」
「アレは有名な話だけど、実は完全無農薬じゃないんだよ。何より、こんな汚染で詰んでいる状態で無農薬はもう無理だと思う。新しい農地で上手く作物が育つのは連作障害がないお陰かな」
収穫出来る訳ないわな。
つまり最初から汚染地域だった訳じゃなくて、汚染地域にしたんだな?
「わ、わかったのじゃ」
元ギルドメンバーは顔文字さんの畑とか見て気付かなかったのか?
水やってれば良いとか思ってたのかも知れない。
俺も普通のゲームだったらそう思うだろうし、ゲーム的にはそっちの方が良いと思う。
「農薬解禁になったって事ね。なら試してみたい事があるのよね」
「なんじゃ?」
「ほら、さすがに現実だと安全性とか……そうじゃなくても気分的なモノがあるじゃない? ゲームだからこそ試してみたいというか?」
「姉さん、前置きは良いからさっさと言いなよ」
きっと碌でもない事を言うんだろうけど聞くしかない。
「この際、遺伝子組み換え済み農薬ジャブジャブ食材を作って食べてみましょうよ」
ブレイブウサウニー
「……な? 俺の身内、こういう極端な人なんだよ」
「のじゃあ……世知辛い世の中なのじゃ……」
いや、まあ……リアルでは絶対に食べないだろうけどさ。
そもそも遺伝子組み換え済みの食べ物とか、どこで売っているんだって話だけどさ。
だからってゲームの中だからやろうぜ! ってなるか普通。
「まあ農薬って事はポーションでも畑に蒔けば良いって事かしらね?」
「確かにその辺りで大雑把にカバーできそうだよな。そこはファンタジーRPG最高って感じか。ただ、数日は畑の浄化と休眠をさせないといけなさそうだなぁ……じゃ、よろしく、姉さん」
「えっ……まあ……わかったわよ。アンタがここまで言うって事は相当なんでしょ」
「他にポーション作りとか出来る人いるかな? 無いなら誰か調合覚えて欲しいんだけど」
「それはいるわね。調合技能持ちの人」
いるのか。さすが元戦闘ギルド。
回復アイテムの調達に必要なスキルはお手の物だな。
それなら薬剤、農薬の確保は出来そうだ。
とにかく、今は人員が欲しいな。
ペックルで医者ペックル辺りも出来そうだからまずやってみるか。
「カモンペックル」
「ペーン!」
召喚するペックルを選ぶ前にクリスが飛び出してきた。
「ここは……未開拓の開拓地ペンね!」
お? なんか専用メッセージがあるっぽいぞ。
クリスがサンタ帽子のウサウニーに近づいて何やら話をするモーションに入る。
「ペンペン」
「ピョンピョン」
それからクリスが俺の所にやってくる。
「ここの開拓妖精と話を付けたペン。僕たちペックルも開拓に協力するペン。だけどここでは僕たちの力は十分に振るいきれないペン。もっとウサウニー達が力を付ければどんどん力を出せて行く様になると思うペン」
「ふむ……どうやらペックル達はウサウニーの成長具合に補正を受けるようじゃな」
ステータスを確認するとペックル達の開拓能力が大幅に低下している。
本当にお手伝いさんってレベルだ。
まあそうじゃないと領地持ちが有利過ぎるから当然だが。
「みたいだな。で、ウサウニーの食料具合が枯渇してるのは分かったが、どれだけ足りないんだ?」
「賄えきれずに待機させる事しか出来ておらん。じゃないと毎度カルマー化してしまうのじゃ」
わー……とんだ連鎖状況。
畑壊滅+メンバー不足になるとここまでやばくなるのか。
「カルマー化から戦闘で倒して復帰させるとしばらく動かせるからみんなカルマー化させて酷使しておった。倒すと作物も少し得られるしのう」
凄い自転車操業だ。超絶ブラックって感じ。
毎度の楽しみがカルマー化したウサウニー狩りだったのだろうか。
これも運営が想定していたプレイングじゃないよな。
「戦えるならそれでも上手く行きそうだけどな」
つまりちょっと前までここはウサウニー達の地獄だった訳だ。
ペックルに蟹工船をさせた俺が言えた義理じゃないけどな。
けど、それだと成長が遅延してそうだ。
つまりある程度戦闘で回っていた開拓地だったって事なんだな。
能力が足りなくてもある程度どうにかなる救済処置も完備か。
正しい方法じゃない脳筋だけど、選択肢は準備されている様だ。
さて、改めてペックルを確認っと。
……やっぱり全体的にステータスダウンが大きいなぁ。
ウサウニー達を成長させる所から始めないといけないか。
「ウサウニーの操作をするアイテムを貸してくれない?」
「これじゃな。確か島主は道具無しで操作できるそうじゃな」
と顔文字さんは俺にウサウニーカウンターを渡そうとしたが、同じ極を合せようとした磁石のように俺の手からウサウニーカウンターは離れて地面に落ちてしまった。
「主人にウサウニーの操作はできないペン」
クリスがなんか注意してくる。
俺はペックルしか操作できないと?
ペンギンはウサギになれないペンって事か?
「まあいいや……ペックル達は能力がかなりダウンしてるけど、俺が操作できるし……」
ペックルカウンターを道具から出して姉さんに渡す。
開拓の七つ道具は……使えそうだな。
やっぱりこの開拓地補正が掛かってるっぽくて全体的に大きく補正が掛かってる。
農業の方は補正が少なく、釣りは補正が多く掛かっている。
まあ、ここで存分に釣りをして上げれば良い。
「とりあえず使えそうなペックルを呼び出すよ。カルミラ島の方の経営に問題も出そうだから呼び出せる数は限られるけどさ」
ポンポンと医者ペックルや農夫ペックルとか呼び出して行く。
「「ペーン!」」
鍛冶……人員的に居なさそうだからロミナが使ってたハンマー持ちのペックルも貸して貰おう。
きっと鍛冶能力が高い。
脳内のロミナが青筋立ててる気もする。
何らかの手段でメッセージを送れれば良いんだけど。
今はとにかくサッサと顔文字さんに農業をたたき込み、開拓を終えねば話にならない。
あ、一応ペックルを帰すことはできるようだ。
この辺りはシステム的な余裕って事だな。
「ペックル達の食料として魚が必要なんだけど……魚のストックとかある?」
「ないのう……」
「ま、その辺りは想定済み。手持ちの魚も多少はあるし、補充するまでは持つだろ。とりあえず持っている予備のカニ籠はオアシスに設置しておきながら釣りで確保かな」
元々所持していた魚の在庫がある。
開拓地補正が掛かるけど、俺個人のスキルや装備を組み合わせれば独自の熟練度は上げられるだろう。
「ペックルはアンタに任せれば良いって所ね」
「まあねっと、とりあえずブレイブペックルを召喚っと」
「ペーン!」
ブレイブペックルも召喚する。
開拓時は指示無しでもいるだけで全ペックルの能力が上がり、指揮をさせればペックルの能力に補正が掛かるんだったな。
ついでに俺が常に装備させられているサンタ帽子を被っているので能力低下していても現状ウサウニーより動けるだろう。
「後はオアシスに――」
っとカニ籠を設置するかと思っていると建造物方面から何やら土煙が近づいてくる。
「デスピョオオオオン!」
シュバッと土煙から何かが飛び出してブレイブペックルへとぶつかって行った。
「ペ、ペーン!?」
「デスピョン!」
ぐりぐりぐりぐり! っと一匹の……槍を持ったウサウニーがブレイブペックルに向かって頭を擦り付けている。
なんていうか凄くフレンドリーだな。
「お、落ち着けペーン!」
ぐいっとブレイブペックルがウサウニーの額にフリッパーを当てて押し返す。
「わかりましたデスピョン!」
それでもしばらくぐりぐりをしようとしたウサウニーだけどブレイブペックルの抵抗が強いからか引き下がった。
「ペンペン」
「デスピョン」
で、何やらブレイブペックルとウサウニーが話をするモーションをしている。
「ほう……これは特殊モーションなのじゃ。じゃが……台詞が危険な気が……」
台詞が危険?
「ただ……ウサウニーカウンターでは異常は無いようじゃ。一安心じゃな」
「ずいぶんとブレイブペックル相手に馴れ馴れしいウサウニーだな」
サンタ帽子ウサウニーとクリスも特殊会話っぽいのがあったけどそれ以降は特に特別な動きはない。
その中でブレイブペックルに反応するウサウニー……。
「ああ、そやつはブレイブウサウニーじゃ」
「あー……なるほど」
開拓生物の中で勇者に位置する特別なウサウニーな訳なのか。
「入手条件はダンジョンの最下層にある部屋の宝箱か?」
「そうじゃな。ダンジョンの床を掘ったら鍵が出てきての」
うわ……顔文字さん、運が良いなぁ。
というかどこでも掘るのかこの人? 掘るって発想がすごいな。
俺の場合は地底湖でヌシを釣り上げた時に手に入れた鍵からだったというのに。
とはいっても特別なウサウニーが既にいるなら開拓に上手く使えそうだけどな。
ラストラビット
「槍を持ったウサウニーなんだな。俺の所は盾を持ったペックルだったけど」
「絆のそのペックル、防御能力高いものねー。そのペックルを模した着ぐるみでガッチガチになるし」
ブレイブペックルは守ることに特化したペックルだからな。
いざって時はオートで防御してくれるし、大事な戦闘では呼び出して置いて損はない。
ランダムで大技を使って削りにもなる。
とにかく、勇者の開拓生物同士で何らかの特殊な動作があるっぽいな。
「ブレイブウサウニーか……こっちのブレイブペックルの例を考えると相当癖が強いんじゃないか?」
ストレスの上昇が異様に早いだろうし、一定値を超えると口が悪くなるってのがブレイブペックルの短所といえば短所だった。
「そうじゃのう。ブレイブウサウニーの運用に関して絆にも知って貰うべきかの」
「チラチラ私も見てはいたのよね。絆のペックルとどう違うのかしら?」
「槍を持ってるって所から考えてブレイブペックルとは違いがあると思うけど……背中のアクセサリーのお陰で運用しやすくなったけどストレスゲージの上りがすごかったんだよな」
俺の推測に顔文字さんは頷く。
「まずブレイブウサウニーの特徴じゃが、女性プレイヤーの命令しか聞かん」
「女性プレイヤー?」
「うむ」
俺と顔文字さんと姉さんの間に沈黙が支配する。
女性の命令しか聞かないウサウニー……なんてエロウサギチックなウサウニーなんだ?
「俺の場合はどうなんだ?」
オープンネカマを自称する俺はこのウサウニーからするとどっちにカテゴリーするのだろう?
「生憎堂々とネカマを自称するプレイヤーは少ないので判断できん所じゃが、判定はアバター設定時のものだと思うのじゃ」
まあ、中身まで判断してきたら嫌だよな。
第二の人生、女キャラクターで綺麗な服を着たいってプレイヤーもいるだろう。
あれだ。ほかのネットゲームでもネカマって一定数いるのと同じ感じ、それでなくても画面に映るアバターは女の子って設定している人。結果、ネカマになる人も多い。
ん? なんで聞いてくれないんだ?
顔文字さんは幼女型のアバターだぞ? 女アバターの話は聞くんじゃなかったっけ?
「このブレイブウサウニーなんじゃがストレスゲージの上りが早いというのはペックルと同じなのじゃろうな。それだけのスペックを所持しておる。で、当初の問題としてなんじゃがストレスが50%を超えると女性プレイヤーを豚と罵り今度は男性プレイヤーの命令しか聞かなくなるのじゃ。その際に語尾がデスピョンに変わる」
おいおい。それって激しく危ないウサウニーじゃないか?
主に性別に敏感な層とかの関係でさ。
「厄介ね……つまり何か作業をさせて50%を超えたらノジャ子の命令を聞かなくなるって事でしょ」
「そうなるのう……しかも勝手に作業をするという厄介な性質まで持っておってのう」
……50%以上になると顔文字さんの命令を受け付けなくなり、しかも勝手に動くという厄介仕様。
開拓仲間が協力的なら男性が命令して別の作業をしてもらうなり待機して貰えば良いけど、顔文字さんの話じゃ協力してくれなかったんだよな?
「前のメンバーも敢えてカルマー化させて戦っておった。カルマー化しやすい筆頭なのでできる限り50%以下にして運用しておったんじゃ」
だよな……カモとはこの事とばかりに日々ブレイブウサウニーはカルマー化させられていたと。
ん?
「ブレイブウサウニーのストレスゲージが100%になるとカルマーで良いのか?」
ブレイブペックルは100%になった際はラースペングーに変化したぞ?
「そうじゃな。ちなみにわらわは島主達の開拓情報は聞いておったぞ。ダンジョン内で赤髪の人形を見つけてブレイブペックルに使ったとの話をの」
「ああ……見つけてはいたのか」
自称前線組の戦闘マニアな連中だからダンジョン攻略はしっかりとやっていたわけね。
開拓はしないがダンジョンで後れを取り戻したいと躍起になっていたようだけど……それであの赤髪人形は確保か。
「それじゃあ問題はかなり解決してるんじゃない? 特殊変化したウサウニーを倒したんでしょ?」
「うむ……ラストラビットという魅了の状態異常をばら撒く厄介なボスは倒したのじゃ。取り巻きにダークフィロリアルを無数に呼び出してさすがのアヤツ等も一回目は敗走してブチ切れておったよ」
わー……状態異常をばら撒く系のボスとか厄介だな。
しかも取り巻き召喚……無数って所が厄介だな。
「俺たちの時は一匹だったけどなーダークフィロリアル」
魅了の状態異常か。
俺たちだと対策なんてまともに出来ず瓦解してそう。
「ギミックが色々と違うのね」
「アルトがその辺り、図書館で調べてたな」
この辺りのフレーバーテキストはアルトの方が詳しかったんだよな……。
「今なら少しは分かるのう。どうやらブレイブウサウニーの面倒な過去が関わっているようじゃ。赤髪の人形のキャラとの因縁も深いようじゃな」
「何にしてもこうして戻ってきてるってことは倒せたんだろ?」
「そうじゃな。その際にブレイブペックルが背負っているぬいぐるみと同様の品をドロップしてカルマー化は抑えられるようになり、ストレスの増加は軽減したんじゃ」
それならある程度どうにかなりそうだけどな。
ブレイブウサウニーは特に問題なく開拓を促進できるって事だろうし。
なんて思いながらブレイブウサウニーが装備しているアクセサリーのぬいぐるみを確認する。
「……ブレイブペックルが騎乗ペットで移動する際の生き物にそっくりなぬいぐるみだな」
そう、ブレイブウサウニーが背負っているぬいぐるみはブレイブペックルの騎乗ペットにそっくりだった。
色合いから何まで同じだ。
「フィロぬいぐるみというものじゃったな。どうやらとても大切な存在らしくての」
「ブレイブペックルは乗り物にしてるけどな」
どんな背後設定なのかちょっと気になってくるな。
「とにかく、それなら問題はなさそうだけど……」
「ストレスの増加は緩やかになったが、確定で女性プレイヤーの言葉を聞かなくなるようになったんじゃよ。80%を超えると休息をとってくれるがの」
……全く変わらない所か言う事を全く効かなくなったとか最悪だ。
ブレイブペックルの方が扱いやすいかもしれない。
「しかも気を利かせるつもりなのか活発に動くようになってしまってのう……デスピョン言っている時が一番怖いのじゃ」
相変わらずストレスゲージでの台詞変化は据え置きで発生すると……強化アクセサリーが手に入っても厄介なユニットなんだな。
そのブレイブウサウニーがブレイブペックルと何か反応をしていると。
「だから分かったペン? 主人の言う事には従うペンよ」
「わかりましたデスピョン! 主人の命令にこれから従うデスピョン!」
ってブレイブウサウニーがブレイブペックルに敬礼してから顔文字さんに頭を下げている。
「おや? おお……ブレイブウサウニーに命令を与えることができるようになったようじゃぞ」
ほう……こんなシナジー効果があるのか。
ブレイブペックルと遭遇することで運用が難しかったブレイブウサウニーが主人の命令を聞くようになったと。
「なら幸先はよさそうだな」
「そうじゃな。とはいえ、新たに呼んだ開拓仲間に委託させていたので問題は解決しておったがな」
ああ……男性プレイヤーの命令は聞くんだったっけ。
なら協力的なプレイヤーがいれば運用はそこまで問題なかったか。
とりあえずササっと籠をオアシスに設置しておこう。
終わったら釣りをするかな?
って思っているとブレイブウサウニーを追いかけてきたらしき人が一人やってくる。
「おーい。ワラの嬢ちゃん。そっちにブレイブウサウニー行かなかったかー?」
「来たぞ、らるく。紹介するのじゃ。こっちが昨日話した通り、奏の弟である絆じゃ」
そこにやってきたのは……こう、20代中盤くらいの頼りになりそうな兄貴分なキャラクター外見をしている男性プレイヤーだった。
髪は短髪の逆毛スタイルで筋肉もそこそこ……熟練の冒険者って出で立ちだ。
「おっす! 俺の名前はらるくだ。開拓地に呼ばれたって事みたいだし、これからよろしくな。奏の嬢ちゃんの話だと農業が得意だって話だったな。釣りも農業もできるってすげえな」
クエストマニア
「あ、どうも。姉さんと妹にこんなアバターと名前を付けられてINすることになった絆です」
「ははは、してやられたって奴だな。イベントの度に名を聞いたからこっちは知ってるって感じだぜ」
へー……こんな人いたんだなー。
「やー絆の嬢ちゃんの所は毎度毎度イベントで大活躍ですげーよな。近々話がしたいと思ってた所だったぜ」
「はあ……」
軽く握手をした後、親しげに肩を叩かれる。
馴れ馴れしいけど、自然と不快に思えないのは……なんか頼りになりそうな雰囲気の所為だろうか?
「そんで、ブレイブウサウニーはどうなってんだ?」
「うむ。どうも絆が呼び出したブレイブペックルと出会うことでわらわの命令を聞くようになったようじゃ」
「マジ!? あー! 見たかったその光景をよー! もっと急いで追いかけた方がよかったぜ!」
と、らるくは心底悔し気にしている。
なんだ? そこまでしてみたい光景か?
「らるくのプレイスタイルはクエストやイベント重視なんじゃ。隠されたクエストやイベントを隈なく探してゲームを満喫したいそうじゃよ」
俺が小首を傾げていると顔文字さんが事情を説明してくれた。
クエストを重視のプレイヤーか……そういったプレイスタイルもあるんだな。
世界観を知るって意味だと一番ゲームを楽しんでそうな人だな。
俺の場合は釣りメインでクエスト関連とかは人任せだし、受注は硝子や紡に任せっぱなしだった。
「ミカカゲとかクエストだらけで楽しんでそう」
「ああ、確かにたくさんあったな。お使いが多いからもっと掘り下げたイベントがやりたかったけどよ。そういや絆の嬢ちゃんが港でブルーシャークのヌシを釣ったって話だったよな。遠目で見てたぜ」
あの時の観衆に紛れていたのか……。
「何かあったら是非俺を誘ってくれよな? 絆の嬢ちゃんはワラの嬢ちゃんと同じく領地持ちだからいろんなイベントに出会ってそうだからよ」
クエストマニアって事なのかねー。
「このらるくお兄さんに頼ってくれて良いんだぜ。この開拓地に来たのは俺が先だからよ」
「そうね。ほんの少しだけ先よねー。文字通り数時間ほどね」
「奏の嬢ちゃん。そこは少し気を使ってくれていいんじゃねえか?」
ああ……俺とほぼ同時期に呼ばれたのね。
「絆、このらるくさんは紡と同じく鎌系武器の使い手で戦闘メインよ」
「腕は確かじゃな。時々一緒に臨時PTを組んだものじゃ」