この三十分休みなしにドレインを使い続けた闇影はエネルギー量が硝子を越えた。
つまり2万7000程ある。
それだけリザードマンダークナイトはHPが高い。
「おおおお?」
闇影のドレインが発動して既に見慣れた緑色の吸収エフィクトが発生した直後、リザードマンダークナイトが普段と違う動きを見せた。
大きな、とても耳に響く咆哮と共に『ズーン……』という音と共に倒れる。
洞窟に何度もぶつかって地震を立てる事も無い。
「殺ったでござるか?」
「おまっ! それ死亡フラグだぞ」
「むむ、そうでござる。自分には里に残した妹が……まだ死にたくないでござるー!」
……やべぇ。
俺、こいつのこのノリ好きだわ。
「何をやっているんですか……もう」
硝子の冷たいジト目を受けながら倒したかを確認する。
この手のボスは死んだふりを使う事もある。注意を払って近付いた。
「死んだふりかもしれぬ故、気をつけるでござるよ」
「おう」
「いえ、それは無いのでは?」
「なんでだ?」
「曲がりにも騎士を名乗っているのですから、その様な卑劣な行いをするとは思えません」
ふむ、一理あるな。
死んだふりをするボスは大抵悪魔系や蛮族みたいのが多いと思う。
まあリザードマン自体が蛮族みたいな気もするが、一応こいつもナイトなのだろう。そこ等辺の礼節は守っているのかもしれない。
実際は礼節を守って正々堂々挑んできたリザードマンダークナイトを卑劣な手を使って罠に貶めたのは俺達なのだが、そこはあえて無視する。
「ドロップ品は……闇ノ破片と闇槍欠片でござる」
「高額で取引されている素材ですね」
金には困っていないが高値で売れるらしい。
まああって困る物でも無いし、いいか。
尚、闇影の話では両手槍の材料だそうだ。
闇属性付与が付くので槍スキル取得者は手に入れたい一品らしい。
「しかし、さすがは解体武器でござる。噂と同じくアイテムが出るのでござるな」
さて、ここからが本題なのだが、どうするか。
硝子の方は『どうしましょう?』という顔で見詰めてくる。
正直言えば解体したい。
というかこんなボスモンスターを解体する機会などそう無いだろう。おそらくだが、解体で手に入ったアイテムは武器防具として相当活用できるはずだ。
心の天秤に隠し続けるメリットと、ボスモンスターの解体アイテムを秤に掛ける。
「一緒にボスを倒した仲だし、教えるか……」
ボスドロップに勝る物なし。
「絆さんがよろしいのでしたら、それが最善かと」
「むむ? どういう意味でござるか?」
「まあ見ていろ。高速解体……」
俺はスキルを唱えると倒れている、大きなリザードマンダークナイトを勇魚ノ太刀で解体を始める。壊れている鎧や割れている鱗は無理だが、鱗、骨、肉、牙、瞳、皮、尻尾、血などが解体できる。
しかし、戦闘で破壊した箇所は解体できないんだな……。
あれか、某狩猟ゲームとは真逆の設定か?
破壊した部位はアイテムにならない。普通に割れている鱗を使用はできないよな。
「なんと……」
闇影が驚きの声をあげる。
ボスモンスターだからか解体で手に入る量が巨大ニシンと同じ位多かった。
きっと巨大ニシンは釣りに分類されるボスなのだろう。
「これは一体どういう事なのでござる? アイテムが増える? 解体武器はドロップ品が増えるのでなかったのでござるか?」
「あれは武器解説の説明不足です。真実の力は解体武器を化け物に使う事で道具が手に入るのです」
「自分、今日程驚いたのはこの世界で初めてでござる!」
余程驚いているのか、あるいは演技過剰なのか、闇影は興奮気味な言葉を吐く。
まあ世間に公表されたとしても、これ等のボス解体アイテムを早めに売ったなら十分稼げるさ。
「では、自分はこの事実を秘匿すれば良いのでござるな?」
「は?」
「見た所、絆殿も函庭殿もそれを秘匿しているご様子。命を救ってもらったという恩を返す為、自分墓場まで持っていく所存でござる」
「ま、まあそうしてくれるなら嬉しいが……」
そういえばこいつは俺達を殺しかけたんだった。本人は反省しているみたいだがな。
実際隠してくれるというのなら問題ない。
「それで物は相談なのでござるが」
「なんだ?」
「自分をパーティーに加えてはもらえぬでござるか?」
「……理由は?」
「自分、これまで一人でやってきたのでござる」
「そうなんですか?」
不思議そうに話を聞いている硝子。
そりゃ、あんな特殊なスキル構成だったらパーティーに入れないだろうよ。
思わず突っ込みたい衝動をグッと堪えながら話を聞く。
「己で口にするのは憚られるでござるが、自分、コミュニケーション障害なのでござる」
「…………?」
……なんだって?
残念ながら、とてもそうは見えない。
少々ロールプレイがきついので嫌いな人は嫌いだと思う。だが、そういうプレイが好きな人も沢山いる。少なくとも俺が出会ったアルトやロミナなどは問題なかった。
「今まで幾度とパーティーに入ろうかと考えたでござるが、結局話しかけられなかったのでござる」
「それは……大変でしたね」
なんか硝子が丸め込まれ始めている。
言ってはアレだが、その頭では現実で詐欺に遭いそうだぞ。
「質問良いか?」
「どうぞでござる」
「コミュ障害な割に俺達と普通に話しているが、そこはどうなんだ?」
「忍者言葉を話す事でどうにか話せているのでござる」
どんな理屈だ。
もう少し上手い言い訳をしてくれ。
「内心では今ですらビクビクなのでござる」
「まあ! 絆さん、彼女と共に参りましょう。私達は魂人同士なのですから!」
なんだろうな。この感覚。
あれだ。詐欺に遭った友人に高額な壷を売られている気分だ。
ま、まあパーティーを組むのはこの際良いが……ん?
「今なんて言った?」
「私達は魂人同士なのですから!」
「その前だ」
「彼女と共にしましょう、ですか?」
「そうだ、それだ。彼女?」
全身黒装束で、忍者みたいな格好をしている。なので今一外見が分からない。
口元も黒い布地で覆われているので声も判断し辛いし、どうなんだ?
「人前で素顔を出すのは恥ずかしいでござるが、共に戦うかもしれぬ身。自分の顔を見て欲しいでござる」
そういって頭まですっぽりと覆っていた布地を取ると……。
――銀髪美少女がそこにいた。
パーティー結成
「これから自分の事はダークシャドウと呼ぶでござる」
常闇ノ森から第二都市に帰還して第一声、闇影がそんな事を言い出した。
「はぁ?」
思わず、俺はそう返していた。
こいつは一体何を言っているんだ?
結局硝子の勧めで闇影はパーティーに加わる事になった。
その為なのだろう。かなりテンションが高い。
これもハイテンションがなせる技。典型的な中二病を発揮しているに違いない。
「わかりました、ダークシャドウさん」
俺は真顔でそう返した硝子へと視線を向ける。
なんていうか硝子って冗談とか通じなさそうだよな。
「わかったよ、ダークシャドウ。これから頼むぞ、ダークシャドウ」
「……」
「どうした、ダークシャドウ。何故黙っているんだ、ダークシャドウ。返事をしてくれ、ダークシャドウ。何か気に障ったのか、ダークシャドウ」
まくし立てる様に連呼すると闇影は慌てて訂正する。
「じょ、冗談でござるよ。普通に呼んでくだされ」
「そうか、じゃあこれからは闇子と呼ぶ事にするよ」
「では、私も闇子さんで」
「子はどこから出てきたのでござる!?」
そんなのお前が女キャラクターだったというギャップからだよ。とは言わない。
全身黒装束に靡く銀色の髪。
なんていうか、普通にかっこいいじゃないか。
しかも物理的な忍者ではなく、忍法を意識したジャパニメーション的忍者。
少々イロモノ感はあるが、俺は好きだぞ。
「そういや、さっきは言わなかったけど、パーティー組むにしても毎時間マイナス3000を補う程の狩りを期待するなよ? 俺は解体武器だし、硝子は扇子なんだから」
「問題ないでござる。既にドレインのランクは下げたでござる」
「おい、自分のアイデンティティ失ってるぞ」
「もちろん自分はこれからもドレイン一筋で行くでござる。しかし、主君である絆殿に仕える身としては絆殿の役に立てる身になるでござるよ」
「なんだって?」
なんか突然、主君だのなんだの言われたんだが。
ていうか、こいつがコミュニケーション障害なの、なんとなく分かるわ。
自分の中でしか分からない話を突然言い出す。
それを察する方としては少々厳しいが、一度パーティーを組むと言った以上、問題がなければ一緒にいる事になる。
「そういえば、俺達って臨時パーティーに近い感じだったはずだけど、この流れは固定パーティーで行くって事でOKなのか?」
「絆さんがよろしければ私、函庭硝子はこれからも共に参りたいと考えています。どうでしょうか? 私達三人は皆、魂人です。少々の問題でしたら他種族の方より、よろしいと思うのですが」
「自分は絆殿と函庭殿に救われた身、お二方の影となるのが使命と心得ているでござる」
二人して似た様な話を、小難しい言い方で捲くし立ててくる。
ていうか、なんで二人とも和風っぽいんだよ。
「なぁ。俺が空気読めないだけなのかもしれないが、お前等って知り合いだったりしないか? 最初から仕組まれていた様に見えるのは俺だけかな?」
ほんの一日でスピリットが二人もパーティーに加わった。
どちらも何故か個性的なロールプレイとスキル構成。
いや、俺がまるで違うとは言わないが、これからやっていくのに一抹の不安が残る。
もちろん『良い意味』での不安だが。
「絆さんの言葉通り、仕組まれていた様に魂人の私達が集まりましたものね。まるで運命に呼ばれる様でした」
いや、運命って……ちょっと恥ずかしいぞ。
まあパーティーメンバー全員がスピリットなのは少し優越感に似た嬉しさがあるけどさ。
「全体人口では少ないでござるが、絶滅危惧種という程でもござらんよ」
「へぇ」
「自分は今までドレインを繰り返す日々を送っていたでござる。故に各地を転々としていたでござるが狩り場で同郷の者を何度も目撃しているでござる」
「そうなんですか? 私の周りではあまりお見かけしなかったので、てっきりとても少ない種族なのかと考えていました」
全ての人がネットの裏情報に詳しいとは限らないしな。
その中からスピリットを選んでしまった奴等がいたとしても不思議はない。
中には弱い種族だからと選ぶ奴だっている。それにスピリットの、この幽霊的な半透明感をかっこいいと思う奴は少なからずいると思う。
無論、能力だけで物事を語る奴も世の中には沢山いるが。
しかし闇影の近くで偶に見かけて、前線組の硝子の所では見かけないと聞くだけで、なんとなくスピリットの世間的状況が分かるな。
ちなみに俺が昨日までいた第一都市の海沿いでは極々稀に見かける程度だ。
「まあスピリット同士気兼ねなく付き合えるから良しとして、これからどうする?」
「これからとは?」
「う~ん、この後寝るか続けるかって意味で聞いたんだが、パーティーの今後でもいいな」
既に夜は晩い。
第二都市は個人間で持ち寄った明かりが灯され、夜景を映している。しかし一般的な就寝時間と言えば大多数が頷く0時を回っていた。
「私としては、どちらでもかまいませんよ。早寝早起きと言いますし明日がんばるのも良いと思います。後者の方は私個人では以前と同じ程度の強さには戻したいですね」
「自分は今まで夜間に行動していたので5時位まででござれば問題ないでござる。行動指針の方は特に要望はござらぬので絆殿にお任せするでござる」
そういう意見が一番困るんだよな。
というか、何故俺が決める事になっている。
他のネットゲームではギルドマスターとかやった事あるけど、それもギルドスキル目当ての弱小ギルドだしな。
まあ俺も目的とかある訳じゃないし、硝子の目標に重点を置きつつ行動する感じか。
「ちなみに硝子、前はエネルギーどんなもんだったんだ?」
「5万程でしょうか」
「す、凄いでござる!」
「これでも硝子は元々前線組だったらしいぜ」
「なるほど、函庭殿は我等が師でござったか」
「そ、そんな、師と呼ばれる程の実力ではありませんよ」
いや、プレイヤースキル的に十分だと思うぞ。
洞窟にハメていたとはいえ、時折飛んでくる、当ったら唯ではすまない攻撃をしっかりと受け流していたからな。あれはきっと普通に戦っても防いでいたはずだ。
そもそも潜伏スキルで隠れていた闇影を当然の様に見つけたとか。
こう言わせてもらいますよ。
硝子さんマジぱねぇっす。
いや、心の中でしか言わないが。
もちろんステータス的に勝利に持っていけたかは別だ。仲間としての贔屓も入っているが硝子のプレイヤースキルが高いのは今更口にするまでもない。
「じゃあ狩り場とか硝子は知っているだろうし、三人で行ける場所を選んで進むって感じでどうだ?」
「異論はございません。私の意見を汲み取っていただいでありがとうございます」
「自分も問題ないでござる。むしろ沢山の魂を早く吸収したいでござる」
「それじゃあ決まりだな」
ともあれ、ここに俺達三人のスピリットパーティーが結成した。
どうでも良い補足だが、この後俺秘蔵の最高級ニシン食材を使った飯を三人で食った。
効率が良くて、金が稼げて、人がいない場所
翌日。
パーティー結成式という事で最高級ニシンやクロマグロを振舞ったらテンションが上がり過ぎて全員愚痴大会となり、結局酒に酔った訳でもないのに見事に爆睡してしまった。
「で、これはどういう事だ?」
昨日の事を思い出す。
道行く料理人に最高級ニシンを渡し料理してもらった俺達は川原で硝子の提灯片手に料理を啄ばみつつ雑談をした。
スピリットだからなんだっていうんですか、に始まり、コミュ障害で悪いでござるか、自分は誰にも迷惑を掛けていないでござる、だとか、奏姉さんと紡に強制されたネカマプレイへの愚痴を吐きつつも親睦を深めた。
それは良い。そこまでは覚えている。
だが、これはなんだ?
「う……ん……」
「……自分……ほん……は……ござ……なん……言わ……い……」
俺の瞳に映し出されるは浴衣の硝子と下着以外素裸の闇影。
そしてもちろん俺も下着以外素裸だ。
「え? 昨日何があった?」
このゲームは全年齢だ。ゲームの仕様上酒類は未成年に制限されている。なので酔った勢いで過ちを犯すなんて事はないはずだ。無論、いやらしい事だってシステム上再現されていない。
最近噂の18禁ゲームではVR機材を使ってヒロインとのエロ再現、なんて話を聞いた事があるが、そういうゲームじゃないから、このゲーム。
「えっと今何時だ?」
窓から照らす陽光。少なくとも朝日ではない。
カーソルメニューを開くと時刻は13・24。
思いっきり真っ昼間です。
パーティーを組んだ翌日に寝坊とかどんだけ自堕落なんだ、俺達は。
「おい、起きろ! 硝子、闇影!」
そう大きな声で叫ぶと硝子の方が眠そうな眼で体を起こす。
格好を見る限り一人だけ寝巻きを付けている。おそらくは眠った俺達を運んでくれたのではないだろうか。
「おはようございましゅ。絆しゃん……」
「まだ半分眠ってるな……」
前々から思っていたが宿屋のベッドが性能高過ぎる。
少なくとも4、5時間は眠ってしまう。
多分ゲームのやり過ぎに対する不眠対策としての処置なんだろうけど。
いや、今はそんな事を考えている場合じゃない。
「硝子、昨日何があった?」
「みなしゃん、眠そうにしていらっしゃっらので、宿に向かったのりぇす」
「うんうん」
呂律が回っていないが、どうにか意味は聞き取れる。
どうやら宿へは俺達三人自分の足で向かったみたいだ。
「あのじょうらいでは危なそうでしたのれ、皆で眠る為、大きなへやにしましら」
大体事情は把握した。
しかし、しかしだ。
「なんで俺と闇影はほぼ全裸なんだ!?」
「…………はっ!」
あ、完全に覚醒した。
硝子は周囲をキョロキョロと眺めると一度頷き、こう言った。
「絆さん、おはようございます。素晴らしい朝ですね」
とても清々しい笑顔だ。
「もう昼だよ!」
†
真実は酷く単純だった。
硝子は、そのままの格好で眠ってしまった俺達の衣類を思っての事だった様だ。
このゲームは衣服の皺とか妙に再現されているからな。
酷い皺になると、結構残るんだ。
ちなみにクリーニングみたいな店があるので、お金を出せばどんな汚れでも直してくれる。そんなに高い訳でも無いので女性プレイヤーは結構使っているらしい。
「本当にすみません」
「いや、謝らなくて良い。むしろ感謝したい位だ」
「その通りでござる。システム的に安全な宿で休息を取らなければ、何かある可能性だってあったでござる。函庭殿には感謝の言葉しか出ないでござる」
そう口にする闇影は、目を覚ました直後酷く狼狽していた。
なんでも他人に素肌を見せるのが恥ずかしかったとか。
しかも『み、みないで……』とか普通に言った。ござる言葉がロールプレイの一環なのは事実だろう。まあリアルでござる、なんていう奴見た事無いけどさ。
「だけどな、一応俺はリアルでは男なんだから気を付けろよ。この世界じゃ、そういうのができないのは確かだが……こう、道徳的にな」
「そうですね。絆さんが女の子にしか見えなかったもので、つい失念していました」
確かに今、俺は女だが……。
これは闇影もそうだが、外見が及ぼすイメージはやはり強いみたいだ。
俺が素肌を見ても、あまり気にした様子がない。
元々普通のVR機よりもリアリティが高いディメンションウェーブは種族的特徴を省けば現実とほとんど変わらない。無論美男美女しかいないという現実との違いもあるが、どうみても人に見えてしまう。
しょうがないとはいえ、二人は俺の、絆†エクシードとしての声と姿しか知らないからだろう。できれば気を付けて欲しいが……まあ俺の方が気を使えばいいか。
「さて、寝坊した分も取り戻さないとな。今日はどこ行く?」
「その事なのですが……」
少々気不味そうな表情で硝子は考えを話し始める。
「常闇ノ森は条件が私達にとても噛み合っていました。ですが絆さんの『アレ』をこれからも隠し続けると仮定した場合、私の知っている場所では必ず誰かに見られてしまいます」
何か困った事があるのかと思ったら、よくよく考えればかなり妥当な話だ。
本音で言えば無理に隠す必要はないと考えている。
それでパーティー狩りができないのでは本末転倒だ。
案として夜に行動する事にして常闇ノ森で狩るか? というものが出たが、それも限界があるだろうし、一人二人ならエネルギー効率は良いが、三人となると他へ行った方が良い、というのが硝子の結論だ。
「この際、バレても良いんだからな? 無理に隠す程でもない」
「絆さんのお言葉も理解できます。ですが他者より秀でる要素を安易に手放してしまうのも、私はもったいないと思うんです」
「確かに、でござる」
まあそうなんだよな。
これが普通のオンラインゲームなら攻略サイトで膨大な情報を確かめればいい。だが、ディメンションウェーブでは、鍛冶師に作ってもらう武器の材料すら詳細に知っている人は稀なんじゃないだろうか。
その中で解体武器が最弱武器で使う人が少なく人気がない。その解体武器に偶然攻撃以外の使用用途があった。それだけの話だ。しかし硝子や闇影の言う通り、偶然見つけたこの金のなる木を不用意に公表してしまうのはもったいない気もする。