一緒に入って前回と同じく景色を堪能しながら何気ない雑談をした。
しっかりと温泉につかって本日の疲れ……新スキルの興奮で全然俺は疲れてなかった。
「おやすみ。明日もクエストだし、頑張ろうー」
「ええ、ではまた明日」
硝子はカニ籠の設置に付き合ってくれたから夜釣りに付き合わせちゃ悪いよな。
このまま寝るって形で俺は硝子が部屋に入って行くのを見届けた。
「さーて! 今日も今日とて夜釣りー」
で、寝る前の日課となっている夜釣りに俺は出かけて湿地帯で釣り竿を垂らす。
いやーこの辺りの魔物が雑魚なので接近したら釣り竿を振りかぶってぶつけるだけで良い。
前回できなかった場所での釣りができるぞ。
「ふんふんふーん」
って感じで鼻歌交じりに釣り竿を垂らしていると……ズモモっと音がして少し離れたところに……なんか地面から水で構築された大きな手みたいなものが生えてきた!
……おん?
なんだあれ?
「な、なんだ?」
ズイっと高速で手みたいな物が俺に向かって高速で接近してくる。
咄嗟に戦闘モードに入って周囲がスローに感じる中で手を避けて冷凍包丁で斬りつける。
が、手応えが無く手が俺を捕まえようとのし掛かってきた。
「あぶね!」
咄嗟に覆い被さる大きな手を避けて大きく後ろに下がる。
「なんだこの魔物――」
って思った所で三本ほど大きな手が俺の背後に生えてきてのし掛かってきた。
「こ、これって……」
思うにこれって回避のしようが無いギミックだったんだろうなぁ。
だってあのアクロバットが出来る程のプレイヤースキルのある硝子や紡、闇影が避けられずに捕らえられたんだし……。
と、俺はよく分からない水で構築された大きな手みたいな物に覆い被された――。
「う……」
気付いた時、俺は周囲の明るさに何度も瞬きをした。
だって俺の意識では先ほどまで夜だった訳で、突然の日差しという変化に意識が追いつかずにいる。
なんか砂地に寝転がっているような感覚。
咄嗟に手を伸ばす。
「ほ!」
何か近くで避けるような歩調が聞こえる。
この感覚……覚えがあるぞ。
「気付いたわね、絆。いきなり呼びつけて悪いわね。ちょっと手伝ってほしいのよ」
ぶんぶんと頭を振りながら俺は……周囲を見渡す。
そこはサンサンとした日差しとどこまでも続く砂と青空、そして目の前に……奏姉さんが俺に手を差し出して謝罪混じりにお願いをしている状況だった。
「はぁ……もしかしなくても姉さん、これって開拓イベントへの勧誘?」
「そうなるわね。私も呼ばれた側よ」
「なるほどな。で、ここは一体どこなんだ?」
まだちょっと意識がぼんやりする。
体感的には先程まで夜だったので意識の切り替えが出来ていない。
「プラド砂漠だそうよ」
砂漠ってそんなイベントがあるのか。
多分カルミラ島と似た様な感じの場所なんだろうけど。
「いきなり呼びつけて申し訳ない。事前にお願いできれば良かったんじゃが……」
と、何処かで聞いた様な声がする。
声の方を見ると、俺とほぼ変わらない背格好の……身長の小さい女の子が立っていた。
種族は紡と同じ亜人種で……キツネっぽい。
尻尾もふわふわのそれっぽい感じのキャラクターデザインだ。
和服を着ていて中々の見た目をしている。
おー、口調がのじゃでロリ風のキャラデザなだけに、かなりステレオタイプな狐娘って感じ。
のじゃロリ狐耳ババァって奴?
結構色んなゲームをやってきたつもりなので、こういうキャラデザも見た事がある。
人気の属性、デザインって奴だな。
「お主が奏の血縁者でカルミラ島の島主をしておる絆さんじゃな」
「ああ。まさか俺が呼ばれるとは思いもしなかったよ」
まあ、自分でも信じられないが俺も有名プレイヤーって話で、呼ばれる可能性がゼロだった訳じゃない。
カルミラ島のイベントをクリアしたプレイヤーでもある訳だしな。
「そこは……」
「私が指名したのよ」
姉さんが胸を張っている。
やっぱり姉さんの所為かよ。
まあ、このイベントの理不尽さを知らない訳じゃない。
硝子達を散々呼びつけて巻き込んでしまったんだ。
俺の番が来たと思って納得しよう。
「じゃあ島主……この砂漠の所有者はアンタで良いのか?」
「そうじゃ。妾がお主を呼んだ。悪いとは思っておるがどうか力を貸してくれんかの?」
「話はわかった。それで、え~っと……」
俺はそう言って、この人の名前を確認する。
俺の名前は絆†エクシードって結構恥ずかしいプレイヤーネームでみんなは絆って呼んでくれる訳だけど、目の前にいるキツネ娘は……知っている人だ。
いや、実際に話をした事がある訳じゃないけど、知っていたというかなんというか。
声と口調からして最初の波からカルミラ島の波まで戦場指揮をしていた人の声なんだ。
なるほど……ロミナが俺も声を聞いた事があるってこの人だったのか。
で、直接話をするのは初めてだけど……この人の名前がとんでもなかった。
プレイヤーネーム m9(^Д^)
顔文字
あれだ。指を向けられて笑われているんだが?
所謂、某ネット匿名掲示板発祥のAAという奴で、顔文字とかそういう言い方もできる。
で、この『m9(^Д^)』というのは相手を嘲笑っているよって感じの意味の顔文字だったはず。
こう……どう呼べば良いんだ?
非常にコメントに悩むネタネームだ。
このゲームだと初めてのタイプだな。
「なんじゃ?」
「アレでしょ。名前。やっぱ初対面はみんな反応に困るわよねー」
姉さんが分かる、と何度も頷くようにして俺の反応を察して答える。
わかってるなら気を利かせてくれよ!
「ああ……その事かのう」
「えっと……」
「これには非常に深い理由があるんじゃ」
「深い理由とは? 俺みたいな感じ?」
アレか?
どこぞの姉妹にアバターから何まですり替えられて完全に別キャラクターでのログインをしてしまった俺みたいな感じで誰かに変な事をされてしまったとかだろうか。
「絆はともかく、ノジャ子は毎回説明から入るわよね」
「妾だってこの名前に関して思う事があるのじゃ!」
「何? もしかしてこれも姉さんが原因だとか言うの?」
俺だけならともかく、他のプレイヤーにもいたずらをしていたのか!
リア友的な間柄みたいな奴。
「違うわよ! 私だってノジャ子のリアルは知らないわよ。知ってるのはその奇怪な名前がどうしてそうなったのかって話よ」
そうなのか?
さすがに姉さんもそこまで酷くはないか。
「で、その名前の理由って?」
「うむ……実はの、懇切丁寧にこのアバターを妾は力を入れて制作していたのじゃが――」
と、m9(^Д^)さんは語り始めた。
もの凄く作り込まれた俺の姿並みにクオリティの高いアバターをこの人は日々徹夜して作り上げたらしい。
で、やっとの事満足したアバターが出来上がった後の事……完成時で深夜のテンションの時に色々と名前を付けては消してを繰り返して設定を作り上げていたそうだ。
ディメンションウェーブは参加時にプレイヤーネームを複数候補を挙げる事になっている。
同名の名前をIDで管理しても良さそうなのだけどそこは重複禁止で行われている。
俺や姉さん、紡は名前の後に†とエクシードを付けて完全に重複避けをしてるので一発で通ったけどシンプルな名前は重複しやすい。
有名なアニメやゲームのキャラクター名は間違い無く被るだろうな。
そうしてm9(^Д^)さんは名前の候補を挙げたそうだ。
「それがその名前だと」
「あの時の妾にしっかりと確認しろと殴り飛ばしたいのじゃ」
その中で謎のネタネームを入れたりして迷った挙げ句……最終的に別の素敵な感じの名前を入力した。
「さすがにこれは無いのじゃー! アハハハ! プギャーっと寝不足のハイテンション状態の妾はパソコンで名前を消して別の名前を入力したはずなのじゃ。まさか保存を忘れていたなど、微塵も思わずにの!」
つまり……自爆した訳ね。
プログラムの終了をする際は保存、大事。
俺みたいに事前のデータをすり替えられたのとは違って完全に自業自得だった。
恐れるべきは達成感と眠気、深夜のテンションなのだろう。
「大体がプギャ子とか、ノジャ子って呼ぶわね」
確かにその顔文字はプギャーと通称呼ばれる代物だもんな。
で、見た目可愛い女の子だからプギャ子って事で呼ばれてるのか。
後者は普段の口癖から着いたあだ名かな?
「この名前でINしてしまってどれだけいじられた事か! 散々なのじゃ!」
それはまあ自業自得……と切り捨てたらこの開拓業務でギラついた関係になりそうだし、黙っておこう。
こういう失敗は誰にだってあるものだしな。
しかし、なんて呼ぶか。
エムナインさんとかでも良い気がするがちょっと違うよな。
「えーっと、それじゃあ顔文字さんって呼ぶよ」
硝子だったら言葉を選びながらそう呼びそうだからな。
「ほう……おぬし、人格は良さそうじゃな。さすがはカルミラ島の島主じゃ」
「……はぁ」
別に島主だからって人格が良いとは限らないと思うけどな。
「ともかく、改めて自己紹介としようか。俺は絆。姉さんのリアル弟で、知っての通りカルミラ島の島主だ」
「うむ。妾はおぬしの呼び方で顔文字じゃ。このプラド砂漠の主という事になり、一応はとあるギルドのマスターじゃった」
「確か奏姉さんの話だと上位ギルドだったんだっけ」
なんかそう言った話を聞いた気がする。
俺達が島で開拓している間はトップ勢のリーダーだったとかそう言った話のはず。
「そういう自負はギルドメンバー達にはあったじゃろうな。妾も高難易度の狩り場などでみんなと共に強力なボスを倒したりしておった」
まあディメンションウェーブイベント時の指揮や伝達能力、作戦行動とか考えるとかなり真面目に取り組んでいる人って印象がある。
こういうコミュ強って現実でも強いけど、多人数が有利に働くMMOだと尚の事強いんだよな。
そう考えると……初対面の相手に自分の酷いプレイヤーネームを話のネタにしつつコミュニケーションを図れるという意味で、実は悪くないネタネームなのかもしれない。
「話は聞いているかもしれんが妾が専攻としているのは回復とバフ系のヒーラーじゃ」
ああ、姉さんが言ってたな。凄腕のヒーラーの話。
パーティーでの連携って話だと俺達のパーティーで致命的に欠けている人材にして、オンラインゲームで欠かせない回復役だ。
スピリットは媒介石分の効果しか回復魔法は掛からないけど効果は大きいだろうなぁ。
ガチ戦闘組って感じだろう。
「とはいえゲーム開始前にやりたいと思っていたのは農業じゃ。建築も多少囓っておる」
おや? そこそこ趣味人みたいな感じだろうか?
そういえば顔文字さん、全体的に和風狐耳魔法使いぽいけど、農夫みたいな装備をしている。
一流戦闘ギルドのマスターがそんな考えとは意外だ。
いや、むしろこのゲームのシステムに理解が深いって事かも知れない。
ステータス画面に表示される部分以外にも隠しステータスや経験が影響している所があるしな。
姉さんを見ると……。
「誰も彼もアンタみたいに最初からネタプレイなんてしないのよ。しっかりと戦って稼げるようになってからサブ要素に手を付けたりするものでしょ」
まあ、この手のゲームでいきなり釣り専門で遊ぶなんてせず、魔物相手に戦ってそれなりに強くなって稼げる様になってからサブ要素に取り組むってプレイはわからなくもない。
俺の場合は姉さんや紡が稼いで強くなった後に引き上げて貰う予定だったし、二人もその予定だった。
「田舎で1から開拓するというのは夢じゃったんじゃが色々と忙しくてのう……」
どうやら最初からエンジョイ気質のある人だったみたいだ。
ただ、円滑にゲームをプレイする軍資金が欲しくて戦闘を優先した感じか。
そうこうしている内にパーティー、ギルドが大規模化していって農業をやっている余裕が無かったとかだろう。
「じゃあ開拓イベントはモロ好みって所だった訳か」
「そうじゃな。隠されたイベントを見つけて開拓地を得た時はとても嬉しかったものじゃ」
と、顔文字さんは背後に広がる……砂漠のオアシスとその周囲にある建物を見せる。
オアシスの近くには畑が沢山あるようだ。
「そんな一流の人がなんで俺に? 姉さん経由なのはわかるけど……親しい友人から優先して呼んでいったりするもんじゃない?」
効率主義で使えそうな人材を呼んでいった結果、姉さんが最終的に後回しになったとかじゃないのか?
「こう……姉さんって闇影枠だったんだーとか紡が言ってたし」
「ちょっと絆。闇ちゃんの噂は知ってるけど私をその枠扱いしないでよね!」
見知らぬギルドの人たちとの開拓生活といっても俺が出来る事なんて釣りくらいなもんだ。
いや、開拓を促進するために効率の良い人材で俺が呼ばれたとか……か?
姉さんがいると言ってもな……アルトもいる感じか?
「あ、そうそう。ならアルトも呼ばれてる感じ?」
「お主のギルド専属をしておる商人じゃな。呼んでおらんぞ? 奏にも聞かれたの」
ウサウニー
「ええ、来てないわよ」
「え? アイツ、呼ばれてないの?」
俺の質問に顔文字さんと姉さんが頷く。
じゃあ別の開拓地に呼ばれたって事か?
いったい何個あるのかわからないけど……いや、開拓時にあった宝箱のボタンを思い出すに四箇所はありそうだ。
あくまで可能性だけど。
どちらにしてもアルトとは合流出来なかったって事で良いか。
「食料が残り少ないピョン。早く植えないとみんな動けなくなっちゃうピョン」
と、話をしていると……サンタ帽子を被ったウサギが顔文字さんに近づいて声を掛けていた。
そっと視線をウサギに向けていると顔文字さんも気付いて指さす。
「アレはこの開拓地でのお助けキャラであるウサウニーじゃ。カルミラ島で言う所のペックル枠じゃな」
「そうだろうなとは思ったけど……」
腹減ったアピールしてるけど、大丈夫かココ。
「ウサギとブラウニーが力を合わせてーウサウニーになったんだピョン! っとか言っておったぞ」
ブラウニーも確か妖精だったな。
じゃあ他の開拓地域にも似た様なのがいそうだ。
「開拓地にはそれぞれいるって事なんだな。俺は宝箱を開ける際に四つのボタンで魚を選んだらペックルが出てきたんだけど」
「四つ? 妾が見た時は一つじゃったな」
「……となると先着順か?」
俺が魚を選んだ結果、ペックルが出て残りが三つになった感じだろうか。
つまり砂漠なのに畑なのは……運が悪かったな。
考えてみれば海にある無人島でペックルとか、相性的には最高だった気がする。
もしも砂漠でペックルだったら……どこかに釣り場があるか。
多分あのオアシスが希望になるんだろう。
「可能性はあるのう」
となると開拓地は合計4つである可能性が高まるか。
「妾が見た時は人参のボタンしか無くての。押したらこのウサウニーが出てきた形じゃな」
「なるほど……雇用したペックルはどうなった感じ?」
「帽子が送られてきてこのウサウニーに渡した所、新しくウサウニーが召喚されて能力が引き継がれた形じゃ」
コンバート機能付きなのか。管轄は別って事なのかも知れない。
で、さっきのウサウニーの報告はこの開拓地の状況報告に他ならない。
食糧不足って事なんだろう。
開拓もそこまで進んでない感じか?
「それでじゃの……友人をという話なのじゃが、ここからは暗い話になるんじゃが……」
と、顔文字さんはこのプラド砂漠で起こった話を語り始めた。
顔文字さんも開拓地を授かった事によって意気揚々とイベントに励んだ。
やがてウサウニーに聞かれてフレンドを呼んでいった。
呼ばれた友人達もカルミラ島の島主パーティーの如く、成功を掴めるとやる気に満ちた返事が得られた。
結果、砂漠のダンジョンが開かれた。
ここまでは順調だったらしい。
砂漠で得られるドロップ品がカルミラ島で得られる品と大して差が無い事に気付くまでは。
元々前線組を自負する程の者たちのギルドだった訳で、カルミラ島が開かれた段階でやりこんでいた訳で……既にクリアしたダンジョンと同じ難易度では歯ごたえが無い。
挙げ句開拓には相応に時間が掛かる。
進めているようで全く進めていない様な焦りが開拓メンバーに起こり始めた。
しかもミカカゲへの攻略もあった……どっちを攻略するのが正しいのかという迷いも大きくなっていく。
あっちの方がより俺達は強くなれたんじゃないか? って話がよくされる様になっていった。
「妾も色々と頑張っておったし、徐々に開拓も進んでおったのじゃよ。じゃが外界の者たちの方が高難易度のイベントがあると人を呼ぶ毎に装備品から何までここより強力な装備を持ってこられてのう。主にカニ装備に始まった品々じゃな」
……まあ、汎用性ではカニ装備は相当有名だもんな。