Wave of dimensions — страница 97 из 111

姉さんやらるくもダンジョンに潜って素材確保をしてくれるし。

なんだかんだ今までとは違う面子との交流ってのも新鮮だったかな。


「色々と助かったのじゃ。所で実は非常に気になる事があるんじゃが聞いても良いかの?」

「何?」


顔文字さんは実に不思議と言った様子で頭を傾けながらステータスを確認しつつ尋ねる。


「何故か歌のスキル熟練度が上がっておってな。ポイントを割り振ると習得可能になっておるのじゃ。覚えが無いのじゃが何が理由かわかるかの?」

「……」

「……」


俺と姉さんは不思議に思っている顔文字さんに向けて黙り込んでしまった。

もしかして気付いてなかったのか?

顔文字さんって何かあると鼻歌を歌っている事を。

クワを振るのに始まり、休憩中とか何か作業をする合間にずっと歌っているのだ。

アレでスキルを振ってないとはな。

カニ籠漁よろしく、罠技能が一定ラインまであっさりと上がるって位には顔文字さんは歌っていたのだろう。

自覚無く歌えるって凄いな。


「歌ってスキル的にはどんなもんなの姉さん?」


釣りばかりしていたのでその辺りは詳しく無いので姉さんに聞いて見る。

そう言えば闇影が楽器演奏をやってみるとか言ってたな。

再会出来たら顔文字さんと組ませるのも良いかもしれない。

何か連携スキルが発動したりしてな。


「あまり取得している人は居ないけど、バフ……補助効果があるそうよ。それと魔法詠唱にもシナジーがあるそうね」


早口的な感じだろうか?


「いや、何故上がってるのか聞いたんじゃが……」


これって言わなきゃいけないの?

誤魔化してどうにかなるって話じゃ無いし本人が不思議がってるんだから言うしか無いか。


「ノジャ子、アンタ機嫌が良い時に時々鼻歌を歌ってるのよ? 気付かなかったの?」


姉さんがズバッと言い切ると顔文字さんが何!? って顔をしてた。

いや、そんなおかしな事?


「しらんかったのじゃ」

「農業をしてる時によく歌ってるよね」

「そうね」

「なんで黙ってたんじゃ」

「本人の集中方法なのかなと」

「ええ、妹の紡も似た感じに笑ってる時あるわ」


ハイテンションだからこその笑みみたいな感じで顔文字さんは歌を歌っている事なんだろうなとは思ってた。

こう、歌唱力は相当だから別の趣味なんだろうってね。


「そ、そうじゃのう。今後注意して歌わないようにせんとな」

「別に良いんで無い? ついでにあげれるなら損にもならないと思うけど」


何かの作業中にあげれるなら効率を考えると悪い手じゃないと思うけどなー。

船旅のついでに釣り技能が上がるみたいな一石二鳥をパッと出来るって意味じゃ腐らないでしょ。


「顔文字さんとしてはどうなの? 一気に取得でもして更にスキルの幅を増やす感じ?」

「いや、わらわは歌を上げる気は無いのじゃ」

「なんで? 魔法にシナジーがあるなら腐らないと思うけど」

「何がなんでもやらないのじゃ! 絶対じゃ!」


ってなんか珍しく顔文字さんは強めの口調で言い切った。

以降、時々歌っている顔文字さんだけど歌ったと思った直後に歌おうとしている自身に気付いて歌わないようにしているようだった。

まあ……それでも集中し始めると歌い始めるのが顔文字さんなんだけど。

どうしてそんなに気にしてるのかな?

アレかな? 歌うの好きだけどカラオケとかで歌って笑いものにされたとか?

クレイさんに雑談をしている際に話題に上げた所、苦笑されつつ彼女がこのゲームをする際に自ら課した制約みたいだから気にしてあげないようにとか言われてしまった。

かなり上手だと思うから気にしなくて良いと思うんだけどなー。

どっかで聞いた声な気がするんだけどね。


カモンウサウニー



そんなこんなで開拓は問題無く終わるはずも無くダインブルグワームを倒して五日後……城の建築が完了した。

オアシスのどこからでも見える城。尚、ウサギの耳っぽいのも城にはつけられて居る。

カルミラ島の拠点となっている城と規模の大きさが変わらない豪華な建築物。

これが個人に所有権があると思うと超が付く大金持ちって印象を覚えてしまう。

もはや国の所有権って感じで……俺もゲーム限定で領主って事なんだけど改めて考えると凄いな。


規模的に俺達の方の城と同じように大きな中庭に寄宿舎、食堂があり、温泉もどこからか引いてきたのかある。

オアシス内には目玉の博物館の他に工房も完備。

カルミラ島の工房は武具作成に使われるけどこっちは方向性が異なり調合や品種改良に重きの置かれる研究所と言った形相をしていてアトリエとかファクトリーって感じかな。

この工房内にそこまで広くは無い小さな畑があるのだけど、ここは特殊効果でダンジョン内と同じ成長速度で植物を発育出来るなんてものもあって品種改良を促進出来るようになった。

ゲームの便利性ってすげー!


ミリーさんとてりすが関わった区画は化石と宝石が随所に散りばめらており、カルミラ島とはいろんな所が違う。

コレクションルームにはこれまたミリーさんとてりすが収集した化石と宝石が飾ってある。

凄いのはミリーさんが独自にテキストで纏めた資料なんかも付け加えられていて、もう一つの博物館って所だ。

ちなみに……俺と一緒に悪乗りで作ったオリジナル恐竜なんかもコレクションルームに展示してある。

独自設定を娘さんに付けて貰う予定なので白紙のテキストを用意している形だ。

ちなみに城に付いた耳やウサウニーを模したポールや大きな人参のオブジェが各所のあるけれどこれはクレイさんがウサウニーにコインで交換した実用的な効果のある代物を設置して貰った感じ。

何でも植物の成長や品質の促進向上効果や防衛能力の強化なんかの効果があるそうで、外観との調整でこのようになったそう。


「一気に作りあげたよ。これで開拓が終われば良いんだけどね」

「これで出られるんじゃなー」


俺達はサンタ帽子ウサウニーを連れて城の玉座へと来る。

カルミラ島の時と同じく二つの玉座がある。


「よくぞこの地を開拓してくれたピョン!」


開拓終了を宣言するはずのウサウニーが言い切った。

もちろん、他のウサウニー達も集まって居て、ペックル達も同伴している。

キングペックルこと、クリスも玉座の間でペックル代表という形で立っているね。


「この地は昔、緑溢れる地だったそうピョン。それが砂漠となってしまい荒廃してしまっていたピョン。けれど領主様のお陰で復興の目処が立ったピョン」


お? バックストーリー的な奴かな?


「この地を緑溢れるようにするには後一歩ピョン!」


うん。だから解放宣言するんだよね?

って内心思っていたのだけど……サンタ帽子ウサウニーが勿体ぶっている。


「侵略者達の砦へのルートを確保出来たピョン! アイツらが外界へのルートを塞いでいるから倒して欲しいピョン」


サンタ帽子のウサウニーがそう言い放った。


「解放イベントじゃないのか」

「次のイベント?」

「みたいじゃな。ちょっと確認をするのじゃ」


顔文字さんとクレイさんがサンタ帽子ウサウニーを相手に色々と確認を行っている。


「さっきウサウニーが言った通りどうやらこのイベントをクリアしないと城を完成させても解放宣言が出来ないみたいだね」

「カルミラ島とは随分と違う要素が入ってるなー」


俺の時は城を完成させたらあっさりと解放出来たのに。


「四天王が邪魔をするのじゃ。しっかりと潰してやらねばならんとなのじゃ」

「攻勢に出るって事で良いのかな?」

「その様だよ。むしろダインブルグがここまで攻め込んで来る事を考えるとカルミラ島の方が不安になってくるよ。そっちでもイベントが起こってそうだからね」


あー……俺も結構不安になってきた。


「領主様に此度の戦いに備えて送り物ピョン」


そう言ってサンタ帽子ウサウニーは顔文字さんに手を差し出す。


「いつでもウサウニーを呼ぶ事が出来るピョン。御用があったらお手伝いをするピョン」


この台詞、ペックルの時と全く同じだな。


「あ、カモンウサウニーを習得したのじゃ」

「絆の嬢ちゃんがペックル呼ぶときのスキルだな。ワラの嬢ちゃん」

「そうじゃな! 何処でもウサウニーじゃ!」

「ここから更に発展するはずなんだけど……」

「後は既に解放済みだからこれが出来るピョン!」


って案の定顔文字さんのスキルもパワーアップをした様だ。


「カモンブレイブウサウニーも覚えたのじゃ!」

「それではお願いしますピョン!」

「前報酬にして決戦じゃな! 発展の邪魔をした魔王軍に反撃に出る時じゃ!」

「おっし! やってやろうじゃねえか」

「よろしくですピョン!」


と、ブレイブウサウニーがブレイブペックルの隣で片手を上げて自己主張する。

サンタ帽子ウサウニーの進化は都市解放が確定してからか。


「ここまで来ればあと少し、みんなで行こう。思ったよりも隔離されずに済んだね」


クレイさんがにこやかに渇を入れている。

そうだね。早く城を建築して娘さん探しを再開しないとね。


「えー、てりす達、結構ここにいる気がするわー」

「ダンジョン内で過ごした時間を考えると多いだろうぜ」

「あ、なるほど」

「そうね。特にノジャ子は多いけどあんまり苦に感じて無いようね」


確かに、一番頑張っていたのは顔文字さんだと思う。

残り数日の段階の工房で研究用の栽培加速施設が出来上がったけどそれ以外の時はよくダンジョンに潜って品種改良をしてたしね。

クレイさんが物資のチェックを色々としてくれたお陰で城の建設が完了した。

この辺りは商人としての能力が高い人が適任のようだ。


「ああ、アレはそこまで難しく無いのじゃ。田植えをするじゃろ? 水やりをしてポーションをふりかけ、昆虫や妙な病気が蔓延してないかチェックしたら寝るんじゃ。すると次の段階まで寝られるから同様にするだけじゃな」


もはや手慣れたとばかりに言ってるけど時間感覚麻痺しそうで恐いねそれ。


「正直、体感じゃが五日で一日と変わらんかったの。地上だと仕様が違うようで起きてる時間が短すぎると睡眠時間も短くなるようじゃ」


そこまで理解してる顔文字さんって本当、凝り性なんだな。


「それで攻勢に出るわけだけど皆して行く感じ?」

「でしょうね。んじゃ行くわよ」


姉さんの言葉に皆頷き……都市解放の為にクエストへと挑む事になった。




ウサウニー達に案内してもらうと言う形で移動して行くと……案内無しで歩くといけない砂漠の一角に、なんか大きなクレーターのある荒野みたいな所にたどり着いた。

ちなみに砂漠って文字通り砂しかないイメージを浮かべる人も居るけど荒野も砂漠と言う認識だったりするんだ。

人類が生活するには厳しい環境だとその名が付く感じなのかな?

海とかも飲み水の確保が難しいって所で砂漠みたいな所がある。

そこに禍々しい石作りの砦が建造されていて……ゲーム風で言うなら魔王の城と言っても過言じゃ無い様相をしているようだった。

ジャリッと地面は岩の部分と砂の部分が交互にあって、城の堀にはマグマが通っている。


「あそこじゃな」

「そのようだね」

「ここは……」

「ミリー、どうしたんだい?」

「いえ、採掘場などで得られた情報や石版によく似たクレーターがありまして……滅びた恐竜の都が眠っているとの話が記されて居たのですよ。ですけど砦があるので別の場所なんでしょうかね」


へー……恐竜の都か、なんかロマンがあるけど都ってどういう事なんだろう?


「後々該当する場所が何処かにあるんじゃないかい?」

「そうね。考古学の為にも探して行きましょう」

「じゃあ行こうか」


って皆して向かおうとした直後、ポーンとどこからかメールやメッセージ、チャットが届く音が聞こえた。


「「む?」」


俺と顔文字さんが同時に反応する。


「どうしたの? アンタたち」

「いや、突然何かが届く音が聞こえて」


と、システムを確認すると……テキストメール?


拝啓

外界とは隔絶していて呼ばれた人以外とは連絡が出来ないこの状況でメールが届くってどうなってるんだ?

もしや何かしらの要素で硝子達が送ってくれたのかな?

ボトルメールとかだと届くとかありそうじゃん。

そう思って確認すると……。


拝啓ブレイブペックル様

いきなりこのようなお手紙を送ってごめんなさい!

でも戦場で貴方を一目見た時から私は核石を鷲づかみされた様に電撃が走って毎日貴方の事ばかり考えてしまって夜も眠れません。

優しく皆の前に出て守るそのお姿、とても真似できる様な事ではありません。

そして憤怒の力で敵を屠るその雄々しさ、私の心まで燃やし尽くして欲しいと常々思ってしまいます。

上手く伝えたい事を伝えられるか本当に不安だけどこうして思いの丈を綴って居ます。

貴方が今挑もうとして居る相手は魔王軍四天王の一人、ダインブルグよ。

ダインブルグはとても強力で土の力を使いこなし怪力を所持する魔物で例え強い貴方でも正面から勝てるか分かりません。

だけど安心して、ダインブルグに勝てるように私が色々と助言をするわね。

ダインブルグの砦内のマップを同梱するわ。色々と罠等のギミックがあって私も全部把握はしてないけどダインブルグの元に行くには途中で杯に液体を満たして行かないと行けないから注意して。

それでボスのダインブルグは風の魔法が効果があるけど、実は水の魔法にも弱いの。だから魔法で挑む場合はこの二つと難しいかもしれないけど植物の力で挑むと効果的ね。

出来れば要石~と付いた武器を持っていくと効果的だからお勧めするわ。

入手方法はセン地方のクエイクキャットフィッシュの素材で作れるわ。

次に戦闘が始まった時は格闘と角による突進攻撃をして来るけど、大ぶりの打撃は3発目にフェイントをしてくるからそこを見切って4発目の突進で柱にぶつけると角が刺さって大きな隙が出来るわ!

地響き攻撃をしてきたら落石に注意しつつダインブルグの右後方で待機すると安全にやり過ごせるの!

体力を半分以上減らすと斧を持って振りかぶってくる様になって攻撃が強力になるから注意ね! それも1……2! のタイミングでパリィ出来るわ。

難しいなら部屋の奥にある石像の前に立つと強力な叩きつけを絶対にして来なくなるから安心して、仮に石像を壊したら斧を落して土下座するからその間にボコボコにして一気に削ると良いわよ!

削りきれなくても石像をダインブルグに壊させると勝手に大ダメージを受けて瀕死になるから後はすぐに倒せるわ!

ブレイブペックル様、どうかご無事でダインブルグを倒せることを祈っています。

貴方を思う私より、愛を込めて……。



「なんだこれ? 攻略情報? ブレイブペックル宛てに」

「何言ってるのよ? アンタ」

「いや……なんか変なラブレターみたいなメールが来て、砦の見取り図まで同梱されつつボスのモーションとギミックが説明されてる」

「はあ?」


姉さんが訳が分からないって言いたい気持ちは分かる。

俺もいきなりこんなもん送られても理解出来ないぞ。

そもそも何処の誰だよ。ブレイブペックルに謎のラブレターを送ってる奴は。

俺は皆にメールの内容を伝える。


「これまた随分と奇妙なイベントだね。だけどギミックを教えてくれるのは助かるのかな」


クレイさんが苦笑してたぞ。

ブレイブペックルを見ると……困った様に眉を寄せているぞ。

そりゃあ知らない奴から謎のラブレターが送られて来たらそんな反応もするか。


「顔文字さんも似た感じ? なんかラブレターとしか言いようが無いんだけどさ」

「いや、わらわの方はブレイブウサウニーへの果たし状じゃな。ブレイブウサウニー、お前に決闘を申し込むなの! と始まり第一の刺客、ダインブルグが目の前の砦で貴様を待っている。まさか逃げるなんて事はないはずなの。逃げたら笑ってやるなの。プププー! っとかなり長文の挑発がされておるの」


発信者は別か? 語尾がなのって個性的だな。


「ギミック説明などは同じじゃな。挑発的で、お前は止められないと思うなのーと馬鹿にしてるようじゃ。雑魚のお前にヒントを与えてやったって体裁じゃな」

「調子に乗るなですピョン! 絶対にやってやるですピョン!」


ブレイブウサウニーは会話に反応している様でやる気を見せてぶんぶんと槍を振っている。

やってやるってのが殺るって声音に聞こえた気がする。


「妙な要素があるけど、まあ良いのかしらねー」


姉さんが大きくため息をしながら事態を受け入れる。


「何か面白そうね! 連続クエストかしら」

「手紙の発信者にいずれ会えるんじゃねえの? ブレイブペックルとウサウニーを連れてるとよ。目が離せねえな」


クエストマニアのらるくとてりすが目を輝かせている。

まあ……確かに色々とありそうではあるね。


「ビッグブレイブペックルで代理をしたらイベントが変化するんじゃねえの?」

「ちょっと、私に何をさせるつもりよ! その手のイベントと分かったら絆にこれを着せるからね」

「いや、攻撃力が下がりすぎて困るし」


ブレイブペックル着ぐるみのマイナス効果は馬鹿に出来ないんだぞ。

俺が装備しても性能を全く引き出せない。





「絆さんとブレイブペックルはセットなので装備する意味は無いと思うよ」


クレイさんの考えはごもっとも。

俺が使役しているブレイブペックルなんだから俺がブレイブペックル着ぐるみを着る必要は無い。

後は顔文字さんに送られて来た見取り図に関する確認を行うと、仕掛けが若干異なるのが分かった。


「プレイヤー毎にマップ構造も少し違うのね」

「誤差の範囲だけどね」

「何にしてもここを乗り越えないと都市解放出来ないんだ。早く行こう」

「うん」


そう思ってみんなして砦の方へと向かう。

ゴゴゴ……と、暗雲蠢く空模様とマッチしていてラストダンジョンって雰囲気がバリバリしてるなー。

で、道中の砂地を確認してると魔物が居そうな雰囲気なのに出てこない。

ミリーさんがチラチラと砦の裏手の方に視線を向けてる。

この辺りに何かある的な話をしてたし周囲が気になるんだろうなぁ。

みんなして砦の前に立つと待ちかねたとばかりに砦から架け橋が降りて来て道が出来る。

そして……ゲート登録のポータルみたいな物が扉の前に出現した。


「あそこが入り口のようだね」

「ああ」

「ま、内部構造とギミック情報が先に出てるって事はサクッと終わらせられるって事だぜ」

「それでも厳しいって事もあり得るから油断は大敵ね」


らるくとてりすが念押しをしてくる。

顔文字さんが先頭に進んでポータルに近づこうとしたその時――。


「お!?」


ゴン! っと俺だけ何かバリアみたいな物に弾かれた。

なんだ? 前に領主クエストをしている際に色々な所に移動中に入れなかった時の壁みたいなものがここで俺の目の前に出てきやがったぞ。


「どうしたのじゃ島主?」

「いや、なんかいきなり壁みたいなものが」

「みたいね。アンタが進むと壁に波紋みたいなものが出来てるわ」


障壁に俺が触れると波紋が生成される。


「一体どうなっておるんじゃ?」


と、顔文字さんが近づいて俺の後ろ側へと回り込むと壁がフッと消えた。


「おわ!?」


いきなり消えるなよ! 転び掛けただろうが。


「消えた?」

「なの――じゃ!?」


で、ポータル側に俺が進むと今度は顔文字さんが俺と同様に障壁に阻まれる。


「今度はノジャ子が弾かれてるわよ」

「ワラの嬢ちゃんもか」


俺と顔文字さんの様子をみんなして確認する。


「絆さん、ノジャさんの後ろに回ってくれないかい?」

「うん」


クレイさんの言う通りに顔文字さんの後ろに行くと顔文字さんを阻んでいた障壁が消えて通れるようになった。


「うーん……この流れは、ノジャさんと絆さんは同時にこのダンジョンに挑めないって事のようだね」